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2023年1月の体操ニュース

2023年に入り早1ヶ月がたちました。
国際大会などはオフシーズンですが、アメリカやフランスなどローカルでは既に新シーズンの大会が始まっています。
しかし、大きな大会としては、2月下旬のW杯から本格的なシーズンが始まります。
この2ヶ月もの間、大きな大会がない中で毎週のように試合を行い、逐一演技動画をアップしてくれるアメリカの各大学体操部陣営には感謝してもしきれません。彼らのおかげで飢えを凌げます。

さて、そんな中でも体操に関するニュースは更新されていきます。
2023年に入ってからこの1ヶ月の間に起こった体操ニュースをまとめていきます。

▼新たに4つの技が認定


昨年12月にFIGからニュースレターとして、男子に新たに4つの技が新技として認定されました。

一つ目は、世界選手権で発表されたつり輪の技。
「十字倒立からゆっくり下ろして逆懸垂経過伸腕伸身逆上がり脚上挙十字懸垂」
この技は中国の鄒敬園(ゾウ・ジンユエン)選手が発表し、E難度で認定されました。

既に存在していた「ボロビオフ(十字倒立からゆっくり下ろして逆懸垂経過伸腕伸身逆上がり十字懸垂)」という技を、脚上挙十字懸垂姿勢にアップデートさせた技になります。
種目別つり輪決勝でもこの技を披露しており、見事銀メダルを獲得しています。


二つ目は、こちらも世界選手権で発表されたつり輪の技。
「ゆっくりと後方伸腕伸身逆上がり十字倒立」
この技は、アゼルバイジャンのニキータ・シモノフ選手が発表し、F難度で認定されました。
アザリアンに代表される後転系の技はよく使われていますが、十字倒立に収める技は未だ発表されておりませんでした。

図を見てみると、技の始めから終わりまで、足先が輪の高さよりも上、頭の高さが輪の高さよりも下という状態を維持しています。
十字倒立でF難度が取れる技は、バランディン2、カルモナに続いて3つ目となりました。


三つ目は、パンアメリカン選手権で発表されたつり輪の技。
「前方翻転逆上がり(ホンマ)脚上挙支持(2秒)」
この技は、メキシコのセザール・グラシアという選手が発表し、C難度で認定されました。

同じような動きをする技に、ホンマ十字という技があります。
十字懸垂、脚上挙ともに単体で実施した場合はB難度ですが、ホンマの動きと組み合わせると、一方はD難度、一方はC難度というふうに難度に差が生まれます。


四つ目は、同じくパンアメリカン選手権で発表された鉄棒の技。
「バーを越えながら、後方伸身2回宙返り1回半ひねりおり」
この技はジャマイカのカレブ・フォークという選手が発表し、E難度で認定されました。

既存の技にハイデン(バーを越えながら、後方伸身2回宙返り1回ひねりおり)というD難度の技がありますが、それに半分ひねりを加えてアップデートさせた形です。

以上、これらの新技が新たに認定されることになりました。
十字倒立の評価が高まる昨今、「シモノフ」は新しい選択肢の一つとなりうるか。十字倒立の後処理として「ゾウ・ジンユエン」を使う選手が現れるのか。見ものです。

▼内村航平が日本体操協会新理事に

世界選手権、オリンピック通じて個人総合8連覇の偉業を成し遂げた体操界の「キング」内村航平さん。
2022年3月に現役を引退後は日本代表のアドバイザーコーチを務めながら、イベントを開催するなど体操の普及に尽力されています。
このほど、日本体操協会の評議会にて、内村航平さんを新理事として就任させる旨の案が承認されました。
任期は2023年6月から2年間だそうです。

NHKニュース:日本体操協会 新理事に内村航平さんら12人 就任決定


▼4月にジュニア世界選手権が開催

FIGが4月にトルコのアンタルヤで開催される第2回ジュニア世界選手権について記事を投稿しています。
2019年に行われた第1回大会で活躍した選手たちがその後の五輪、世界選手権で活躍しているとして、日本の北園丈琉選手と土井陵輔選手の名前が挙げられています。

FIG:2023年ジュニア世界選手権の競技抽選会をチェック!

第2回大会の日本代表はすでに決まっています。

世界ジュニア日本代表
【男子】
谷田雅治(作新学院高等学校)
角皆友晴(船橋市立船橋高等学校)
神山遥人(仙台大学附属明成高等学校)
【女子】
山口幸空(米田功体操クラブ)
水野壬華(米田功体操クラブ)
中村遥香(なんば体操クラブ-ngc)

第1回大会では、日本男子が団体優勝、岡慎之助が個人総合優勝、土井陵輔が2位、北園丈琉が種目別あん馬・平行棒優勝。

▼スペイン男子が日本で強化合宿

スペイン男子代表団が2月中旬に日本の徳洲会体操クラブと順天堂大学で強化合宿を行うそうです。

スペイン体操協会:徳洲会体操クラブと順天堂大学でのトレーニング

参加する選手は以下の通り。
ジョエル・プラタ
ティエルノ・ディアロ
アドリア・ヴェラ
レイダーリー・サパタ
ネストール・アバド
ニコラウ・ミール
パウ・ヒメネス
ダニエル・カリオン


▼ロシア パリ五輪団体出場の危機

未だ終局の見えないロシアによるウクライナへの侵略行為。その影響で、未だにほぼ全てのスポーツにおいてロシア・ベラルーシの選手の参加が禁止されています。体操も例外ではありません。そんな中、体操競技は来年に迫ったパリ五輪の出場権を懸けた戦いが既に始まっています。

今年2023年の世界選手権では、団体予選の結果において、既に団体出場が決まっている中国・日本・イギリスを除いた上位9チームに入れば、パリ五輪への団体出場権を得ることができます。
しかし、この世界選手権に団体出場するための権利は、各大陸ごとの大会で団体上位に入らなければなりません。ロシア・ベラルーシがパリ五輪の団体出場権を得るためには、世界選手権への団体出場が必要になり、さらには今年4月に行われるヨーロッパ選手権への団体出場が最低限必要になります。

現状、国際大会への出場が認められていないロシア・ベラルーシは、このまま4月のヨーロッパ選手権へも出場することができなければ、自動的にパリ五輪への団体出場権を失う事になります。

タス通信:ロディオネンコ氏「欧州選手権までにロシアのすべての選手がライセンスを更新することを確信している」

この記事では、ロシアの選手が4月のヨーロッパ選手権までに国際ライセンスを更新することを希望する旨の記事。

国際大会に出場している選手たちは、皆国際ライセンスというものを持っていて、それはFIGが認証することで発行されます。この国際ライセンスをを持たない選手は国際試合に出場できません。
国際ライセンスを持つ選手はFIGの公式サイトでも確認できます。

そちらのサイト内でロシアを検索してみると、現在、東京五輪で男子団体金メダルメンバーだったロシアのアブリャジンと、18歳の新星ダニエル・マリノフの国際ライセンスが承認されておらず、名前が載っていません。
さらに、同じく東京五輪で女子団体金メダルメンバーだったアンゲリーナ・メルニコワ、ヴィクトリア・リスツノワ、ヴラジスラワ・ウラゾワはヨーロッパ選手権がある4月までにライセンスを失効してしまうというのが現状です。

そんな中、IOCからとある提案がなされます。

▼IOCがロシア・ベラルーシ選手の条件付きでの参加を検討

IOCがいよいよ本格的にロシア・ベラルーシの国際大会復帰に向けた動きを見せ始めました。

NHKニュース:IOC ロシアとベラルーシ選手の国際大会への復帰を検討

IOCのバッハ会長は、オリンピック憲章を挙げ、「オリンピック憲章ではいかなるアスリートも差別なく扱われる権利を有する。パスポートを理由に競技に参加することが妨げられてはならない」としたうえで、
・国を代表せずに中立の立場とすること
・ウクライナへの侵攻を支持するなど平和に反する行動をとらないこと
・ドーピング規定を順守していること
以上のことを条件としています。

これはあくまで「検討する」としたという記事なので決定事項ではありませんが、これにウクライナ側はもちろん反発。
ゼレンスキー大統領は「がっかりするしかない。このような戦争が起きているときに中立はありえない。ロシアの選手が掲げる中立の旗が血にまみれたものとなるのは明らかだ」と非難声明を出しています。
また、ロシアの選手が出場するならばウクライナはオリンピックだろうがボイコットするとも主張しています。

しかし、このIOCの考えに一定の理解を示した人がいます。
FIGの渡辺守成会長です。

時事通信:ロシア勢「復帰させる方針」 欧州で反対の声も―渡辺FIG会長

渡辺会長は今回の件のみならず、ロシアに対しては割と寛大な処置をしており、国際社会がロシア・ベラルーシを排除し始めた3月、国旗国歌を使用しないことを条件にロシア・ベラルーシ選手の参加を認めています。その大会で起きてしまったのが、表彰式「Z」事件です。
FIGがロシア・ベラルーシの選手参加を禁止している理由は「選手らに危険が及ぶ可能性がある」からなんですね。

オリンピックや総合競技大会には出場ができなくても、世界選手権なんかには、FIGの判断で出場させることはできてしまいます。

さて、NHKのIOCについての記事内で少し触れられていますが、今年9月に中国・杭州にて開催されるアジア大会を運営するOCA=アジアオリンピック評議会が、ロシア・ベラルーシ勢をアジア大会に出場できるように提案をしていたことが明らかになりました。

ロイター:パリ五輪組織委 ロシア参加可否はIOCに決定権

IOCはこの提案に対し「歓迎し、高く評価する」としています。
先ほどロシアの団体出場権について記述しましたが、もしかしたら、ロシアがアジア枠で団体出場権を得る選択肢が僅かに残っているのかもしれません。



はてさてどうなることやら…。


画像出典
内村航平さん、体操協会の理事に 五輪金メダリスト: 日本経済新聞 (nikkei.com)
ロシア勢「復帰させる方針」 欧州で反対の声も―渡辺FIG会長:時事ドットコム (jiji.com)
2019 Artistic Junior Worlds – Golden Japanese – We are Gymnastics ! - YouTube


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