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【時事抄】 イギリス政権交代、沈み続けた保守党は終着駅へ

東京都知事選挙が現職圧勝に終わりましたが、欧州では国家レベルの選挙が相次ぎました。まずは4日に投開票されたイギリス下院(定数650)の総選挙を見ていきます。労働党が411議席の単独過半数を獲得し、14年ぶりの政権交代を果たしました。「労働党の勝利」よりも「保守党の敗北」の感が色濃い選挙結果といえ、日本の国政にも大きな示唆を与えるものに思えます。

政権交代を報じた日本経済新聞の記事を見てみます。

<要約>
英国で4日に総選挙が行われ、労働党が6割を超える議席を獲得した。14年ぶりに保守党から政権を奪い、労働党スターマー党首が5日に新首相に就任し、閣僚を任命して新内閣が発足する。

スターマー氏は5日、バッキンガム宮殿でチャールズ国王と面会し、その後に首相官邸で演説した。2020年のEU離脱で悪化したEUとの関係を修復し、医療従事者不足による診察待ち時間の改善を含めた公的医療の立て直しにも着手するという。

一方の保守党は過去190年で最も低い議席数に終わった。保守党スナク氏は首相を辞任し、保守党党首からも退く。「(選挙結果に)学び、反省する点は多く、私が敗北の責任を負う」と述べた。

英BBCによると、議会下院の定数650議席のうち、労働党は412議席を獲得、改選前の206議席から倍増した。ブレア政権発足時の1997年の総選挙に迫る大勝だった。スターマー氏のもと党改革を進めた労働党は、急進左派路線を転換し、「親ビジネス」を打ち出した。中道左派政党への回帰が保守党政治に失望した有権者の受け皿になったと見られる。

保守党は改選前345議席が121議席に落ち込んだ。1834年の結党以来最も少ない議席数で、首相経験者のトラス氏、現職シャップス国防相が落選した。中道の自由民主党が改選前の5倍近い71議席を獲得して第3党に躍進した。

保守党の敗因の一つはインフレで保守党政権下の失政が助長した。EU離脱により輸入コストが増大し、東欧の出稼ぎ労働者の減少が人手不足を招いた。コロナ対策の行動制限期間中、ジョンソン元首相がパーティーに参加するなど不祥事も重なり失望を招いた。22年のトラス政権では、財源の裏付けがないまま大規模減税を表明。金利上昇を招いて多くの人が影響を受けた。

IMFの試算では英国の23年GDPは0.1%、24年も0.5%にとどまる見通しで主要7カ国でドイツに次ぐ低さだ。政権の混乱と増税を嫌い、英国を離脱する富裕層は24年に1万人近くになるとの推計もある。海外からの投資も減少する。ビジネス環境を改善し、経済を活性化できるかが課題だ。

(原文1585文字→881文字)


2016年に国民投票を断行してブレグジット(イギリスのEU離脱)を決めてから、大方の予想通りにイギリスは混迷を続けました。まず17年、テリーザ・メイ首相(当時)の下での総選挙で保守党は単独過半数を失います。

EU離脱を強力に推したボリス・ジョンソン氏が19年7月に首相に就任し、ブレグジット達成を旗印に掲げて保守党は選挙に圧勝、息を吹き返したかに見えました。しかし直後にコロナ感染が広がり、ジョンソン首相(当時)の不祥事が相次いで露見、22年7月に辞任を発表します。

後を継いだトラス女史の稚拙な政権運営(史上最短の在任期間45日)、スナク前首相の尽力も虚しく保守党は衰退を続け、「保守党の自滅」といえる結末を迎えたのでした。裏返せば、大勝を収めた労働党といえども前途多難であり、イギリス復活の兆しはまだ見えていません。

不祥事が続く我が国の政権与党も他人事ではないでしょう。対立野党の戦略ミス(共産党と共闘とか)に救われているだけで、現実路線を取る中道勢力というマトモな受け皿があれば、さらりと乗り換えられてしまう危うい状況にあります。

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