もう叩く石橋もない時代に

Web3や暗号資産、そしてメタバース……。
最近のITトレンドは、その覇権を握りたい企業や人々が必死に盛り上げようとして、結局上手く行かなかった印象がある。

Web3は結局何が言いたいのか分からないし、メタバースは死屍累々。NFTはまだ「使い方次第」な印象はあるけれど、暗号資産は最早魑魅魍魎とその餌食しか居ないように見える。(極真の大山倍達の孫が仕掛けたマス大山コインとか、Gacktが宣伝塔になってた奴とか、アイコンは立派だけど胡散臭い事例が多すぎる。)

これまでのWeb/IT業界は、なんらかの領域のリーディングカンパニーになることが出来れば、極めて短時間で巨大企業に成長できた。実際にそういう事例がたくさんあった。だから最近はリーディングカンパニーになることが大事で、その対象となる領域の将来性などが若干軽視されてきたんじゃないかなと感じる。

ほんのちょっと前までは、暮らしの当たり前が180度変わってしまうような変革がいっぱいあったけど、今はもうそんなフロンティアも減ってしまい、プレイヤー自ら「ここ!ここだよ!!めっちゃ盛り上がるよ!!早く来ないと乗り遅れちゃうよ!!」みたいなマッチポンプを仕掛けないといけなくなってしまっているように思える。しかし笛吹けども踊らず。「まだ◯◯で消耗してるの?」と煽るひとが一番消耗しているように見えたりする。

実際10年ほど前からそんな領域はあって、グルーポンのようなフラッシュマーケティングだとか、芸能人が多数やらかしたペニーオークションなどもそんなマッチポンプ領域で、あっという間に絶滅種になってしまった。原資は会計上の仕訳を付け替えただけ……の販促支援サービスなんて、そりゃ顧客は気づくよね。だから「安いなりの商品サービス」を「信頼されない演出」で売るという地獄のような状況になっちゃった。
今日、クックパッドがIRで希望退職について報告していた。クックパッドは人間に必須の食という領域で覇権を確立しているけれど、それでも安泰では居られない。もう安全な場所なんてどこにもないのだなと思う。

一方でchatGPTのようなAI領域が突如イラストレーションとか論文の世界をひっくり返しているので、やはりチャンス自体が絶滅した訳ではない。つまり、メタバースは「そもそも育ちようがない領域」だったのだろう。

GAFAMでも大規模レイオフなどがあり、リセッションの足音がヒタヒタと迫っている。今週の出張で出版や放送の方々と懇話したけれど、みなさん今年に入ってからの市況に不穏な印象を持っている。私もこの不穏さに緊張している。だから誰もが蜘蛛の糸を掴むように、(なんとも不確かな)覇権を争うのだろう。

必死にやっても死にそうなのだ。ボーッとしていたら即死だ。
半年後に保障されているものは何もない。
うちのスタッフだって、「頑張ります」の掛け声や現状維持では守れないのだ。
進化しないのなら、助けようもないんだ。

叩く石橋さえない荒野で、どう歩くのか。

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