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【時事抄】 移民問題は先進各国の悩み、日本政府の一手

先頃の欧州議会選挙では移民排斥を訴える極右勢力が躍進し、米大統領選挙も自国民優先がトランプ氏支持者の中心的な関心事です。移民・難民の拡大によって社会秩序が不安定になる欧米の実例は、人口減少に悩む日本の針路を考える上で、対岸の火事とは言えない大きな課題です。

とはいえ多様性を欠いた組織や社会には、誤った判断を促す場合も多い。一定数の外国人が隣人となる社会に違和感はありません。日本を慕って暮らし続ける良識ある外国人をも含めた排斥運動に広がる前に、法律に問題点があれば速やかに適切な方向に修正していくことは正しい。

2023年に成立した改正入管法が施行されたという、日本経済新聞の記事を見てみます。

【要約】
改正出入国管理法が10日に施行され、難民認定の申請中でも強制送還できるようになった。在留資格を失った外国人が難民申請を繰り返し、送還を逃れを図る「送還忌避者」に対応したもの。法務省によると、国外退去確定後も出国を拒む「送還忌避者」が22年末時点で4233人に達し、21年末の3224人のうち約半数が難民認定の申請者だった。

2010年に難民認定申請者を対象に、申請から半年後に就労を認めた。この運用により就労目的と見られる申請件数が急増し、17年の難民申請は約2万件に上った。そこで18年に難民に該当しないと明らかな場合は、在留資格を制限する運用に改めた。

今回の改正で、3回目以降の難民申請者は、紛争発生など本国に情勢の変化があったなどの「相当の理由」がなければ強制送還の手続きが始まる。また、管理人の監視下で生活しながら強制送還の手続きを進める措置も導入された。入管施設への収容の代替措置だ。

1981年に難民条約に加盟した日本だが、難民の受け入れが少ないと指摘される。23年は8184人分の申請のうち、難民認定者は289人、3.5%に留まる。不認定後の再請求で難民認定されたのは14件だった。認定基準が厳しいためだ。今回の改正でこれが助長される可能性もある。

政府は改正法について「保護すべき者を確実に保護し、ルールに違反した者は厳正に対処する。日本人と外国人が尊重しあうバランスのとれた共生社会の基盤をつくるという考え方によって成り立っている」と説明した。

(原文1450文字→636文字)


もともと2021年に法改正される法律でした。しかし、名古屋出入国在留管理局に収容中のスリランカ人女性が適切な医療行為を受けられず死亡した事件を受けて、一旦改正案の審議を取り下げたという経緯がありました。

来日外国人は「技能実習」「留学」など約30種類の在留資格のどれかが付与されます。その資格ごとに在留期間や就労可否が定められ、不法就労目的等でルール違反した者は国外退去を命ぜられ、送還まで収容されます。しかし、違反者が帰国を拒み、収容が長期化するケースも多いようです。

日本経済新聞 2024年5月17日の記事より

難民受け入れが過度に厳しいと批判される日本政府の対応ですが、少しづつでも手をつけてく大きな課題です。「あの人は、日本人以上に日本人っぽい」という外国人は、意外に日本社会に溶け込んでいるという例を私自身も目にしてきました。外国人だからと十把一絡げに排斥するのではなく、法律を守り、日本社会の文化風習に馴染もうと努力する外国人を守るために、ルールの抜け穴に対処する法改正は速やかに進めていくべき。今の欧米で起きている移民排斥の空気は他人事ではない。

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