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洗濯物と利他的行動

社会性昆虫に代表されるハチやアリなどにみられる利他的行動は、こと人間に対しては協力行動という文脈で用いられることが多いと感じています。
そもそも、利他的行動は自己の損失を厭わずに他者に対して利益のある行いをするという意味ですが、単に生存・生殖を重きに置く動物にとってこの行動は自身の寿命を縮める行為にすぎないのに、なぜ行うのだろうと以前から疑問に思っていました。

例えばアリは生殖機能を持つ女王アリを頂点としたカースト社会が敷かれており、生殖機能の持たないアリが卵を舐めて雑菌から守ったり、幼生を世話したり、巣作りをしたりと様々な仕事を担っています。
調べてみると年老いたアリほど外に出て餌を取ってくるなど危険な仕事に従事するようですね。(引用下記)
(この点は人間社会と真逆ですね)

では、なぜ自分の子でもないのにも関わらずここまで献身的になれるのか。

それは集団全体で考えてみるとひいては個の繁栄に効いてくるという意味で、集団への利益行動だからなのです。
ミツバチでも、巣の内部温度が上がると羽をはばたいて温度を下げようとする動きがみられます。長い時間羽ばたきをしたハチは体力を失って死んでしまうものが多いですが、結果的に巣を守り、種の存続に貢献しました。
つまり個体だけに目を向けるのではなく、集団での存続をいかに永らえるかに重点を置いているのですね。
人間社会においても職業選択の自由はありますが、分業的に社会を担うという点で見ると、あまり変わらないかと思います。(そこに賃金が発生するか否かの違いですね)
Web上で拝読した論文では”生存繁殖上の運命を共有する生物集団”として形質集団という定義をしていました。

今の私の家庭環境は妻と二人暮らしです。
ここも一つの形質集団と考えると、個人の利益を度外視して集団のために行動をするのは本来の意味での利他的行動と言えるかと思います。

例えば。
片方が飲み会などの用事が入って外出をしているとき、もう一方は干した洗濯物を畳んだり、クイックルワイパーで軽くフローリングをきれいにしたり、翌日の朝ごはんのための炊飯をしたりします。

普段は家事を二人で分担していますが、このときに限っては家にいる人がやる、というなんとなくの暗黙の了解があるのです。

最初は何の気なしに始めたのですが、回数を重ねるにつれ、なぜ外で楽しんでいる人が家事を免除されて、一人留守番をしている側が損を被るのかと不服に思うことが何度もありました。
連続で留守番をしているときなどは特に。

けれどこの形質集団としての利他的行動と考えると悪くないものだな、と最近は思い直しています。
・片方が外で楽しむことで気分がよくなる。発散ができる。
・もう一方はタイミングが狂うはずだった毎日のルーティーンを維持する。
・帰宅後、維持してくれた配偶者に対し、感謝の意を述べる。
・次の飲み会を気兼ねなく楽しむことができる。
・結果として家庭環境がうまくいく。

いいことづくめな気がしませんか?
最近妻頑張っているなーと感じるときは、感謝の意を込めて、妻がくつろいでいる間に自発的に洗濯物を畳むようになりましたし、意識全体のレベルが一つ上がった気がしています。

大事なのはこれを強制としないこと。
してくれたことに感謝を示すこと。
そして感謝を求めないこと。

正直今でもここまでやるの?と思うこともありますが、家庭を思えばこそ。
十代の時にはお小遣いをもらってもなお、手伝いを億劫に感じていた自分からすれば大きな成長です。

日々同じことの繰り返しですが、微々たるものでも成長はしていきたいですね。

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