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今後施行予定の令和2年著作権法改正で著作権法はどう変わるか

多治見さかえ法律事務所(弁護士・藤田聖典)は、著作権・商標・意匠・不正競争防止法……多治見を含む岐阜県東濃地方・中濃地方での知的財産権に関する紛争についてのご相談に対応しています。

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令和2年6月5日に令和2年改正著作権法が成立しました。その一部が今年の10月1日から施行されます(残りは来年1月1日施行予定)。

今回は、令和2年改正著作権法について、できるだけ分かりやすく噛み砕いて解説していきたいと思います。

令和2年改正著作権法の主な改正点は次のとおりです。

1 ネット上の海賊版対策が強化されます

1−1 リーチサイトの運営やリンク掲載行為等が違法となります(令和2年10月1日施行)

漫画村」といった海賊版サイトが存在し、そこに多くの人がアクセスすることにより、クリエイターの創作行為やコンテンツ産業そのものに多大な損害が生じています。

違法にアップロードされた著作物(侵害コンテンツ)リンク情報を集めて、侵害コンテンツに殊更に誘導したり、侵害コンテンツの利用のために用いられるサイトを「リーチサイト」、そのような情報を集めたアプリを「リーチアプリ」と呼びます。

リーチサイトやリーチアプリで、侵害コンテンツへのリンクを提供する行為については、著作権等の侵害行為とみなし、故意で行った場合については刑事罰の対象(3年以下の懲役・300万円以下の罰金・併科可能。親告罪)とすることとなりました。

リーチサイトの運営やリーチアプリの提供行為については、故意で行った場合のみ、刑事罰の対象(5年以下の懲役・500万円以下の罰金・併科可能。親告罪)となります。

リーチサイトの運営者やリーチアプリの提供者が、侵害コンテンツへのリンクの提供を放置する場合には、著作権等の侵害行為とみなし、民事上の責任を負わせることができるようになります。

1−2 侵害コンテンツのダウンロードが違法となります(令和3年1月1日施行)

映画館で映画の上映前に流れる「NO MORE 映画泥棒」でも紹介されているように、これまでは、違法にアップロードされた音楽・映像をダウンロードする行為については、たとえ私的使用であっても違法となっていました。

今回の法改正で、音楽・映像に限らず、漫画・書籍・論文・プログラムなど著作物全般に対象が拡大し、違法にアップロードされた著作物(侵害コンテンツ)をダウンロードする行為は、私的使用であっても違法となります。

もっとも、違法にアップロードされたものだと知った場合が対象であり、漫画の数コマなど軽微な場合や、画質が低くそれ自体では鑑賞に耐えないような場合、二次創作・パロディ、著作権者の利益を不当に害しないと認められる特別な場合については違法となりません。

2 「写り込み」が著作権侵害とならない範囲が拡大します(令和2年10月1日施行)

平成24年の著作権法改正により、写真撮影・録音・録画を行う際に著作物が写り込んでいたとしても、一定の場合(著作物を創作する場面で、写り込んだ著作物がメインの被写体から分離困難な場合)には、著作権侵害とならないことが明確化されました。

さらに、今回の法改正により、写真撮影・録音・録画に限らず、複製や複製を伴わない伝達行為全般について著作物が写り込んでいたとしても、一定の場合には著作権侵害とならないこととなります。

そして、これまで著作物を創作する場面での写り込みに限定していましたが、今回の法改正により、創作する場面との限定がなくなり、固定カメラでの撮影・ライブ配信やスクリーンショット(スクショ)などで著作物が写り込んだ場合にも対象となります。

つまり、スクショネット生配信の場合の著作物の写り込みについても著作権が制限され、著作権侵害とならない範囲が拡大します。

ただし、分離の困難性の程度、付随対象著作物(写り込んだ著作物)が果たす役割その他の要素に照らし「正当な範囲内」の利用に限定されます。

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3 ライセンス認証を回避する行為が著作権侵害となります(令和3年1月1日施行)

今後は、不正なシリアルコードの提供等が、著作権等を侵害する行為とみなされることとなります。

4 著作物を利用する権利を第三者に対抗する制度が導入されます(令和2年10月1日施行)

著作権者と利用許諾契約を締結して著作物を利用するなど、著作権者から許諾を受けて著作物を利用する権利を持っていたとします。

もし、利用を許諾していた著作権者がその著作権を第三者に譲渡した場合、著作物を利用する権利(利用権)はどうなるのでしょうか。

これまでは著作権を譲り受けた者に対して、利用権を当然には対抗できず、利用を継続することができませんでした。

しかし、今回の法改正で、たとえ、著作権者がその著作権を第三者に譲渡したとしても、著作権を譲り受けた者に対して、著作物を利用する権利を(登録などの手続きを経ることなく)当然に対抗することができるようになります。

5 著作権侵害訴訟での証拠収集手続が拡充されます(令和3年1月1日施行)

著作権者等が著作権等の侵害を理由に侵害行為の差止めや損害賠償請求を求める訴訟では、裁判所は当事者に対し侵害行為の立証や損害額の計算のために必要な書類の提出を命ずることができるとされています。

ところが、裁判所が書類提出を命ずる前の段階で、その書類を直接見ることができなかったたので、侵害行為の立証や損害額の計算のために必要な書類かどうかを適切に判断することができない場合がありました。

今回の法改正により、侵害行為の立証や損害額の計算のために必要な書類かどうかを判断するために必要があるときは、裁判所は書類の所持者に対してその書類を提示させることができることとなりました。

さらに、実際に書類を見て侵害行為の立証や損害額の計算のために必要な書類かどうかを判断する際には、専門委員に書類を開示して専門委員のサポートを円滑に受けられることが可能となります。

今回は、令和2年改正著作権法について解説しました。

多治見を含む東濃地方での知的財産権紛争の相談は、多治見さかえ法律事務所へお問い合わせください。

なお、平成30年末から平成31年初めにかけて、著作権に関して2つの大きな法改正があり、今年、コロナ対策の一環として、教育の情報化に対応した改正法が施行されたことについては既に紹介しています。



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