2/3監査手続の事前承認:内部監査部門長と合意すべき具体的内容とは(第2回)
※3回シリーズでお届けしています。第2回は「1.監査手続の事前承認の意義」と「2.監査手続作成の4つのステップ」のみです。第1回からご覧ください。
はじめに:監査手続の詳細化と事前承認の重要性
監査手続の事前承認:内部監査部門長と合意すべき具体的内容とは(第1回)|TAIZO (note.com)
1. 監査手続の事前承認の意義
監査手続の事前承認は、単なる形式的なプロセスではありません。これは、部門内での合意形成を図り、効果的かつ効率的な監査の実施を確保するための重要なステップです。
事前承認には以下のようなメリットがあります:
1) 年度のリスクベース監査計画との整合性の確保
2) 経営層からの期待との整合性の確保
3) 監査目的と範囲を明確にした上で合意
4) リスクアプローチの適切性の確保
5) 潜在的な問題や制約の早期特定と対応
6) リソースの効果的かつ効率的な配分
7) 監査の独立性と客観性の確保
8) 監査品質の維持・向上(監査手続の一貫性と標準化の促進)
9) 監査チーム内の共通理解の形成
2. 監査手続作成の4つのステップ(内部監査部門長と合意すべき具体的内容)(事例:労働時間管理)
効果的な監査手続を作成するには、以下の4つのステップを踏むことが重要です。
これらのステップは、内部監査部門長との事前承認プロセスにおいても重要な要素となります。
【内部監査部門長と合意すべき具体的内容】
重要リスク、監査目標
重要リスクに対応する監査要点
監査手法
監査手続
2.1 重要リスクの把握と監査目標の設定
• 監査対象業務の重要リスクを特定し、評価する
• 特定されたリスクに基づいて監査目標を設定する
2.2 重要リスクに対応する監査要点の選定
• 特定された重要リスクに対応する監査要点を選定する
• 監査要点の優先順位付けを行う
2.3 監査手法の選定
• 各監査要点を検証するための適切な監査手法を選択する
• 複数の手法を組み合わせて効果的な検証計画を立てる
2.4 具体的な監査手続の作成
• 選定した監査手法に基づいて具体的な監査手続を作成する
• 監査手続の実行可能性と有効性を検討する
それでは、労働時間管理の監査を事例として、上記の4つのステップを具体的に見ていきましょう。
【労働時間管理】
2.1 重要リスクの把握と監査目標の設定
● 重要リスク(例):
1. 労働基準法違反リスク(長時間労働、未払い残業)
2. データ改ざんリスク
3. 従業員の健康悪化リスク
● 監査目標:労働時間管理が法令に準拠し、適切に運用されていることを確認する
2.2 重要リスクに対応する監査要点の選定
● 監査要点(例):
1. 正確性:労働時間の記録が正確に行われているか
2. 網羅性:全従業員の労働時間が漏れなく記録されているか
3. 適時性:労働時間の管理が適時に行われているか
4. 準拠性:労働時間に関する規程が法令に準拠しているか
2.3 監査手法の選定
● 監査手法(例):
• データ分析:勤怠システムのデータを分析
• 質問・インタビュー:人事部門担当者や従業員へのヒアリング
• 文書レビュー:労働時間に関する規程や報告書の確認
• 観察:勤怠管理の実務プロセスの観察
2.4 具体的な監査手続の作成
● 監査手続(例):
「人事部門担当者や従業員へのヒアリングを行いつつ、以下の手続を実施する」
• 正確性:
1. 勤怠システムのデータと入退室記録を突合する
2. サンプリングした従業員の労働時間を再計算する
• 網羅性:
1. 人事マスターデータと勤怠システムの従業員リストを照合する
2. 非正規雇用者や派遣社員の勤怠管理方法を確認する
• 適時性:
1. 勤怠システムのログを確認し、データの更新頻度を確認する
2. 労働時間の集計・報告プロセスを観察する
• 準拠性:
1. 労働時間に関する社内規程を労働基準法と照合する
2. 法改正への対応状況を確認する
3. 監査手続の詳細度を検討する際の視点
4. 効果的な事前承認プロセスの構築
さいごに:内部監査の品質向上への道筋
【おまけ】監査手続の事前承認チェックリスト
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