【内部監査Tips】効果的な内部監査とは? 個別監査の独立性と監査対象部門からの協力のバランスを考える
はじめに
私たちは、往々にして物事を二項対立で捉えがちです。たとえば、「独立性」か「協力」か、といった選択を迫られることがあります。しかし、どちらか一方に偏ると、核心に迫れない可能性があります。
特に、内部監査においては、独立性と監査対象部門からの協力のバランスが重要であり、その両立こそが効果的な監査を実現するための鍵となります。
1.内部監査の独立性には二つの側面がある
内部監査の「独立性」には、二つの異なる側面があります。一つは個別の監査業務を行う際の独立性で、もう一つは内部監査部門としての独立性です。
個別監査における独立性は、監査担当者が特定の監査業務を行う際に、公平で客観的な立場を維持することを指します。これにより、監査結果の信頼性が確保されます。
一方、内部監査部門としての独立性は、監査部門が組織全体の中で独立した立場を保つことを意味します。これにより、内部監査部門は組織のどの部門に対しても公正な視点で監査を行うことができます。
両方の独立性が適切に確保されることで、内部監査は組織のガバナンス強化と健全な運営に貢献することができます。
2.監査対象部門との協力が必要な理由
一方、監査の品質は、監査対象部門との連携にも大きく依存します。
個別監査が独立した視点で行われることは重要ですが、監査対象部門が必要な情報を提供し、適切に協力しない限り、監査の結果も不完全なものとなりかねません。
監査対象部門が非協力的である場合、監査の正確性や実効性は低下し、現場の実態に即した改善提案が難しくなります。
監査対象部門の協力が重要である理由は、現場の実態を正確に把握し、具体的かつ実行可能な改善提案を提供するためです。
単に監査報告書で問題点を指摘するだけではなく、監査対象部門の協力を得て、業務プロセスやリスクの深い理解に基づいた的確な改善提案を行うことで、監査は組織全体の成長やリスク軽減に大きく貢献するものとなります。
3.独立性と監査対象部門との協力のバランスがもたらす効果
ここで重要なのは、独立性と監査対象部門との協力のバランスです。
独立性を守りすぎるあまり、監査対象部門からの協力が欠けてしまうと、現実から乖離した監査結果が生まれるリスクがあります。一方で、監査対象部門に過度に依存してしまうと、監査の客観性が失われ、監査部門の信頼性が低下する恐れがあります。
たとえば、ある組織では、内部監査部門が監査対象部門の意見を取り入れることで、現場で抱える課題をより深く理解し、結果として監査報告書の具体性と実効性が増したといった事例があります。
こうした取り組みによって、監査対象部門は、監査を「評価」や「チェック」として捉えるのではなく、実際に業務改善に役立つパートナーとしての意識が高め、監査の提案を積極的に受け入れることになるのです。
このような成功事例は、独立性と監査対象部門からの協力が適切にバランスされた場合にもたらされる結果です。監査部門は独立しているがゆえに公正な視点を提供でき、監査対象部門からの協力があることで、現実に即した改善が可能となるのです。
まとめ:効果的な内部監査に向けて
効果的な内部監査を実現するためには、独立性と監査対象部門からの協力の両方が必要不可欠です。
監査担当者が公正な判断を下すための個別監査における独立性、そして内部監査部門全体が組織から独立して機能する組織的な独立性は、監査の信頼性を確保するための基盤です。しかし、それだけでは不十分です。
監査対象部門からの適切な協力体制を築き、透明なコミュニケーションを行うことで、監査が実行可能な改善提案を提供できるようになります。
監査の質を高めるためには、独立性と協力のバランスを意識し、双方向のフィードバックを大切にすることが、組織の成長とリスク管理を強化するための鍵となるでしょう。
このバランスを実現するためには、監査部門は独立性を維持しつつも、監査対象部門からの協力を強化し、定期的なフィードバックを活用して、監査結果が実行に移されるような具体的なプロセスを導入することが求められます。
独立性と監査対象部門からの協力を効果的に活用することで、内部監査は単なる「チェック機能」から、「成長を促進する戦略的パートナー」へと進化するのです。