見出し画像

ベルギー男子の鉄棒

オリンピックに出場できなかった選手の中にも、独特の演技をするものや、美しい演技をする選手がいます。
見た目にはカッコいい演技をしても点数にはその感動が結びつかないことも採点競技の難しさです。

今回はオリンピック出場が叶わなかったベルギー男子の3選手の鉄棒を紹介します。
東京オリンピックでのベルギー勢といえば、女子のニナ・デルウェル選手が段違い平行棒で金メダルを獲るなど活躍しました。
ニナ選手が頭一つ抜けた強さを持ち、団体として出場を叶えています。
一方の男子は東京オリンピックへ選手を出場させることはできませんでした。


マキシム・ゲンゲス

1人目は、マキシム・ゲンゲス選手。
あん馬と鉄棒が得意で、ワールドカップではよく見る選手です。
4月のヨーロッパ選手権に出場し、予選でそれはそれは綺麗な演技を披露しています。

画像1

冒頭にコバチ系の手離し技を2つ、➀コールマンも②コバチもバーを掴む位置が完璧な距離で、後処理の車輪でも肘が曲がらない素晴らしい実施を見せます。
直後にやっているのは③ピアッティという技。多くの場合はシュタルダーからトカチェフの動きに繋げる選手が多いですが、ゲンゲスは閉脚での足裏支持「フット」と呼ばれる動きからトカチェフに繋げる珍しいさばきを実施します。閉脚の「フット」は女子の段違い平行棒ではよく見られる技です。
その後はひねり技が続きます。
⑨アドラーひねり倒立では倒立からかなり逸脱してしまいます。
⑩伸身ムーンサルトは着地をピタリと止めました。
この大会は鉄棒のEスコアが厳しく取られていましたが、8点台に乗せる健闘を見せます。
Dスコアが高くないので13点台にとどまりますが、僕の心に刺さる素晴らしい演技でした。


ルカ・ヴァン・デン・ケイブス

平行棒と鉄棒が得意なオールラウンダー。2014年のユースオリンピックにベルギー代表で出場し、種目別鉄棒で銀メダルを獲得しています。
ルカの鉄棒の特徴はひねり技が豊富なところです。
こちらは2021年4月のヨーロッパ選手権の予選の演技。
動画は本人のものらしいチャンネルから。

画像3

②エンドー1回ひねりに始まり、今では珍しくなった③シュタルダーリバルコ、そして⑤リバルコでDスコアを稼ぎます。
ひねり技に対する減点が厳しくなってる昨今において、ひねり技でDスコアを稼ぐ選手は貴重です。
鉄棒という種目はDスコアを稼ぐのが難しく、Dスコアを上げるには手離し技を鍛えなければなりません。
手離し技以外のグループⅠとグループⅢ、いわゆる「ひねり技」はE難度が最高難度になります。
しかも、グループⅠにはE難度の技はなく、グループⅢにもE難度の技は3つしかありません。
そのうちよく使われるのが「アドラー1回ひねり両逆手倒立」という技です。
しかし、ルカは③シュタルダーリバルコを入れてDスコアを稼ぎます。
アドラー系の技もやっているので、今後発展させてE難度を2つやってくるかもしれません。
将来的にも楽しみな選手です。




ノア・クアビタ

最後はノア・クアビタ。両親がアフリカ南部のアンゴラという国の出身で、ベルギーに移り住んで彼が誕生したそうです。
彼の鉄棒はとにかくパワフル!
前述の2人は、手離し技・ひねり技と続きました。
今回は終末技に注目です。

画像3

終末技にはなんとG難度の屈身3回宙返り⑩ファルダンを実施しました!
2017年からのルール改正によって全種目通じて3回宙返りが格上げされた事がありました。鉄棒の屈身3回宙返りは改正前はE難度だったものがG難度に格上げされたのです。
クアビタはこの技を取り入れるようになってワールドカップの種目別鉄棒で活躍するようになりました。
手離し技はコールマンに加えて、動画ではやっていませんが、トカチェフ系の連続技も持っています。
じきにDスコアは6点台に乗せてくると思うので、こちらも今後の成長に期待が持てます。


今回はベルギー男子の鉄棒という、めちゃくちゃ狭いところに焦点を当ててみましたが、このようにオリンピックには出場できなかった選手にも、魅力的な選手はたくさんいます。
オリンピックで体操に興味を持ってくれた人が、巡り巡ってこういう選手たちをおもしろがれるようになったら嬉しいですね。
体操っておもしろいですね。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?