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3/3監査手続の事前承認:内部監査部門長と合意すべき具体的内容とは(第3回)

※3回シリーズでお届けしています。第3回は「3. 監査手続の詳細度を検討する際の視点」~最後までです。第1回と第2回も合わせてご覧ください。


はじめに:監査手続の詳細化と事前承認の重要性

監査手続の事前承認:内部監査部門長と合意すべき具体的内容とは(第1回)|TAIZO (note.com)

1. 監査手続の事前承認の意義

2. 監査手続作成の4つのステップ(内部監査部門長と合意すべき具体的内容)(事例:労働時間管理)

監査手続の事前承認:内部監査部門長と合意すべき具体的内容とは(第2回)|TAIZO (note.com)


3. 監査手続の詳細度を検討する際の視点

監査手続の適切な詳細度を検討する際は、以下の要因(例)を考慮することがポイントです:

1)監査目的と範囲

  • 監査の具体的な目的と期待される成果

  • 監査対象となる業務プロセスや部門の範囲

2)リスク水準

  • 監査対象領域に関連する固有リスクの程度

  • リスクが顕在化した場合の影響度

3)監査対象業務の重要性と複雑性

  • 組織全体における当該業務の重要性

  • 業務プロセスの複雑さや関連部門の多さ

4)コントロールの有効性(成熟度)

  • 既存のコントロールの整備と運用状況

  • 過去の評価結果に基づくコントロールの成熟度

5)法規制・ルール

  • 適用される法令や規制の要求事項

  • 業界特有の規則やガイドライン

6)過去の不備事項やオフサイトモニタリングの結果

  • 前回監査での発見事項や未解決の問題点

  • 日常的なモニタリングで把握された課題

7)組織変更や新規プロセスの導入

  • 直近の組織再編や業務変更の有無

  • 最新システムや新プロセスの導入状況

8)経営者の関心事項と期待値

  • 経営層が特に注目している領域

  • 監査に対する経営層の期待値

9)割り当て可能な監査リソース
(※ただし、高リスク水準の場合は優先的にリソースを配分する必要があります。)

  • 時間と人員リソース(外部リソースを含む)

  • 予算やツール(有料のデータ分析ツール等)


4. 効果的な事前承認プロセスの構築

効果的な事前承認プロセスを構築するには、以下の点に注意が必要です:

1)十分な準備時間の確保

  • 監査チームに適切な計画時間を確保する

  • 内部監査部門長のレビューに必要な時間を考慮する

2)段階的なレビューと承認

  • 初期の概要レベルでの承認

  • 詳細な監査手続の最終承認

3)明確な承認基準の設定

  • 承認に必要な要件や水準を事前に定義

  • チェックリストの活用

4)オープンなコミュニケーション

  • 監査チームと内部監査部門長との間の定期的な対話

  • 懸念事項や課題の適時な共有

5)柔軟性の維持

  • 状況変化に応じた監査手続の調整を許容

  • 調整時の再承認プロセスの明確化

6)テクノロジーの活用

  • 承認ワークフローの電子化

  • 文書管理システムの利用

7)継続的な改善

  • 承認プロセスの定期的な評価

  • ベストプラクティスの共有と適用

8)文書化の徹底

  • 承認プロセスの各段階を記録

  • 変更履歴の管理

これらの要素を考慮し、組織の特性に合わせてカスタマイズすることで、より効果的な事前承認プロセスを構築できます。


さいごに:内部監査の品質向上への道筋

適切な詳細度での監査手続の作成と、内部監査部門長との効果的な事前合意は、監査の品質を大きく左右します。

本稿で紹介した具体的な内容と監査手続の詳細度を検討する視点、後段のチェックリストを参考に、組織に適した事前承認プロセスを構築することで、より効果的かつ効率的な内部監査の実施が可能となります。


【おまけ】監査手続の事前承認チェックリスト

以下のチェックリスト(例)を活用することで、監査手続の事前承認プロセスをより効果的に進めることができます。

1. 年度監査計画や個別リスク評価との整合性と範囲
[ ] 年度監査計画および個別リスク評価と整合しているか
[ ] 監査対象範囲は適切か、重要リスクをカバーしているか
[ ] 監査のタイミングは適切か(業務サイクル、期末決算等を考慮)

2. 監査目標と監査要点
[ ] 監査目標が明確に定義され、ステークホルダーの期待に応えているか
[ ] 監査目標を達成するための監査要点が明確になっているか

3. リスク評価と重点領域
[ ] 重要リスクに焦点を当てた計画になっているか
[ ] 不正リスクや過去の不備等が適切に考慮されているか
[ ] 新たに識別されたリスクや変化したリスクが考慮されているか

4. 監査手続の具体性と適切性
[ ] 監査要点を十分に検証できる具体的な監査手続になっているか
[ ] 採用する監査手法とその適用対象が明確か

5. リソース管理
[ ] 監査の実施に必要な人員、専門性、時間が適切に配分されているか
[ ] 監査実施内容のレビュー工数が考慮されているか

6. 品質管理とコミュニケーション
[ ] 品質管理レビューのプロセスが計画されているか
[ ] 重要な発見事項の報告プロセスが確立されているか
[ ] 監査対象部門との事前のコミュニケーション計画が含まれているか

7. 独立性と手続実施の柔軟性
[ ] 監査チームの独立性と客観性が確保されているか
[ ] 監査実施期間中の予期せぬ状況変化への柔軟な対応が可能か
[ ] 監査範囲や手続の変更が必要な場合の承認プロセスが明確になっているか

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