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映画評 ギレルモ・デル・トロ監督『ピノッキオ』、『パンズ・ラビリンス』2作品

「ひまわり」、「ライフ・イズ・ビューティフル」「マレーナ」…。いずれも戦争を題材にしたイタリア映画の名作だが、これらは戦争の悲惨さや、暴力的で冷酷なファシズムと、美しいイタリアの風景(地中海)や家族愛を対比的に描かれ、胸アツ、涙を持っていかれちゃってたまらない映画だ。

そして、戦争映画と知らずにNetflixで観たのがコレ。
『ギレルモ・デル・トロのピノッキオ』

いやー、よかった。この映画の何が凄いかって、これが全編、本物の人形によるストップモーションアニメだということだ。(先に舞台裏の動画を観た方が、より一層入っていけるかもしれない。)細かな動きで表現力豊かな人形だけでなく、教会などのセットもイタリアの時代背景を考慮して徹底的にリアルに作られている。そして何よりストーリーが素晴らしい。前述したように、戦争や圧政への憤りと抵抗が、父と子、パパとピノッキオの愛を通して描かれる。

で、ギレルモ・デル・トロ監督ってどんな監督だったかなとググってみたら、そうか、あの「パシフィック・リム」の監督か!
メキシコ出身であり、日本のアニメおたくでも有名。戦争や独裁体制批判が、何か監督の生い立ちと関係あるのかなと思ったが、特にそうした記述はない。

一方、スペイン内戦を描いた、2006年の『パンズ・ラビリンス』という映画も、当時の独裁体制を批判した内容と知り、こちらもアマプラで観ることにした。

う〜む、この映画も『ピノッキオ』に通底しており、素晴らしい映画ではないか。

しかし、少女が主役のファンタジー映画であるのに、何と暴力的なシーンが多いことよ!(PG12)。当時、多くの勘違いした家族が映画館に足を運んでしまい、ひいてしまったに違いない(笑。
この映画の主軸は冷酷な体制側と、それに立ち向かうゲリラ軍の話であり、ファンタジーはあくまでも副次的なもの(但し重要なファクター)に過ぎない。ファンタジーは、悲惨で過酷な現実から逃れるための、避難所として描かれているのである。

セルジ・ロペス演じるビダル大尉は恐ろしく残忍で敵に対しては容赦しない人物であるが、一見すると平凡な風貌をしている。ひょっとするとこの俳優の起用は、「悪魔は平凡に宿る」と後世で評されたナチスのアイヒマンを意識したのかもしれない。国のため、組織のために尽くす人間ほど、独裁政権下では悪魔的になってしまうものである。

映画は、このラビリンスが少女の夢だったのか、もしくは現実に存在していたのか、観る者に判断を委ねる、絶妙なバランスをもって終わる。

とにかくファンタジーにリアルさを与える才能においてはピカイチの、ギレルモ・デル・トロ監督。『ピノッキオ』と『パンズ・ラビリンス』の2作品においては、戦争やファシズム批判という要素が加わり、単に娯楽で終わらない、余韻の残るファンタジー映画となったのであろう。

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P.S. 今回の映画評を自分で読み直してみて、何かコレで稼ぐライターみたいな文章じゃないかと思えてきた(笑)😓。もちろん、NetflixからもAmazon primeからも一銭も入らない。宣伝になっちゃうのはバカバカしい。とはいえ、誰かに伝えたいという思いはやはり拭えないし、葛藤…。
今回は致し方なかったとして、映画評を書くのは最初で最後にしようかな💦

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