体操の技を覚えよう【鉄棒02】手離し技
鉄棒が「男子体操の華」といわれる所以がダイナミックで派手な手離し技。
鉄棒の技グループⅡに属する手離し技にも様々な種類があり、いくつかの系統に分けられます。
同グループの技は最大5つまで演技構成に入れることができますが、手離し技の系統によっては技数が制限されるものもあり、選手は技選びも大切になります。
今回は覚える技が多いですが、頑張って覚えましょう。
※これから紹介する技名は、必ずしも正式名称ではなく、一部わかりやすく書き換えているものもあることをご留意ください。
➀後ろ振り上がり上向き飛び越し懸垂【B難度】
体操選手がまず覚える手離し技がこれ。
後ろ方向の振動の勢いを使って体を横に寝かせながらバーの上まで持ち上げ、バーを飛び越して再びバーを掴む技。
手離し技にはA難度の技はなく、この飛び越しのB難度が最も難度が低い技です。
②後ろ振り上がり屈身ひねりとび越し懸垂〔ボローニン〕【B難度】
B難度の手離し技はもうひとつあります。
➀飛び越しと同じような動きをしていますが、こちらは明確に「とび」局面を見せています。
屈身姿勢でバーを越えながら体の向きを変えて飛び越し、再びバーを掴む技。
▼マルケロフ系
③後ろ振り上がり開脚とび越し半ひねり懸垂〔マルケロフ〕【C難度】
②ボローニンと同じように、後ろ方向に振り上げた勢いを使って開脚でバーを飛び越えながら体の向きを変えて再びバーを掴む技。
〔マルケロフ〕と名前が付いているC難度の技です。
④後ろ振り上がり伸身とび越し半ひねり懸垂〔ヤマワキ〕【C難度】
こちらも②〔ボローニン〕と同じように、後ろ方向に振り上げた勢いを使って伸身でバーを飛び越えながら体の向きを変えて再びバーを掴む技。
伸身姿勢であることが求められるため、③〔マルケロフ〕よりも高さが必要ですが、難度は変わらずC難度。〔ヤマワキ〕と名前がついています。
同じC難度ですが、③〔マルケロフ〕よりも〔ヤマワキ〕の方が使う選手が多いのが現状。画像のようなきれいな伸身姿勢で実施できる選手は少なく、曖昧な姿勢での実施が目立ちます。あまりに姿勢が伸身からかけ離れていた場合、屈身姿勢と判断、つまりB難度の②〔ボローニン〕として判断されることもあります。
⑤後ろ振り上がり伸身とび越し1回半ひねり懸垂〔ウェルストロム〕【F難度】
④〔ヤマワキ〕に1回ひねりを加える技。④〔ヤマワキ〕はC難度でしたが、1回ひねりを加えることで難度は3段階上がってF難度になります。
▼イェーガー系
⑥前方開脚宙返り懸垂〔イェーガー〕【C難度】
後ろ方向に振り上げた振動を使って、バーを越えずに開脚で前方宙返りをして再びバーを掴む技。
〔イェーガー〕と名前が付いているC難度の技。
⑦前方伸身宙返り懸垂〔バラバノフ〕【D難度】
⑥〔イェーガー〕を伸身姿勢で行う技。
開脚屈身で行う⑥〔イェーガー〕に比べ、伸身姿勢で行うこの技はひとつ難度が上がってD難度、〔バラバノフ〕と名前がついています。
⑧前方伸身宙返り1回ひねり懸垂〔ウィンクラー〕【F難度】
⑦〔伸身イェーガー〕に1回ひねりを加える技。
ひねりながら伸身姿勢を保つのが難しそうです。
こちらはF難度で〔ウィンクラー〕と名前がついています。
〇前方伸身宙返り1回ひねり懸垂〔ポゴレロフ〕【F難度】
〔ウィンクラー〕と同じ動きですが、何が違うかというと、握り方が違います。
〔ウィンクラー〕は逆手握りからの伸身イェーガー1回ひねりですが、
〔ポゴレロフ〕は大逆手握りからの伸身イェーガー1回ひねりです。
あくまでルールブック上はそうなっているし、正式名称がそうであるというだけなので、大逆手からの伸身イェーガーを〔ウィンクラー〕と呼ぶ人もいます。
でも逆手からの伸身イェーガーをわざわざ〔ポゴレロフ〕と呼ぶ人はいません。
なので、とりあえず面倒くさいことは置いといて〔ウィンクラー〕で覚えてしまえば問題ありません。
より正確な表記を求めるならば、大逆手握りからの伸身イェーガー1回ひねりは〔ポゴレロフ〕とするのが適当でしょう。
▼ギンガー系
⑨後方屈身(伸身)宙返り半ひねり懸垂〔ギンガー〕【C難度】
懸垂から前に振り出して手を離し、バーを越えずに屈身または伸身姿勢で宙返りをしながら半分ひねって再びバーを掴む技。
この技は〔ギンガー〕と名前がついているC難度の技です。
⑩後方伸身宙返り1回半ひねり懸垂〔デフ〕【F難度】
⑨〔ギンガー〕に1回ひねりを加える技。
⑨〔ギンガー〕はC難度でしたが、1回ひねりを加えることで
F難度の〔デフ〕という技になります。
⑪懸垂前振りひねり前方開脚宙返り懸垂〔デルチェフ〕【C難度】
懸垂から前に振り上げて手を離した直後に半分ひねりをかけ、
⑥〔イェーガー〕のように開脚で前方宙返りをして再びバーを掴む技。
⑨〔ギンガー〕と同じくC難度で、⑨〔ギンガー〕よりも要素が多いのであまり使われません。
▼トカチェフ系
⑫懸垂前振り開脚背面とび越し懸垂〔トカチェフ〕【C難度】
懸垂から前に振り出して、バーを背面にして手を離したのち、体の向きを変えずに開脚でバーを飛び越して再びバーを掴む技。
〔トカチェフ〕と名前がついているC難度の技で、手離し技の中では最もよく使われる技です。
⑬懸垂前振り屈身背面とび越し懸垂〔屈身トカチェフ〕【C難度】
⑫〔トカチェフ〕を屈身姿勢で行う技。難度は変わらずC難度。
以前は⑫〔トカチェフ〕と同じ技として扱われていましたが、
今は別技扱いなので⑫〔トカチェフ〕との併用が可能です。
⑭懸垂前振り伸身背面とび越し懸垂〔伸身トカチェフ〕【D難度】
⑫〔トカチェフ〕を伸身姿勢で行うD難度の技。
体が完全に伸身であることが求められ、曖昧な姿勢にはC難度の⑬〔屈身トカチェフ〕と判断されることがあります。
⑮懸垂前振り伸身背面とび越し1回ひねり懸垂〔リューキン〕【F難度】
⑭〔伸身トカチェフ〕に1回ひねりを加える技。
D難度の⑭〔伸身トカチェフ〕に1回ひねりを加えることで
F難度の〔リューキン〕という技になります。
トカチェフ系の技を使う選手は多いですが、〔リューキン〕までたどり着く選手はひと握りです。
⑯後方開脚浮腰回転直接開脚背面とび越し懸垂〔ピアッティ〕【D難度】
〔シュタルダー〕(後方開脚浮腰回転)と呼ばれる動きから直接⑫〔トカチェフ〕の動きに繋げることでひとつの技とする技。
⑫〔トカチェフ〕にひとつ要素が加わることでひとつ難度が上がって
D難度の〔ピアッティ〕という技になります。
〔シュタルダー〕についてはチャプター03で説明します。
⑰後方開脚浮腰回転直接伸身背面とび越し懸垂〔伸身ピアッティ〕【E難度】
⑯〔ピアッティ〕を伸身姿勢で行う技。
⑯〔ピアッティ〕よりもトカチェフへの移行での力を使うのに加えて高さが必要になることから難度はひとつ上がってE難度。
⑱後方開脚浮腰回転直接伸身背面とび越し1回ひねり懸垂〔スアレス〕
⑰〔伸身ピアッティ〕に1回ひねりを加える技。
トカチェフ系では最高難度のG難度が得られます。
今では使う選手はいませんが、今後使い手が現れそうな技。
▼コバチ系
⑲バーを越えながら後方抱え込み2回宙返り懸垂〔コバチ〕【D難度】
体操の華と言われる鉄棒の中でも花形の技がこの〔コバチ〕。
バーを越えながら後方に2回宙返りをして再びバーを掴む技。
この系統の基本形となる動きですがD難度と高難度が取れます。
⑳バーを越えながら後方屈身2回宙返り懸垂〔屈身コバチ〕【E難度】
⑲〔コバチ〕を屈身姿勢で行うとひとつ難度が上がってE難度。
㉑バーを越えながら後方伸身2回宙返り懸垂〔伸身コバチ〕【E難度】
⑲〔コバチ〕を伸身姿勢で行うとひとつ難度が上がってE難度。
⑳〔屈身コバチ〕と同じ技として扱われています。
㉒バーを越えながら後方抱え込み2回宙返り半ひねり懸垂【D難度】
⑲〔コバチ〕に半分ひねりを加えて逆手でバーを掴みます。
難度は⑲〔コバチ〕と変わらずD難度。
㉓バーを越えながら後方屈身2回宙返り半ひねり懸垂〔ゲイロード2〕【E難度】
⑲〔コバチ〕に半ひねりを加えた㉒の技をを屈身姿勢で行う技。
この技は現在コバチ系として扱われていますが、もともとはギンガー系の技でした。バーを越えながらギンガー+1回宙返りをして逆手でバーを掴むといった技なのですが、いつからかコバチ系の技になったのです。
手離し技同士、同じ技グループなのだから、ギンガー系だろうがコバチ系だろうがどっちでもいい気がしますが、実はこの違いが今のルールにある影響を及ぼします。
これについてはチャプター05で記述します。
㉔バーを越えながら後方抱え込み2回宙返り1回ひねり懸垂〔コールマン〕【E難度】
⑲〔コバチ〕に1回ひねりを加える技。
抱え込みの⑲〔コバチ〕に1回ひねりを加えると難度がひとつ上がってE難度になります。
㉕バーを越えながら後方伸身2回宙返り1回ひねり懸垂〔カッシーナ〕【G難度】
㉔〔コールマン〕を伸身で行うと難度がふたつ上がってG難度になります。
㉖バーを越えながら後方抱え込み2回宙返り2回ひねり懸垂〔ブレットシュナイダー〕【H難度】
⑲〔コバチ〕に2回ひねりを加えた技。
H難度と超高難度の価値を持つ、鉄棒競技者の究極技。
技が発表された当初は使う選手もいましたが、今ではあまり見られなくなりました。
〔ブレットシュナイダー〕と名前がついています。
㉗バーを越えながら後方伸身2回宙返り2回ひねり懸垂〔ミヤチ〕【I難度】
㉖〔ブレットシュナイダー〕を伸身姿勢で行う技。
H難度の㉖〔ブレットシュナイダー〕を上回る鉄棒競技者の最終奥義。
男子最高難度のI難度を持ち、〔ミヤチ〕と名前がついています。
▼ゲイロード系
㉘バーを越えながら前方抱え込み2回宙返り懸垂〔ゲイロード〕【Dなの】
⑲〔コバチ〕はバーを越えながら後方に2回宙返りをする技ですが、
この〔ゲイロード〕はバーを越えながら前方に2回宙返りをして逆手で掴む技。
⑲〔コバチ〕より掴むのが難しそうですが、コバチと同じD難度。
㉙バーを越えながら前方屈身2回宙返り懸垂〔屈身ゲイロード〕【E難度】
㉘〔ゲイロード〕を屈身姿勢で行うと難度がひとつ上がってE難度。
㉚バーを越えながら前方抱え込み2回宙返り半ひねり懸垂〔ぺガン〕【F難度】
㉘〔ゲイロード〕に半分ひねりを加えて順手で掴むと難度がふたつ上がってF難度の〔ペガン〕という技になります。
㉛バーを越えながら前方屈身2回宙返り半ひねり懸垂〔マラス〕【G難度】
㉚〔ペガン〕を屈身姿勢で行うとまた難度がひとつ上がってG難度。
㉜バーを越えながら前方抱え込み2回宙返り1回ひねり懸垂〔コウディノフ〕【G難度】
㉘〔ゲイロード〕に1回ひねりを加えるとG難度の〔コウディノフ〕という技になります
この中でも特にトカチェフ系、コバチ系はよく使われています。
そのほかの系統の手離し技で演技を構成する選手ももちろんいますが、特にゲイロード系は世界的にも少ないので、それが「個性」として評価されています。
画像出典
Men's Horizontal Bar #Tokyo2020 qualifications - Subdivision 2
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