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DXを妨げるレガシーシステムの変革は待ったなし、2025年は新たな形でのITトランスフォーメーション元年に


1. レガシーシステムの正体

デジタル・トランスフォーメーション(D X)は企業の生産性や顧客へのサービス体験を劇的に向上させると期待されていますが、まだ社会的な大きな変革には至ってはいないと感じます。

その原因の1つとしてレガシーシステムの存在が挙げられています。経済産業省公表のレポート[1]でも、レガシーシステムが企業のD X化を阻害しており、その問題が深刻化するのが2025年以降(これを「2025年の崖」と呼ぶ)と述べられています。

レガシーシステムとは、老朽化、肥大化・複雑化、ブラックボックス化したシステムを指します[1]。その複雑性から維持管理が困難であることに加えて、歴史の古い技術を採用しているために、技術者は高齢化しているが新たな担い手も少ないという、人材確保の課題も表面化しています。

2. 「2025年の崖」だけではない、社会の変化の兆し(PESTの視点から)

レガシーシステムをこれからの企業ニーズに応じて変革することを、ITトランスフォーメーションと呼びますが、私はこの需要が急激に高まるのではないかと考えています。それは「2025年の崖」だけではなく、社会では様々な変化の兆しがあり、その分岐点は来年の2025年になると予測するからです。
その変化の兆しについて、PEST(Politics, Economy, Society, Technology)のフレームに沿って整理してみました。

政治(Politics)

政治の視点では2025 – 1年で、既に今年より様々な変化が起きています。例えば、いわゆる「2024年問題」と言われている運送業界、医療業界、建設業界の時間外労働の制限の適用が挙げられます[2]。また、今年5月には、育児介護休業法等の改正法が国会で可決・成立し、2025年4月より施行が予定されています[3]。

これらの施策の主な目的は働き方改革です。企業は、労働力の変化にも対応ができ、事業継続できるような飛躍的な生産性の向上が求められます。そして、事業を支えるITシステムでも大幅な変革が求められます。

経済(Economy)

前述の経済産業省のレポート[1]で紹介したように、I T業界などでは「2025年の崖」という言葉が大きく着目されています。レポート中でも以下のように経済損失が試算されています。

国内では多くの企業がD Xを推進しているにもかかわらず、レガシーシステムが足かせとなっており、2025年以降には、既存システムが残存することによる課題に伴う経済損失が、最大で年間12兆円にまで増加する

DXレポート ~ITシステム「2025年の崖」克服とDXの本格的な展開(経済産業省)

社会(Society)

一部の報道や業界のレポートなどにも取り上げられていますが、2025年は国内にとって社会的な大きな分岐点が控えています。それは国内の生産年齢人口のうち、ミレニアル世代(1981年から96年生まれ)とZ世代(97年生まれから2009年生まれ)の合計が過半数に到達することです[4]。

ミレニアル世代は組織での管理職を担うなど、社会の中心になっています。これらの世代は、もはやECサイトなどのデジタル・サービスへの抵抗感がなく、かつ、これまでにない新しい生活思考を持ち合わせている消費者にもなります[5]。サービスを提供する企業側は、旧来型のビジネス形態に囚われずに、デジタルを活用した新しい顧客体験が強く求められます。

技術(Technology)

テクノロジー(技術)に関しては常に大きな変化が起きています。特に生成A I領域はその技術進歩が早すぎるため、企業が本格的にビジネスに活用するまでには至っていないと感じています。

加えて、AIや生成A Iの心臓部である半導体を担う米国NVIDIA社がデジタル企業の中でマイクロソフト社を抜き、時価総額が首位になったという報道がありました[6]。GAFAなどの巨大IT企業からの世代交代が始まっているとも言われています。

3. 来たるITトレンスフォーメーション元年に備えて:総合力が求められる時代に

これまで述べてきたように、2025年はレガシーシステムの変革における重要な分岐点となり、それを実現するITトランスフォーメーションの需要も増加すると予測します。私は2025年はITトランスフォーメーション元年になるのではないかと予測しています。

また、これからのITトランスフォーメーションは単純な技術の置き換えにとどまらずに、新たな顧客体験(UX/UI)の設計や、未知の製品やサービスを試しながら作りあげていくためにアジャイル方式でのプロジェクト管理など、総合力が求められる時代に変わることが考えられます。

それでは、総合力が求められる新しい形のITトランスフォーメーションとは、具体的にどのように進めていくべきでしょうか。また次の機会に紹介できればと思います。

(お断り)
当記事は個人的な見解を記載しているものであり、所属する会社等による正式なレビューを受けているものではございません。また、特定の製品やサービスを宣伝する目的ではございません。

【参考・参照文献】

[1]
DXレポート ~ITシステム「2025年の崖」克服とDXの本格的な展開~ (経済産業省)
https://www.meti.go.jp/shingikai/mono_info_service/digital_transformation/20180907_report.html

[2]
建設業・ドライバー・医師等の時間外労働の上限規制 (旧時間外労働の上限規制の適用猶予事業・業務)(厚生労働省)
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/roudoukijun/gyosyu/topics/01.html

[3]
育児・介護休業法、次世代育成支援対策推進法改正ポイントのご案内 (厚生労働省)
https://www.mhlw.go.jp/content/11900000/001259367.pdf

[4]
少々馬 敦, 新消費をつくるα世代, 日経BP社, 2024年, P2-P15)

[5]
「ミレニアル世代」が変える働くことの意味 (2020年1月1日 三菱総合研究所)
https://www.mri.co.jp/knowledge/mreview/202001-5.html (最終閲覧日: 2024年6月20日)

[6]
NVIDIA時価総額、世界首位526兆円 GAFAから主役交代 (2024年6月19日 日本経済新聞)
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGN060J20W4A600C2000000/ (最終閲覧日: 2024年6月20日)






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