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筑波大学一年生編③

全日本学生の直後に体重別団体の校内予選が行われた。
各階級2名登録。90kgは4人いて、1人は決まっていた。初期登録は田嶋になっていたが、もう1人は全日本学生の試合結果で決めることになった。が、その3人仲良く2コケだったので校内予選になった。
同級生と四年生の先輩になんとか勝って、メンバーにぎりぎり入る事が出来た。

体重別団体は尼崎の会場。
交通費やホテル代を、選手はOB会費から出してもらえる。
選手以外は自費での応援。夜行バスで来る同級生とかもいて、下手な試合は出来ないとプレッシャーを感じていた。
試合順は、先鋒から大将までくじ引きで決められる。
プレッシャーなく戦いやすい『先鋒がいい』と切に願った。

個人戦でクソみたいな試合して悩んでいたままで、団体戦で役に立てるか不安だらけだった。
途中の試合は悪くなく「やっぱり団体戦は得意だな」と感じた。
ベスト8で国士舘大と対戦。
90kg級は大将。
有効と技あり勝ちの2点取り、2-0のリードの状態で副将と大将の田嶋を残す。60kg級の先輩に引き分けてもらい、勝ち確にして欲しかったが一本負け。2-1の状態で回ってきた。田嶋はどんな負け方でも内容差でチームが負ける。
相手は81kg級の選手だったが、緊張のあまり体動かず、開始早々技ありを取られる。ここで「もうやるしかない」と切り替え攻めに攻めた。残り30秒で投げ返すも、有効。

チームの内容差での負けが決まった。
キャプテンの涙や、先輩たちからの『一年生なのに良くやった。あれは技ありだったよ』
優しい言葉が余計に刺さった。
帰りの新幹線でもずっと励ましてくれた。
この時心に誓ったのは
『どんな場面でも絶対に取ってくる選手』
になること。

強化の方向性が決まった。
『とにかく投げる力』(攻撃力、決定力)
を求めるようになった。
高校同様ただ一生懸命練習して、自主トレもして。。。
をやめて、何のためのトレーニングかをより明確にするように意識した。
練習もゴールは投げる事。それ以外は無視。攻撃に意識を全振りした。組手も最低限で、持たれても良いから持って投げることを優先した。

この頃内股を始めた。内股は小野先生に教えていただき、全部真似した。
暇さえあればステップの練習をした。
中高の時に打ち込みはやっていたが、実戦で使えるようになるまでは1年以上かかった。
『こうだよ!』と見本を見せてくれた時、
『痛っ!腰やった、、、ちょ、もう無理、、、』
面白かった。笑

講道館杯前ら辺、意地になって練習後にトレーニングした。
どんなにしんどくてもやり続けた。
「周りと一緒じゃ強くなれない。俺はやらなきゃ強くなれない」
試合応援の日、体調悪すぎて見てられなかった。同級生の肩を借りて寝ていた。
帰宅して熱を測ると40度近い高熱。
インフルでもなんでもなかったが、風邪をこじらせ肺炎になっていた。

肺炎で2週間以上寝込んだ。
同級生がちょくちょく様子を見にきてくれて、差し入れを持ってきてくれなかったらたぶん死んでいた。
全く部屋から出れず、たまに40度を超える時もあった。
10kgほど痩せて85kgになった。
久々に道場に顔を出すと
『お前誰?』とみんなに言われた。

筑波大はやらせる練習ではなく、自分でやる練習。つまり自分で強度を決めれる。そこで、少し手を抜くことを覚えた。
「人生適当」と良く口にしている同期がいた。『適当』良い加減な言葉に感じがちだが、素敵な言葉だなと思い影響を受けた。
過ぎたるは及ばざるが如し。
オンとオフを意識して自主トレを計画し、たまに急きょ休む事も覚えた。
きっちりやろうとし過ぎない、立てた予定も変更する事を学んだ。

あっという間の2016年が終わった。
一年かかって悩んできたものに答えが出た。
あとはひたすら追求すること。
そう決めてた2017年はつらい事から始まるなんてこの時は思ってもいなかった。

年が明け、一月末ごろに全日本選手権の茨城県予選があった。
ほぼ筑波大学の校内予選になる大会だ。
前日の調整練習で膝を痛める。その日に親が来て次の日一緒に試合に行く予定だったが、酷すぎて試合の日は病院に向かった。
左膝外側半月板の手術が決まった。
柔道から3ヶ月離れた。
2.3月は授業も無かったので、ずっと地元でリハビリなどして過ごした。
出身道場にも顔を出して、無邪気な子供たちの笑顔に救われながら、自分と向き合った。
やっぱり柔道が好きだ。
早くやりたい気持ちを堪えて大学一年生を終えた。

高校生チャンピオンとして入学するも、結果は少しも出せず、手術で終わった1年。
ただ、迷って悩んで、負け続けて、その中で見つけた自分の柔道、理想の戦い方。
攻撃力を追求し、それを出そうとする、その駆け引きが楽しかった。
これが自称『ギャンブル柔道』に繋がった。

二年生編へ。

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