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体操の技を覚えよう【ゆか03】アクロバット以外の技

ゆかはグループ要求として、アクロバット以外の技を必ず1つは入れなければなりません。
ゆかのグループは以下の3つに分けられます。
グループⅠ「跳躍技以外の技」
グループⅡ「前方系の跳躍技」
グループⅢ「後方系の跳躍技」

今回紹介するのはこの中のグループⅠ「跳躍技以外の技」
その種類は力技、旋回技、その他に分ける事ができます。
種類ごとに見ていきましょう。まずは力技から。


力技

力技はひとつの演技の中に2つまでという制限がついています。
いくら倒立が得意でも、つり輪が得意で多様な力技ができようとも、2技までしか演技構成に入れることはできません。
そして、力技は特定の姿勢で2秒間静止することで初めてその価値を得る事ができます。

①立位から伸腕屈身開脚力倒立【A難度】
体操においては基本となる技。両足を地に着けた立位の姿勢から上半身を屈めて両手を着きます。肘を伸ばして上半身は動かさず、腰の力を使って下半身をゆっくり倒立まで持ち上げます。
日本ではこの技を「シンピ倒立」と呼びます。

開脚シンピ


②伸腕屈身閉脚倒立【B難度】
①のシンピ倒立を閉脚のまま持ち上げると難度がひとつ上がります。

閉脚シンピ


③開脚前挙支持から伸腕屈身力倒立【B難度】
両腕で体を支持しながら両脚を両腕の外側に置き、脚を前方向に挙げる「開脚前挙支持」から腰を持ち上げてシンピ倒立をする技。
シンピ倒立の前に開脚前挙の付加要素がある事で開脚シンピでもB難度が取れます。

14開脚前挙シンピ


④開脚座から伸腕屈身力倒立【B難度】
③と同様、シンピ倒立の前に開脚座の付加要素があることでB難度が取れます。

開脚座シンピ


⑤前後開脚座から伸腕屈身力倒立【B難度】
④は左右に脚を開いた開脚座でしたが、こちらは前後に脚を開いた開脚座。
④とは違い、片方の脚を両腕の下に通す必要があります。

前後開脚座シンピ


⑥正面支持臥から伸腕屈身力倒立【B難度】
身体を俯せにして上半身を起こし両腕で上半身を支持する「正面支持臥」からシンピ倒立に持ち上げます。

正面支持臥シンピ

③開脚前挙支持から伸腕屈身力倒立
④開脚座から伸腕屈身力倒立
⑤前後開脚座から伸腕屈身力倒立
⑥正面支持臥から伸腕屈身力倒立
以上の4技はルール上同じ技として扱われます。


⑦脚上挙支持【B難度】
「脚」を「上」に「挙げる」事で「脚上挙支持」
体操選手は軽々やってしまいますが、見た目以上に力を使う技です。

脚上挙


⑧脚上挙支持(足が水平)〔マンナ〕【C難度】
こちらは脚がゆかと水平になるまで持ち上げてしまう技。
ジュニア選手が難度を稼ぐためによく使う傾向があります。

3マンナ


⑨脚上挙支持から伸腕屈身力倒立【C難度】
⑦脚上挙支持から両腕の間に脚を通してシンピ倒立に持ち上げる技。
下の画像は閉脚で持ち上げていますが、開脚シンピでも可。

9脚上挙シンピ


⑩マンナから伸腕屈身力倒立【D難度】
⑧〔マンナ〕から両腕の間に脚を通してシンピ倒立に持ち上げる技。
ゆかのグループⅠはD難度が最高難度なのですが、力技でD難度が取れるこの技はマンナが得意な選手には重宝がられます。
しかし、この技で価値点を得るには、マンナで2秒止めて、倒立に持ち上げてからさらに倒立を2秒止めなければなりません。
ゆかは演技時間が75秒と決まっているため、時間を大幅に使ってしまうというデメリットのある技です。

10マンナシンピ


⑪立位から伸腕屈身力十字倒立【B難度】
①のシンピ倒立を、手幅を大きく広げて十字の形で倒立をすると難度が一つ上がってB難度になります。

20十字倒立


⑫開脚座から伸腕屈身力十字倒立【C難度】
⑪の十字倒立を開脚座から持ち込むことで、難度が上がってC難度を得る事ができます。
グループⅠの力技では最もよく使われる技です。
中々画像のように頭の位置がゆかにつきそうなほど低く実施できる選手は貴重です。

21開脚座から十字倒立


⑬開脚水平支持【A難度】
両腕で体を支えながら全身をゆかと水平になるように開脚で静止します。
これができるようになるまでかなりの時間とトレーニングが要りますが、A難度なんですね~。

25開脚上水平


⑭水平支持【B難度】
⑬を閉脚で支持して静止する技。

26上水平


⑮中水平支持【C難度】
⑭よりも体を限りなくゆかに近づけた位置で静止する技。
つり輪が得意な選手によく使われます。

27中水平


⑯開脚水平支持から伸腕伸身力倒立【B難度】
⑬開脚水平支持で2秒静止してからそのまま伸身姿勢で倒立に持ち上げる技。

開脚上水平シンピ


⑰水平支持から伸腕伸身力倒立【C難度】
⑯と同じく、⑭水平支持で2秒静止してからそのまま伸身姿勢で倒立に持ち上げる技。今では滅多に見る事のない技です。
水平支持と倒立という2つの要素があり、同じC難度でも⑮中水平支持の方が要素が少ないためか良く使われるようです。

33上水平~倒立


⑱前転開脚前挙支持経過倒立【B難度】
前転で足を着かずに開脚で腰を浮かせてそのまま倒立へ持ち上げる技。
近年使う選手が増えた技です。

44前転開脚浮腰倒立


⑲前転脚前挙支持経過閉脚倒立【C難度】
こちらも近年使う選手が増えた技。⑱を閉脚で倒立に上げる事で難度が上がってC難度になります。ただしこの技は、両腕の間から脚を抜いた後に閉脚で倒立に挙げなければならないという要求があります。
これが似た技である⑨脚上挙支持から伸腕屈身力倒立との大きな違いですね。
こちらの方が⑱よりも難度が高くなるので⑱よりも良く使われます。

45閉脚浮き腰


旋回技

旋回技も力技と同様に2回までしか演技構成に入れられません。
いくらあん馬が得意で多様な旋回技ができようとも、2技までしか演技構成に入れることはできないのです。

⑳閉脚/開脚旋回【A難度】
あん馬でよく見る単純な旋回ですが、ゆかでも旋回を1周回すだけでA難度が取れます。
ゆかで旋回技をする選手は開脚旋回を実施する選手が多く、あん馬でも開脚旋回を得意とする選手がゆかで旋回技を使う傾向があります。

91開脚旋回


㉑開脚旋回倒立【B難度】
開脚旋回の勢いを使って倒立に上げる技。画像では倒立に上げた後に1回ひねって立位へ下ろしています。

92旋回倒立


㉒開脚旋回1回ひねり(2回の旋回で)【B難度】
開脚旋回をしながらひねりの要素を加えます。この技は旋回を2周回すうちに1回ひねらなければなりません。
この動きはゆか・あん馬共に「シュピンデル」と呼ばれています。

シュピンデル


㉓開脚旋回倒立、下ろして開脚旋回〔ゴゴラーゼ〕【C難度】
㉑のように開脚旋回から倒立に上げた後に、再び腰を下ろして開脚旋回に戻る技。C難度という事もあって、開脚旋回が得意な選手の間でよく使われます。

93ゴゴラーゼ


㉔開脚旋回270°以上ひねり直接倒立、下ろして開脚旋回【D難度】
㉒シュピンデルと㉓ゴゴラーゼを組み合わせた技。㉒ではシュピンデルで1回ひねって正面支持でおさまりましたが、ここでは直接倒立に上げて㉓ゴゴラーゼの動きに繋げます。
ゆかのグループⅠはD難度が最高難度ゆえ、旋回技が得意な選手はこの技で難度価値点を稼ぎます。

112シュピンデルゴゴラーゼ


㉕開脚旋回とび1回ひねり倒立、開脚旋回(2回のとびを伴う)【D難度】
旋回技でD難度が取れるもう一つの技。ブレイクダンスのような技ですが、体操選手のやるこの技は肘や膝つま先がピンと伸びていて美しいです。「エアトラ」や「エアフレア」などと呼ばれることがあります。
旋回技が得意な選手の究極は㉕エアトラと㉔シュピンデルゴゴラーゼの2つのD難度をそろえる事です。実際ゆかでこの2技を揃える構成を持つ選手もいます。力技ではなかなかできない所業ですね。

94エアトラ


㉖ロシアン1080°以上転向〔フェドルチェンコ〕【C難度】
内村航平さんがゆかのグループ要求を満たすために使っていた技。下向きの姿勢を維持しながら3周回るという技です。この下向き転向の動きを「ロシアン」と呼び、ロシアン転向を1080°つまり3周回っているという事になります。
これが1周360°回るととA難度、2周720°だとB難度になります。熟練度の甘い選手の実施によっては3周1080°回り切れずにB難度になってしまう事もしばしばあります。

117フェドルチェンコ


その他

㉗片足平均立ち【A難度】
いわゆる「バランス」というやつですね。
画像はI字バランスですが、水平バランスもこの技のうちに入ります。また、脚をI字の状態で上半身を水平に保つとB難度が取れます。

67I字バランス


㉘後ろとび屈身正面支持臥〔エンドー〕【B難度】
一見宙返りのようにもバック転のようにも見えるこの技ですが、両足で着地をせずに正面支持臥で終わる技です。。

74エンドー


㉙後ろとび1回ひねり正面支持臥【B難度】
㉘エンドーを伸身姿勢で、手を着く前に1回ひねりを加えて正面支持臥で終わる技です。この技は㉘エンドーと同枠、同じ技として扱われます。

74エンドー1回ひねり


㉚バタフライ1回ひねり〔トンフェイ〕【B難度】
片足で踏み切って胴体を下に向けたまま浮遊させ、両脚を蝶の羽のようにひらっと上下に旋回させる技を「バタフライ」といいます。
フィギュアスケートではよく見られる動きですね。
この〔トンフェイ〕はそれに1回ひねりを加えたもの。
滅多に見ない技ですが、未だに使う選手は稀に現れます。

80トンフェイ



ゆかはアクロバット以外にもこれだけの技があり、選手たちはここから減点を少なく実施できる技を選択して演技をします。
ゆかのグループⅠはD難度が最高難度なので、グループⅠの技だけでは高いDスコアを稼げません。なので選手は1つか2つ入れるのが普通です。
ルール上はグループⅠの技も5つは入れられますが、5つも実施する選手はいません。
技を完成させるのに必要な労力にこれらの難度設定が妥当なのかという疑念もあります。
ひねり技に比べてひとつひとつの技を判別しやすいので、見る側もわかりやすいし、選手にとっては自分なりの表現ができる場面にもなります。
自分の好きな選手がゆかでどんな技をやっているのか、注目してみてはいかがでしょうか。

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