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2022年東南アジア競技大会 種目別メダリストの演技

2年に一度開催される東南アジア競技大会。
SEAgamesとも呼ばれる総合競技大会です。
体操競技は5月13日~16日の4日間に渡って団体・個人総合・種目別の競技が行われました。

今回はその中で、男子種目別でメダルを獲得した選手たちの演技を見て行きましょう。
動画はシンガポールの公共放送がアップしてくれています。
(日本の公共放送も冠大会を持っているのだからこれくらいしてほしいものです。本当に。何のために受信料払ってると思ってるんですか。個人総合上位者の演技しか見られないとかケチにも程がありますよね。個人総合上位者以外の選手の演技を見るためには会場に行くしか方法が無いなんて時代錯誤も甚だしいですよ。ネットを活用しろよ。ネットを。オリンピックの時だけ気合入って全演技フルで残しよる。全日本でやらないのは5千万歩譲ってわかるとしてもNHK杯とかいう大会で何もしないのは御門違いでしょうよ。怠慢。職務怠慢。)

おっと、何か聞こえてきましたね。
それでは1種目ずつ演技を見ていきましょう。

ゆか

3位 カン・トリン・ハイ(ベトナム)

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後方3回半、前方屈身ダブルとE難度2つから入ります。着地もまずまず。
D難度+伸身前宙で加点も押さえます。
サイドラインでは、のちに後方1回半ひねりを使う事で使えなくなった2回ひねりの代わりに2回半ひねりを使って価値点の上積みを狙います。着地も良いです。
前半は中々着地が定まらなかったものの、後半は着地の調子が上がってきて終末技の3回ひねりも止めています。
後半の着地のおかげでEスコアを落とさず14点台にのせます。

2位 ウェイ・アン・テリー・テイ(シンガポール)

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高難度のひねり技から入って、加点も押さえます。
演技中1つは入れなくてはならない2回宙返り系は前向き着地の難しい技ですが、着地をきちんと止めます。
開脚座からの十字倒立では、腰を上げたところで停滞がありましたが、無事C難度で認定されたようです。
その後も前方着地がありますが、着地は動きません。
終末の3回ひねりも小さく1歩に留めました。
全体的に着地の冴えた会心の演技を披露しました。
前方後方問わず着地を止めるところは素晴らしいです。
宙返りの高さとひねり不足を改善すればEスコア9点台も目指せるのではないでしょうか。
3位のカン選手とはEスコアでは劣りますが、Dスコアの0.1が功を奏して上に立つことができました。

1位 カルロス・ユーロ(フィリピン)

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冒頭に、後方2回半+前方屈身ダブルという世界初の組み合わせを実施。0.2の加点を得ます。
③は伸身ムーンサルト。昨シーズンはF難度の伸身新月面を入れていましたが、ここはそれ以前のシリーズに戻しています。
サイドラインでは、多くの選手が後方2回ひねりを実施するところを、カルロスは後方3回ひねりを実施して格の違いを見せつけます。
そして、かつて終末技に後方3回ひねりを使っていたところを、後方3回半ひねりに変えています。
かつての演技構成から、後方2回ひねり(C難度)⇒後方3回ひねり(D難度)、後方3回ひねり(D難度)⇒後方3回半ひねり(E難度)とアップグレードすることで0.2点分価値点を上げています。
1回宙返りのひねり技同士の組み合わせで加点が得られなくなった事への補填の役割も果たしているわけですね。
この構成をベースとして、今後③伸身ムーンサルトを伸身新月面に。さらに前方抱え込みダブルを入れて加点を獲得してDスコアのさらなる向上が見込めます。
こんなとんでも構成にも関わらず、着地がバシバシ決まっています。
こんな構成でこんな着地されたら勝ち目無いですね。2位と1点以上の差をつけて圧勝です。


あん馬

※確認できたのが決定点のみのため、DスコアとEスコアはこちらで計算したものになります。間違っていたらすみません。

3位 エイミー・ムハメド・シャルール(マレーシア)

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交差系はA難度、まずB難度のフクガを確実に決めてから、D難度の移動技を次々と成功させます。
終末技は馬端でロシアン1080度転向おり。
3周目で脚が割れてしまいます。

2位 タン・フ・ジエ(マレーシア)

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マレーシアから唯一東京オリンピックに出場した選手。
手足が長く旋回が大きく見えます。
交差系はC難度のとびひねり。
フロップ、コンバインは難なくこなします。
直後の転向移動で体が沈み掛けますが、直結した馬端ロシアンで持ち直しました。
前後移動からのトンフェイ、終末の倒立も問題なくスムーズに上がって着地まで綺麗に決まりました。

1位 ダン・ゴク・シュアン・ティエン(ベトナム)

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冒頭の交差倒立は勢いがありつつ倒立までスムーズに上がっています。倒立も綺麗です。
フロップ、コンバインは危な気がありません。手脚が長くスマートな旋回が安定しています。
ウ・グォニアン、ロスと転向系の移動を2つ、その流れで馬端ロシアン、さらに前後移動で着実に難度を稼ぎます。
終末の倒立が戻りかけますが、堪えて着地まで綺麗に決まりました。
旋回の質が良く、あん馬の得意な選手特有のミディアムなリズムが心地よいです。

つり輪

※確認できたのが決定点のみのため、DスコアとEスコアはこちらで計算したものになります。間違っていたらすみません。

3位 レ・タン・トゥン(ベトナム)

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冒頭はアザリアンですが、勢いを使っているように見えます。
続いて振り上がり十字、十字を止める前に肩が輪よりも高い位置にきているのがわかります。
3つ目にC難度からB難度に格下げされた振り上がり開脚上水平、気持ち足先が下を向いているように見えますが良い実施と言えるでしょう。
振動系から脚前挙、力を使って倒立に持ち込みます。
振動系の影響でケーブルの揺れが見て取れますが、翻転倒立で揺れを解消しました。
終末は伸身ムーンサルト、腰が曲がっていて伸身姿勢としてはイマイチです。着地は1歩に抑えました。

2位 グエン・ヴァン・カン・フォン(ベトナム)

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ベトナムにまたつり輪の強い選手が出てきましたね。
冒頭はF難度からE難度に格下げされた後転中水平。足の位置が輪の高さよりも低く見えます。
続いて振り上がり中水平、こちらは肩の位置が輪の高さよりも高く見えます。
後転からと振り上がりからとで中水平の形が少し異なるのがおもしろいですね。
ヤマワキ、ジョナサンからのホンマ十字、ホンマ十字で肩が輪の高さよりも沈んでいるのがわかります。
振り上がり上水平は体がまっすぐ伸びていて見惚れる美しさです。そこからゆっくり下ろしてナカヤマ十字。素晴らしい実施。
振動倒立でバランスを崩しかけますがすぐに持ち直します。ケーブルの揺れも最小限にとどめています。
終末の伸身ムーンサルトでは着地が跳ねてしまい、大きく前に出て手をついてしまいました。

1位 カルロス・ユーロ(フィリピン)

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振り上がり中水平から単発の中水平、肩の位置も足の位置も輪の高さを維持しています。
そこからゆっくりとアザリアンに繋げます。
静止時間も長く、力の表現が素晴らしいです。
一度倒立に上げてからジョナサン、ヤマワキ、ホンマ十字と繋げます。静と動のメリハリがあって見栄えする構成です。
ホンマ十字も肩の位置を輪の高さに近いところを維持しています。
振動倒立でもケーブルの揺れを起こしません。
そのまま終末の新月面で着地を小さく1歩に抑えます。

跳馬

※確認できたのが決定点のみのため、DスコアとEスコアはこちらで計算したものになります。間違っていたらすみません。

3位 ユアンチョ・ベサナ(フィリピン)

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1本目はドリッグス。着手時の脚の開きは最小限に留めています。高さは十分出ていて軌道もまっすぐ。ひねりにキレがあり、着地に向かう準備局面も確認できます。空中での脚割れがやや見え、着地は前に大きく1歩。全体的に良い実施と言えるでしょう。

2本目はユルチェンコ2回ひねり。
着手からの上昇局面が印象的です。
こちらも空中での脚割れが微細ながら見えますが、ひねりきり、また着地に向かう準備局面が良く表現されています。着地は小さく1歩に抑えました。

2位 ティクンポン・スリントンタ(タイ)

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1本目はローチェ。
足が閉じられていて姿勢の減点は最小限に抑えられています。
それでいて高さのある雄大な跳躍。体の開きがないためか、僅かながら回転がかかり過ぎて着地で潰れそうになるかと思いきや、着地での踏ん張りが効いて前に大きく1歩動くに留めました。飛距離もあって素晴らしい実施です。

2本目はドリッグス。
着手時に脚の開きが見えますが、高さは十分に出ていると思います。
空中での脚割れがなく、ひねり不足もありません。
ひねりの勢いを持ったまま着地しているので着地が横に逸れて危うくラインオーバーというところでした。
ラインオーバーを回避するために片足でバランスをとりますが、その動作も減点対象になるので結果オーライといったところでしょうか。

1位 カルロス・ユーロ(フィリピン)

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2021年世界選手権種目別跳馬のチャンピオンでもあるカルロス。
1本目はドラグレスク。
抱え込み姿勢の脚の開きが目立ちます。その分高さと回転力が極まって着地に向かう準備が良く為されています。着地は小さく後ろに1歩。ひねり不足もありません。

2本目はロペス。
着手時の脚の開きはほとんどありません。それでいて高さも抜群。空中姿勢は僅かに膝の曲がりが見られます。
着地は後ろに大きく1歩。縦回転がかかり過ぎて弾むような着地になりました。

平行棒

※確認できたのが決定点のみのため、DスコアとEスコアはこちらで計算したものになります。間違っていたらすみません。

3位 レ・タン・トゥン(ベトナム)

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冒頭のホンマで少し力を使います。
D難度からE難度に格上げされた車輪ディアミドフで綺麗に倒立にハマりませんが、その流れで棒下宙返り倒立へと持ち込みます。この技順にするあたり、車輪ディアミドフと棒下宙返り倒立双方の熟練度が窺えます。
続いて今ではすっかり珍しくなったベーレを華麗に決めます。体の開きも見えて良好な実施。
方向を変えて棒端から振り下ろしてバブサーからシンピ倒立、ティッペルト、そしてツイスト倒立と静と動を織り交ぜた抑揚のある流れ。
終末の屈身ダブルの着地も止めました。

2位 カルロス・ユーロ(フィリピン)

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初めに踏み切って単棒倒立シャルロで入ります。そのまま単棒ヒーリーへ。無事にE難度を2つ稼ぎます。そこからさらにE難度のマクーツ、そしてヒーリー。ヒーリー系の強さ、支持系の強さが窺えます。
ホンマでグループ点を押さえ、モイ、バブサー、ティッペルトと懸垂系を3連続で成功。
その後のディアミドフで片手が1歩歩いてしまいます。
終末はF難度からE難度に格下げされた前方ダブルハーフ。着地は小さく1歩に留めました。

1位 ディン・フォン・タン(ベトナム)

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まずホンマから入ります。支持から倒立まで滑らかに上げました。
続いて停滞のないマクーツからDツイスト、単棒倒立でしっかり静止しています。僅かな脚割れはありますが問題ありません。横向きに懸垂してから開脚で力を使って倒立に上げます。ここも単棒倒立の表現が美しいです。
続いて棒下宙返りひねり倒立から棒下宙返り倒立。棒下宙返りひねり倒立は倒立に上がりながら1/2ひねる理想的な実施と言えるでしょう。
続いて先の2選手と同じく懸垂系の技を連続で繰り出します。
終末は屈身ダブル、着地は前に大きく1歩動きました。

鉄棒

※確認できたのが決定点のみのため、DスコアとEスコアはこちらで計算したものになります。間違っていたらすみません。

3位 レ・タン・トゥン(ベトナム)

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アドラーひねり倒立から入って加速車輪を経て伸身トカチェフへ。伸身姿勢が美しいです。続いて開脚トカチェフ、高さもあります。
後方車輪のひねり技から向きを変えてアドラーへ、エンドーから直接前方のひねり技を実施します。
終末は伸身の新月面。空中姿勢は良いですが、着地に向かうところで脚が開いてしまいます。着地は後ろに大きく1歩。

1位(同率) カルロス・ユーロ(フィリピン)

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初めにD難度からC難度へ格下げになった伸身コスミックこと「ヤマワキ」から入ります。ここまで綺麗な伸身姿勢ができる選手はなかなかいません。そこからエンドーを使って倒立に上がります。
アドラーひねりで向きを変えて加速車輪からコールマン、コバチと手離し技を続けます。
高さも十分、体の開きも見せる素晴らしい実施。
後方車輪のひねり技を2つ続けた後は、アドラーでしっかり倒立にハメて緩急をつけます。
終末は伸身新月面、着地は小さく1歩にまとめます。

1位(同率) ディン・フォン・タン(ベトナム)

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冒頭は新たに単独でB難度からC難度へ格上げになった閉脚のエンドーから。
そのままアドラーから肩を返してロシア式車輪こと大逆手背面車輪へ。
手離し技は閉脚の屈身トカチェフから開脚トカチェフ。どちらも難なくこなしますが高さが欲しいところ。
後方車輪から両脚を両腕の間に通して振り出し、順手背面車輪「チェコ式車輪」をスマートに決めます。先に入れた脚を両腕の間から出してシュタルダーで倒立に上げます。
終末は抱え込みの新月面、着地は大きく1歩動いてさらに1歩歩きました。


東南アジアという、体操においては発展途上の地域ですが、15点台も飛び出すような思いの外レベルが高い大会で、見ていて楽しかったです。
こういった地域で絞られた大会を見てみると、あまり目立たない国にも良い選手がいる事を知れる機会になります。


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