静寂

日も落ちて暗くなった頃、買い物をしに外へ出た。

入り組んだ住宅街を歩いていると、周りに誰もいないことにふと気がついた。人の気配すら感じられない。

街灯が寂しそうに光っている。立ち止まってそれを眺めていると、ほんの少し虚しさに包まれた。

「私はひょっとして、この世界にたった一人取り残されたのではなかろうか。」

しばらくそんな風に思っていた。

「チャリン」

後ろから自転車に乗った老人が通り過ぎて行った。

その瞬間、今まで包まれていた虚しさが消えた。
取り残される前の世界に戻ってきたのかもしれない。

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