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CDOの関心は未来に向いている(DXを推進できる、これからのレガシーITトランスフォーメーションの考え方とは)


はじめに

前回の投稿では、デジタル・トランスフォーメーション(DX)は企業の生産性や顧客へのサービス体験を劇的に向上させることが期待されているにもかかわらず、レガシーシステムがD X推進への足枷になっていることを紹介しました。そして、来年の2025年にはレガシーシステムの刷新(レガシーITトランスフォーメーション)が加速する重要な分岐点になることを取り上げました。[1]
 
今回は、DXを推進するにあたり、レガシーITトランスフォーメーションをどのように実現していくべきかについて解説していきます。

CDOはレガシーITトランスフォーメーションをどのように捉えているのか

 一般財団法人CDO Club Japanの2022年の調査によると[2]、DXの責任者を設定している国内企業の割合は46%に達しています。また、DXに取り組む経営執行職であるCDO(Chief Digital Officer)についても、既に4.5%の企業で任命されています。国内企業はD Xの加速に向けて組織や体制の拡充しており、今後は、このトレンドが加速していくことも予測されています。
 
そして、レガシーITトランスフォーメーションの実行戦略を決めるためには、CDOが何に注力しているのかを理解することがポイントとなります。前述のCDO Club Japanの調査結果では、DX責任者が最も取り込むテーマとして「顧客とのコミュニケーションや顧客経験価値」が挙げられています。つまり、CDOの最大の関心事は企業外であり、かつ、未来に向けた新たなビジネスの創出であることがわかります。
 
一方で、これまでにレガシーITトランスフォーメーションは、レガシーシステムを精算することを主体とする過去志向の考え方であり、必ずしもCDOの要望を満たすものとはなりません。例えば、単純なレガシーシステムのマイグレーション(単純移行)だけでは不十分であり、最新のデジタルテクノロジーやサービスを徹底活用しながらレガシーシステムを利活用していくこと。そして、新たな収益源となるビジネスへ貢献できるようにする変革が求められています。

DXの考え方を変えてしまった生成AI、そして新たなプレイヤーとしてのGOMAの台頭

加えて、最近では、生成AIの出現がCDOの未来志向の取り組みを後押ししています。2022年末に出現したChatGPTを皮切りに、様々なテック企業が一斉に生成AIの取り組みを進めています。最近では、代表的なテック企業はGAFAMから、生成AIに強いGOMA(Google、OpenAI、Microsoft、Anthropic)へ移っており、業界の地殻変動が起きているとも言われています。[3]
 
生成AIの出現により、旧来型のITの考え方が刷新され、前例のないプロダクトやビジネス・モデルを確立できることが期待されています。例えばCDOの最大の関心事である「顧客とのコミュニケーションや顧客経験価値」の分野においても、顧客対応の自動化、多言語やローカルな言葉使い対応できるコミュニケーション、曖昧な要望への応対、そして、パーソナライズされたコミュニケーションなど、全く新しい形のプロダクトやサービスが出現しています。[4]
 
生成AIのような新たな技術にも対応するためには、レガシーITトランスフォーメーションも既存システムの単純な技術の置き換えでは不十分であり、新しいアーキテクチャへの変革(モダナイゼーション)が強く求められます。

これからのレガシーITトランスフォーメーションは、未来からのバックキャスティングで考える

このようなトレンドから、レガシーITトランスフォーメーションには、従来とは異なる発想の変換が求められています。それは、過去志向から未来志向への意識を変えていくことです。
 
これまでの考え方では、既存システムの現状調査を起点として、それらがどれだけ延命できるのかのフィット&ギャップをおこない、変革の方針と計画を具現化していました。つまり過去から振り返り、現在なら何ができるかを考える発想であり、その関心はプロジェクトにおけるコストやリスクの抑制が中心となります。この考え方ではプロジェクトコストに見合った新たなビジネス価値を産みにくい(または表現できない)という大きな課題を抱えていました。
 
これからの考え方では、まず、企業がDXでどのような新しいビジネスを実現するのかの将来像を描き、それを実現するためのサービスやテクノロジーの青写真を明確にした上で、既存システムから何を利活用していくのかを選択していきます。つまり、企業における未来の姿からバックキャスティングをおこない、変革の計画を立てることであり、その主な関心はビジネスにおける収益性やROIに向けられます。
 
また、未来志向のレガシーITトランスフォーメーションでは、プロジェクトの進め方にも新たな発想が求められます。従来型の考え方では、プロジェクト体制の主要メンバーはシステム・エンジニアやプロジェクト・マネージャーでした。一方で新しい考え方では、まず未来における顧客体験やビジネスモデルを具現化するために、UX/UIのデザイナーの参画が成功の鍵となります。デザイナー、エンジニア、プロジェクト・マネージャーが三位一体でプロジェクトを推進することで、変革を成功に導くことが可能となります。

レガシーITトランスフォーメーションについての2つの考え方


【参考・参照文献】
[1]
DXを妨げるレガシーシステムの変革は待ったなし、2025年は新たな形でのITトランスフォーメーション元年に
https://note.com/tak_muk/n/nce192b612744
 
[2]
CDO Club Japan DX実態調査レポート (2023年3月7日 一般財団法人 CDO Club Japan)
https://cdoclub.jp/news/6020/ (最終閲覧日:2024年8月31日)
 
[3]
山本康正 生成A Iをめぐる攻防 Google vs Microsoft, 日本経済新聞社, 2024年, P11
 
[4]
35 の生成 AI 事例から学ぶ!顧客体験、生産性、創造性の向上、業務プロセス最適化など (2024年7月24日 Google Cloud)
https://cloud.google.com/blog/ja/products/ai-machine-learning/generative-ai-case-studies

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