ショッパーLOVE世代
去年の7月からレジ袋が有料に変わり、それ以前からエコバッグを使っていた人もそうでない人も、あらためてエコバッグ・マイバッグの存在を意識させられるようになった。
レジ袋有料化とマイバッグ持参にはさまざまな意見があるが、90年代から00年初めでは、特に「エコ」を意識しているわけでもないのにショップ袋を常に持ち歩くのがブームになったあの時代…。
私と同世代の90年代に青春を送った人なら、記憶に残っている人も多いのではないだろうか。
そして00年代半ば頃には、ショップ袋の流行は雑誌付録のサブバッグという形に進化し、再び流行した。
今回は平成のショップ袋ブーム、また令和に入って現在も続くサブバッグについて語りたいと思う。
▪90年代ショッパーブームはどこから来たのか?
90年代を過ごした女性なら、ショップ袋と聞くとまず「me Jane(ミージェーン)」や「ALBA ROSA(アルバローザ)」「LOVE BOAT(ラブボート)」のものを思い出す方もいるのではないだろか?
これらのショップ袋は「ショッパー」という愛称で呼ばれ、90年代を代表とする流行アイテムのひとつとなった。
上記のような渋谷のギャル系ショップでなくても「ムラサキスポーツ」や「BEAMS(ビームス)」「ヒステリックグラマー」などのストリートブランドのショッパーも流行し、ファッションの系統を問わず学生を中心に若者なら誰もが持ち歩いていたと思う。
ショッパーには主に体操着を入れたり、こまごましたアイテムを収納するサブバッグ的に使ったり、学生らしく活用していたのだがこれが当時はちゃんとした「流行」のひとつだった。
振り返れば、「LOVE BOAT(ラブボート)」のミラーを持つのが流行したのと同じように、憧れのブランドの「ロゴ」を持ち歩けることが誇らしかったのかもしれない。
そんな90年代のショッパー文化は一体いつから始まったのだろうか?
元の起源をたどれば、1993年の「LAスタイル」ブームからだ。
ここで言う「LAスタイル」というのは、1992年に雑誌で紹介されたカットオフジーンズのトレーナーやスニーカーといった爽やかな西海岸スタイルではなく、サーファーファッションもミックスされて進化した茶髪ロングヘア・ルーズロングセーター・シープスキンブーツ・真ピンクの口紅といった皆がイメージしやすい典型的な90年代のコギャルスタイルだ。
この「LAスタイル」を支持するコギャル向けの渋谷系ショップからショッパー人気は火がついた。
1993年の「LAスタイル」の人気ショップといえば、主に前出のミージェーンと「BAHAMA PARTY(バハマパーティー)」だ。
特にバハマパーティーの巾着型のビニール製のショッパーは人気を博し、斜めがけにして持つのが普段の制服スタイルに浸透していった。
紙製の手提げタイプの袋ではなく、紐が通されて袋口を絞ってワンショルダーバッグのように斜めがけできる形をした巾着タイプのショッパーは、大きくプリントされたロゴに実用性も相まって、瞬く間に若い女性たちのファッションの一部として受け入れられたのだ。
※1994年プチセブンno.19.20号 / 小学館
意外かもしれないが、この時から既にムラスポとヒスのショッパーは人気だった。個人的に「キャプテン・サンタ」がジワジワくる懐かしさがある。
ほかにも、スケータースタイルの支持者には「ムラサキスポーツ」、フレンチ古着系には「Labrador Retriever(ラブラドールリトリーバー)」や「ハリウッド・ランチマーケット」の薄手コットンのものも流行した。
薄手コットンのものはじつは有料で、それぞれ200円と100円で販売されており、それでも購入するファンは多くいた。考えてみれば、今の有料レジ袋と同じようなシステムというところが面白い。
そして、90年代後半に入っても、引き続きショッパースタイルは人気を維持していった。
ギャルショップ代表「ミージェーン」や「アルバローザ」ではこの辺りで手提げタイプも定番化し、原宿系ブランドやストリートブランドのショッパーも人気の仲間入りを果たした。
※1999年プチセブンno.21 / 小学館
読者プレゼントになるぐらいショッパーは当時の定番アイテムだった。
▪より実用的になった00年代初めのショッパーブーム
00年代に入るとショッパーブームはだいぶ落ち着いたように見えるが、何かと持ち物の多い学生にはまだまだ人気だった。
その代わり、以前のような巾着型ショッパーを斜めがけに持つスタイルは減って、今度は手提げタイプや紙袋のショッパーが徐々に人気になる。
※2006年seventeen no.22 / 小学館
06年辺りからは「ショッパー」の名称から「ショ袋」へ。正確なところは不明だが、あまり追求すると世代別で重たい空気が流れそうなのでこれ以上追求しないことにする。ちなみに私はタイトル通り「ショッパー」世代だ。
紙袋といっても水に濡れるとすぐふにゃふにゃになってしまうものではなく、「CECIL McBEE (セシルマクビー)」や「ANNA SUI(アナスイ) 」のように表面がツルッと加工されたタイプや、上質な紙を使用した紙袋である。
この紙袋はロゴをアピールできるだけでなく、クラス感を演出することもできるため重宝されたのだ。
2000年代には「LIZ LISA(リズリサ)」など不織布を素材に使用したショッパーも増え、90年代から続くショッパーカルチャーはより「実用的」に変化していった。
さらにサイズ展開もこの時期から徐々に増え始め、平日、学校で使うあれこれを持ち運ぶためだけでなく、休日にちょっと遊びに出かけるときにも使えるような、用途に合わせてさまざまなシーンに活用できる進化を遂げた。
90年代に女子高生としてショッパーブームを過ごした私と同世代の方も、高校卒業とともに斜めがけショッパーも卒業した一方で、クラス感の高いものは00年代以降も変わらず普段使いに取り入れていたように思う。
▪00年代半ばから続く付録のサブバックブーム
90年代から続いてきたショッパーブームの進化は、その後2007年頃から始まる雑誌付録のサブバッグや、ショップオリジナルのサブバッグの登場に通じているような気がする。
※2008年Seventeen 4月15日号 / 小学館/
かなり前からロゴの入ったショッパーの代わりになるようなエコバッグを付録にしていた。この流行りもの全部入れちゃえばいいんじゃね?と思わせるアイデアは流石と言える。
メインのバッグのほかにもバッグを持つ、というスタイルは、小さいサイズのバッグの流行と併せて徐々に定番化していった。
近年は雑誌に豪華な付録が付いているのがすっかり当たり前になっていたが、私は当初、人気ブランドのロゴが入った小物をお手軽価格で手に入れられることにとても驚き、同時にとても嬉しくなったのを覚えている。
「Cher (シェル)」や「クリスタルボール」のランチトートから、豪華なものだと「イヴ・サンローン」。また付録ではないが「アメリカン・アパレル」などのサブバッグが人気になったのも、00年代半ばの特徴だ。
※私物のコレクション。私が「00年代の欠片」と呼んでいる雑誌の付録達。どれも一時期、鬼のように流行った。
ロゴやブランドの特徴が入っているのが基本のサブバッグは、10代だけではなく20代や30代、さらに40代と幅広い世代に受け入れられ、令和に入った現代ではすっかり定番とななった。
ショッパーにしてもサブバックにしても、以前はアパレルブランドのものが定番だったが、2010年以降は「DEAN &DELUCA(ディーン アンド デルーカ)」や「スターバックス」などおしゃれな飲食店やカフェのオリジナルのサブバッグも人気だ。
※2011年no.42美人百花8月号 / 角川春樹事務所 / サブバックのこだわりが強くなってきた頃。
※1998年プチセブンno.16 / 小学館
何気に98年もサブバック的なのは流行ったのだがメインバックで使おうとした為か、記憶に残るほど流行らなかった。
2020年にレジ袋有料化によってあらためてエコバッグが注目されるようになるずっと以前から、ショッパー文化やサブバック文化に慣れ親しんだ私たち。だが、振り返ってみるとそこには各年代でさまざまな「流行」があったのだ。
現在も多種多様なエコバッグがあるが、もしかしたら今後ショッパーやサブバック文化の流行の系譜と同様に、新たなエコバッグの流行が誕生するかもしれない。
▪トップ画像写真…私物のコレクション
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