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ウクライナ侵攻に思う

ウクライナ侵攻を受け、深刻な人道危機になることを危惧し、国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)の活動を支える日本の公式支援窓口、国連UNHCR協会に少しばかり寄付をしました。

先週以降、情勢分析のため、The New York Times、The Wall Street Journal、BBC、CNN、Retuersのサイトから目が離せない状況です。

そして、英語だけでなく、ロシア語、ウクライナ語の情報も、機械翻訳を使ってそれなりに内容を把握できるのは便利です。

ウクライナ侵攻を踏まえて読むべき本としては、まず、今年の初めに紹介したこちらの『戦略思想史入門』を挙げたいと思います。孫子やクラウゼヴィッツの考え方の基本を知った上で今回のウクライナ侵攻を見ると、ロシアの戦略の気になる点が見えてきます。

そして2冊目に『現代ロシアの軍事戦略』が挙げられます。

今年の初めに「ウクライナ情勢」に言及しましたが、その時点では、ロシアがクラウゼヴィッツのいう「第1種の戦争」を選択するとは思っていませんでした。

クラウゼヴィッツは、戦争を、敵を政治的・全面的に抹殺することを志向する第一種の戦争と、限られた国土領土の取り合いである第二種の戦争に分けています。

ロシアがウクライナに現存する政治体制を政治的・全面的に殲滅することを志向するような戦争を選択するとは思っていませんでしたので、1月6日時点では以下のように書いています。

米国・日本が動かないという点については、ウクライナ情勢を台湾有事にも当てはめようとする見方とも言えるでしょうが、台湾海峡有事は、単なる国土領土の取り合いではなく、台湾に現存する政治体制を政治的・全面的に殲滅することを志向するものであり、クラウゼヴィッツのいう第一種の戦争となります。
戦争の性質、政治的な意味合いはウクライナのそれと大きく異なるものです。

でも実際には、侵攻の数週間前から米国等が警告した通りであり、ウクライナ侵攻は、クラウゼヴィッツのいう第一種の戦争となりました。

武力による併合については、あくまで本当にするものではなく、あたかも「不戦而屈人之兵、善之善者也。(戦わずして人の兵を屈するは善の善なる者なり。)」のごとく、強大な軍事力で心理的に圧迫し、戦わずして勝つために志向するものと、自国経済に大して影響を及ばさない、その他様々な希望的観測に基づいて本気で構想したものの2つがあるように思います。

ロシアが選択したのは後者でした。

かつての日本がそうですが

自国経済や貿易体制を度外視して武力統一を行うというのは、彼も己も知らず危うい状態です。

The Wall Street Journalの2月28日付記事"Russia’s Invasion of Ukraine Changed the World in Days ----- West returns to a policy of containing Moscow: Cold War 2.0"は、私が気になっていた点も含め、ロシアの現状や今後を示唆する興味深いものでした。

これについては、日本語版サイトに、2022 年 3 月 1 日付で「『冷戦2.0』突入、ロシア侵攻で世界激変」との邦訳が掲載されてます。そこには、こうあります。

今後の展開は、ウクライナの動向に大きく左右される。軍事専門家によると、プーチン氏は侵攻に対する西側の反応を過小評価していたかもしれないのと同様に、ロシア軍がウクライナを迅速に制圧する能力も、過大評価していた可能性がある。
ロシアがウクライナ全土の制御を望むのであれば、占領軍を維持する必要がありそうだ。そのためには、侵攻前にウクライナを包囲していた19万人の4倍に匹敵する兵力が必要になるとの見方もあり、多額を費やす終わりの見えない事業となる。そうなれば、2008年から近代化を進めてきたロシア軍が、疲弊する恐れもある。

しかも、いまやウクライナには市民レベルで多くの武器が行きわたっている可能性が高く、これを他国が占領統治したり治安を維持したりすることは極めて困難です。

クラウゼヴィッツのいう第一種の戦争に果たして勝者は存在するのか気になるところです。

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