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【体操競技】男子各種目の覚えておいた方がいいこと

前回紹介した「Dスコア」「Eスコア」もそうですが、体操競技にはただ聞いただけではわからない単語というのが様々あります。

ここでは、体操を見る上でこれさえ覚えておけば大丈夫!というような基本的なルールや用語などを残します。
オリンピックで体操を見る上でわからないことはここで確認しておきましょう。

すべての種目に共通する要素

まずは姿勢です。
体操競技の技は、同じ要素でも姿勢を変えることによって難度が変わるものがほとんどです。
体操競技における姿勢には以下の3つがあります。

・抱え込み
・屈身
・伸身

抱え込みはこの姿勢です。

抱え込み

膝と腰を曲げ体を丸く小さくして、膝を抱え込むような姿勢。

屈身はこの姿勢。

屈身

腰は曲げていますが、膝はピンと伸びています。
身を屈めると書いて「屈身」。屈伸運動の屈伸とは全く別物です。
かつてNHKですら間違えたことがあるので要注意です。

伸身はこの姿勢。

伸身

膝も腰も曲がることなく、まるで1本の線のように美しく伸びています。
身を伸ばすと書いて「伸身」です。

この3つの姿勢はあん馬以外の種目すべてに共通することなので覚えておきましょう。
同じ宙返り技をするとしたら、抱え込み⇒屈身⇒伸身 の順に難しくなっていきます。

ゆか

前回も紹介したように、ゆかでは技グループは3つに分けられます。
Ⅰ:アクロバット以外の技
Ⅱ:前方系の技
Ⅲ:後方系の技

そして一番最後に実施する技(グループⅡ,Ⅲの宙返り技のみ)がその技グループと「グループⅣ:終末技」を兼任します。

このように、ゆかの宙返り技は主に前方系と後方系に分けられます。
その見分け方は踏切の瞬間にあります。
進行方向に向いて踏み切ると前方系、進行方向と反対側を向いて踏み切ると後方系になります。着地した時の向きはここでは関係ありません。

前方系

前方


後方系

後方

多くの選手は終末技でD難度の後方系の技を使うことが多いです。
ゆかを得意とする選手にはE難度を終末技にする選手もいます。
まれに前方系でフィニッシュする選手もいます。


あん馬

あん馬が一番何をやっているのかわからんとお思いでしょうが、僕もそんな感じです。でも何の技をやっているのかがわかるようになると、「この演技構成おもしろい!」とか「このさばき方良いなぁ~」と思うようになります。

あん馬の技グループはこの通りです。
Ⅰ:交差技
Ⅱ:旋回技
Ⅲ:旋回移動技
Ⅳ:終末技

交差技というのは、この種目が実際の馬を使って行われていた大昔から存在したもの。両足を馬体の前後に置いて馬体を挟むような動きを基本とします。
これにとび移動やひねり、倒立の要素を組み合わせることで、現在では様々な技があります。

次に、あん馬の旋回には主に3つの種類があります。
・単純な旋回
・開脚旋回
・下向き転向(ロシアン)

単純な旋回というのはよく見る旋回のことですね。
脚を閉じた状態(閉脚)で頭の位置が変わらず、胸から足先までを旋回させる動きです。この単純な旋回は1周するだけでA難度の技として認定されます。まぁその1周するだけっていうのが難しいんですが。

旋回

開脚旋回は先に述べた動きを脚を開いた状態(開脚)で行うこと。
近年では開脚旋回が高く評価される傾向にあるため、すべての技を開脚旋回で構成する選手もいるほどです。
あん馬だけは何をやっているのかマジでわからんな人にとっても開脚旋回をやってくれると華があるのでカッコいいと思いますよね。
こちらも単純な旋回と同様、1周するだけでA難度が取れます。まぁその1周するだけっていうのが難しいんですが。

開脚旋回

続いて下向き転向という動きなのですが、こちらは単純な旋回と違って、体が下を向いたまま回るという技です。こちらは半周(180°)、1周(360°)、2周(720°)、3周(1080°)と、回る回数が多いほど難度は上がっていきます。
この動きを終末技に使う選手もいます。ロシアンとも呼ばれます。
この下向き転向は単純な旋回とは違い、半周するだけでA難度がもらえます。まぁその半周するだけっていうのが難しいんですが。

ロシアン

かくいう私もかつては競技経験者。競技を始めてからあん馬の旋回を1周回せるようになるまで1年かかりました。

あん馬には倒立技もあります。
旋回から腰を上げて馬体の上に倒立、ひねりながら移動して倒立から腰をおろして旋回に繋げる【ブスナリ】という技が高難度技としてスペシャリストに人気です。
この動きは倒立から着地に収めることで終末技に多く使われますが、上記のように倒立から旋回に繋げることで中技としても使われるようになりました。

さらにあん馬には専門用語が多いのでいくつかピックアップします。

あん馬の名称

・馬体⇒あん馬の茶色の部分(①③⑤)
・把手(ポメル)⇒2つ突き出た取っ手のような部分(②④)
・馬端⇒馬体のうち、両ポメルの外側の部分(①⑤)
・あん部⇒馬体のうち、両ポメルの間の中央部分(③)

つり輪

つり輪のグループはこの通り。
Ⅰ:振動技、振動倒立技
Ⅱ:力技
Ⅲ:振動を伴う力技
Ⅳ:終末技

つり輪の肝となるのが力技です。
難度を稼ぐにはより高難度の力技を取得しなければなりません。
その力技の種類は以下の通りです。(難度順)
・背面水平懸垂(A)
・正面水平懸垂(A)
・十字懸垂(B)
・開脚上水平(B)
・脚上挙(B)
・脚上挙十字懸垂(C)
・上水平支持(C)
・十字倒立(C)
・中水平(D)
・上向き中水平(E)

()内は単体で実施した場合の難度です。
これらの技を様々な動きと組み合わせることによって単体で得られる難度よりも高い難度を得ることができます。
この中で特に多く実施されるのが・・・

・十字懸垂(B)

十字懸垂

・開脚上水平支持(B)

開脚上水平

・上水平支持(C)

上水平

・中水平支持(D)

中水平


この4つほど多くはないですが、
・十字倒立(C)もそこそこ実施されます。

十字倒立


十字倒立は減点されやすいので、今では本当に自信があるスペシャリストしか実施しなくなりました。

これらの力技の形さえ覚えておけば、つり輪はバッチリです。

中水平は単体でもD難度と高難度なので人気ではありますが、これを減点無しに実施できる選手は数少ないと思います。
個人総合を戦う選手はつり輪が苦手な選手が多いので中水平の姿勢も曖昧な実施が多くなります。

跳馬

跳馬は1回の跳躍ですべてが決まります。
跳躍技一つひとつに対してDスコアが決まっていて、技グループはありますが、グループ点のようなものはありません。
跳馬の技グループも4つあります。
Ⅰ:前転とび
Ⅱ:側転とび
Ⅲ:ユルチェンコとび
Ⅳ:ロンダートひねり前転とび、シェルボとび

とび方によって分けられているのでわかりやすいですね。
それぞれどんな跳び方か見てみましょう。

Ⅰ:前転とび
前向きに踏み切ってハンドスプリングの要領でテーブルに着手

前転とび

Ⅱ:側転とび
前向きに踏み切って側転のように1/4ひねって横向きに着手

側転とび

Ⅲ:ユルチェンコとび
ロンダートから後ろ向きに踏み切ってバック転のように後ろ向きに着手

ユルチェンコとび

Ⅳ:ロンダートひねり前転とび
ロンダートから後ろ向きに踏み切った後、体を半分ひねってⅠ:前転とびと同じように着手

ロンダートひねり前転とび

Ⅳ:シェルボとび
ロンダートから後ろ向きに踏み切った後に3/4ひねってⅡ:側転とびのように着手、または1回ひねってⅢ:ユルチェンコとびのように後ろ向きに着手

シェルボとび

グループ点が無いのにグループが分けられているのは、種目別で競うスペシャリストたちにとって重要となります。

団体や個人総合と違って、種目別跳馬は2本の跳躍によって決まります。
その2本の跳躍をそろえる上で、2本の技をそれぞれ別のグループから選定しなければなりません。グループⅠの技を2つ跳んだり、グループⅡの技を2つ跳ぶことはできないのです。
これが跳馬に着手するまでのルール。

これに加えて、2本の跳躍をそろえる上で、着手した後の要素が全く同じではいけないというルールもあります。
着手した後の宙返りの回数、ひねりの向き、ひねりの回数が全く同じになってはいけないのです。
1本目にグループⅠの「前転とび前方伸身宙返り2回ひねり」、2本目にグループⅡの「側転とび1/4ひねり前方伸身宙返り2回ひねり【ドリッグス】」
この2つの技は宙返りの回数、ひねりの向き、ひねりの回数が全く同じになってしまいます。この2本の跳躍をそろえることはできないということです。
(※正しくは2本そろえることはできるがペナルティが科せられる)
これが、どちらかのひねり回数を変えれば2本そろえることができます。

体操のルールは年々めんどくさくなります。
それは競技を公平・公正にするためでもあります。


平行棒

平行棒のグループはこの通り。
Ⅰ:2本のバーでの支持または振動系の技、
Ⅱ:腕支持から始まる技
Ⅲ:1本または2本のバーでの長懸垂技、棒下系の技
Ⅳ:終末技

平行棒は、6種目の中で唯一、すべてのグループにE難度以上の技がある種目です。
なので10の技すべてをE難度で構成することが可能です。
可能というだけで実際にやってる選手は見たことはありません。

平行棒の技は字面で見るとわかりにくいですが、映像で見るとこういうことか!となるので、たくさん見てみてください。するとみんなが使ってる技というのがよくわかります。
後々色んな選手の映像を紹介するのでゆっくり覚えていきましょう。

鉄棒

以前の記事でも書いていますが、鉄棒の技グループはこの通り。
Ⅰ:ひねりを伴う、または伴わない車輪技
Ⅱ:手離し技
Ⅲ:バーに近い技
Ⅳ:終末技

グループⅡ:手離し技の基本形だけ覚えておけば鉄棒は大丈夫です。
グループⅠ,Ⅲは興味があったら覚えてみるくらいで良いと思います。

では手離し技にはどんな種類があるのか、基本となる技を覚えましょう。

・トカチェフ(C)
・コバチ(D)
・マルケロフ(C)
・イェーガー(C)
・ギンガー(C)
・ゲイロード(D)

このうちよく見られるものが
・トカチェフ(C)
・コバチ(D)
・マルケロフ(C)  の3つです。

トカチェフは「懸垂前振り開脚背面飛び越し懸垂」という技です。

トカチェフ

これを基本として、脚を閉じたり伸身でやったり、シュタルダーという技と組み合わせたり、ひねりを加えることで難度が上がっていきます。
トカチェフ系の最高難度はG難度の「スアレス」という技です。

コバチ系は鉄棒が得意な選手が多く実施する華やかな技です。
内村選手が実施している「ブレットシュナイダー」もこの一族です。
コバチは「バーを越えながら後方抱え込み2回宙返り懸垂」という技。

コバチ

これを屈身にしたり伸身にしたり、ひねりを加えることで難度が上がっていきます。
コバチ系の最高難度はI難度の「ミヤチ」という技です。

マルケロフとは「後ろ振り上がり開脚とび越し1/2ひねり懸垂」という技です。
マルケロフはあまり耳にすることはないと思いますが、これを閉脚伸身姿勢で実施する「ヤマワキ(伸身コスミック)」という技はよく実施されています。
ヤマワキ(伸身コスミック)は「後ろ振り上がり伸身閉脚とび越し1/2ひねり懸垂」というD難度の技です。
鉄棒に専念した内村選手も実施しています。

ヤマワキ


さて、2回に渡って体操の、そして男子の各種目の基本情報をお送りしました。
noteでは言いたいことは1つの記事にまとめた方が良いという公式のアドバイスをガン無視しております。
各種目これだけは覚えてほしいという情報をまとめていますが、
あん馬に関してはこれだけで理解できなくても全然問題ありません。
あん馬だけは説明して理解できるものだと思ってないのでね。

次回からは東京オリンピックに出場が決まっている各国の選手の演技を紹介しつつ、細かいルールも説明できればと思っております。
みんなで東京オリンピックを楽しみましょうね。


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