【内部監査Tips】目的地から逆算する、アクションを促す内部監査報告書の作成法
はじめに:内部監査報告書は、単なるゴールではなく変革の起点
個別監査のプロジェクトにおいて、内部監査人が目指す目的地はどこでしょうか?
多くの場合、監査の終了や報告書の提出をゴールと捉えがちです。しかし、それは単なる通過点に過ぎません。
内部監査報告書の真の目的は、経営者や監査対象部門に「気づき」を与え、組織の持続的な成長と改善(アクション)を促すことにあります。
効果的な内部監査報告書を作成するためには、この目的地を明確に定め、現在地を正確に捉える必要があります。つまり、組織の「今」と「あるべき姿」のギャップを明らかにし、そのギャップを埋めるための道筋を示すことが求められるのです。
内部監査人の成果物である報告書は、単なる指摘事項のリストではありません。それは、組織の未来を描く設計図であり、変革への起爆剤となるべきものです。効果的な報告書とは、報告書の対応責任者である経営者や監査対象部門が、問題の本質を理解し、的確な対応策を講じることができる内容でなければなりません。
では、どのようにしてこのような価値ある報告書を作成すればよいのでしょうか?
本稿では、効果的な報告書を構成する4つの重要な柱を紹介します。これらの要素を適切に組み込むことで、単なる問題の指摘を超えて、組織に真の変革をもたらす報告書の作成法を解説します。
1. 内部監査報告書の4つの柱
効果的な内部監査報告書は、以下の4つの要素から構成されます:
1.1 ロジカル・ライティング:明解で理解しやすい表現
(例)
構造化された文書(MECE:重複なく、漏れなく)
簡潔で明解な文章(SMART:具体的、測定可能、達成可能、関連している、期限付き)
データや図表の効果的な活用
1.2 問題発見力、根本原因分析力、問題解決力:有効な改善提案
(例)
リスクや課題の特定
根本原因分析(5 whys 分析などの手法を活用)
実行可能で効果的な改善提案の提示
1.3 納得感と影響力:アクションを促す報告
(例)
リスクと影響の明確化
優先順位付け
実行可能性の検討
ステークホルダーの視点を考慮
1.4 価値創造とイノベーション、社会的責任:組織の持続的な成長と改善に貢献する洞察
(例)
ベストプラクティスの共有
戦略的な視点
組織横断的な視点
イノベーションの促進
社会的責任の視点
2. 監査種別ごとの考慮点
監査の種類に応じて、以下のポイントを追加的に考慮します:
2.1 財務監査
(例)
財務諸表の適正性
会計基準への準拠性
内部統制の有効性
2.2 業務監査
(例)
効率性と有効性
プロセス最適化の提言
パフォーマンス指標(KPI)
2.3 IT監査
(例)
システムの信頼性と可用性
データの整合性とセキュリティ
IT ガバナンスの有効性
サイバーセキュリティリスクへの対応
さいごに:組織の持続的な成長と改善を促す内部監査報告書
効果的な内部監査報告書は、単なる問題点の指摘にとどまらず、組織の持続的な成長と改善を促す強力なツールとなります。4つの柱(ロジカル・ライティング、問題発見・解決力、納得感と影響力、価値創造とイノベーション、社会的責任)を基礎とし、監査種別に応じた特有の要素を適切に組み込むことで、真に価値ある報告書を作成することができます。
内部監査人は、この報告書を通じて:
組織のリスク管理を強化し
業務プロセスを最適化し
コンプライアンスを確保し
イノベーションを促進し
戦略的な意思決定をサポートする、
といった重要な役割を果たすことができます。
常に組織の目標と戦略を念頭に置き、経営者や監査対象部門に適切な行動を促す報告書を目指すことが大切です。そうすることで、内部監査部門は組織の中で真の「信頼されるアドバイザー」としての地位を確立し、組織の持続的な成長と改善に貢献することができるのです。
内部監査報告書の作成プロセスでは、継続的な自己改善が求められます。本稿のコンテンツを参考に、自社の内部監査報告書を振り返り、改善を重ねていくことで、より効果的で影響力のある報告書を作成することができるでしょう。
組織の持続的な成長と改善を促し、経営者や監査対象部門の適切な対応を導く内部監査報告書の作成に、本稿の内容が少しでもお役に立てば幸いです。
【おまけ】自己評価チェックリスト
[ ] 4つの柱が適切にバランスよく含まれているか
[ ] 監査種別に応じた特有の要素が考慮されているか
[ ] 報告書が組織のアクションを促す内容になっているか
[ ] 価値創造とイノベーション、社会的責任の視点が含まれているか
[ ] 経営者の視点から見て、有用な情報が提供されているか
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