2023CPBLドラフト指名選手リスト 台鋼+富邦
台鋼(指名10名)
①林子偉(リン・ズーウェイ)
米独立・アトランティックリーグ 175cm 82kg 29歳 右左 2B/SS/3B/OF
〇内外野可能 走力 実績 △パワー
主要国際大会経歴(高校以降) 10年:IBAFワールドカップ 11年:AAAアジア野球選手権大会 12年:IBAFワールドカップ 15年:アジア選手権 16年:U-23ワールドカップ 19年:アジア選手権 23年:WBC
新球団のスターと目されるユーティリティー。高校時代は5ツールプレイヤーとして名を馳せ、卒業後当時の台湾人選手で史上2番目の契約金209万ドルでレッドソックスに入団。内外野こなすユーティリティーとしてプレーし、17~21年までMLBで計102試合 打率.223 OPS.614。今季は開幕前にWBC台湾代表としてプレー、その後米独立・アトランティックリーグで45試合 打率.270 7HR 23打点 7盗塁 OPS.876と好成績。MLBではパワー不足に苦しんだが、米独立での成績を見ると台湾でもシーズン10HR程度は期待できそう。出身地である高雄市を本拠地とする台鋼からの全体ドラフト1位指名となり、ポジションは2B、RFで打順は3番あたりに入れれば打線、守備の要となれるだろう。
①王柏傑(ワン・ボージェ)
寿山高中 178cm 75kg 19歳 左左 LHP
〇コントロール メカニクス △ストレート ウイニングショット
主要国際大会経歴(高校以降) なし
成熟した投球を披露できる高卒左腕。寿山高中では安定感あるエースとして、今ドラフトで味全4巡目指名の黃侰程と共に、投手陣を支えた存在。同校からのプロ入りは潘韋辰(元中信兄弟)以来8年ぶりとなる。千賀滉大(メッツ)の握りを参考にしているというフォークをカウント球、勝負球の両方で用い、他にカーブ、スライダー、チェンジアップを投じる。バランスの良い投球フォームからコントロール良く投げ込め、内角を厳しく突くこともでき、大崩れしないのも持ち味。今年のドラフトは高卒左腕が不作との声も聞かれる中、頭一つ抜けた存在。課題はストレートで最速143km、平均137~141km程度も球威不足。また変化球も空振りを奪えるウイニングショットを確立したい。台鋼は投手不足ではあるものの二軍で時間をかけて先発左腕として育成したい存在で、ロールモデルは陳仕朋(富邦)。
②陳飛霖(チェン・フェイリン)
崑山科技大学 175cm 70kg 23歳 右左 SS
〇走力 △パワー
主要国際大会経歴(高校以降) なし
球界屈指のスピードスターになれる俊足を持つ選手。ドラフト前の知名度は高くなかったが、台鋼はドラフト前に球団でテストを行い、彼の走力に驚き上位指名を決めたとのこと。最速一塁到達タイム約3.6秒の走力は陳晨威(樂天桃猿)とも比較される速さで、打撃もスイングが速くギャップを抜くパワーがあり、今年の春季リーグでは打率.390(41-16)をマーク。守備は足捌きは良いもののキャッチングの安定感を高めたいところで、内野では2B向きとの声も。台鋼5巡目指名の巫柏葳と同じく創部8年の崑山科技大學からのプロ入りは、昨年の李欣穎(台鋼)以来2年連続となった。台鋼は昨年全体ドラ1でSSの曾子祐を指名したが彼と競わせるのか、それともポジションを移すのか。起用法が気になるところだが、チームに貴重な俊足選手として盗塁王争いをできる存在になりたい。
②陳世嘉(チェン・シージャ)
国立台湾体育運動大学 177cm 75kg 20歳 右左 C
〇肩 △パワー
主要国際大会経歴(高校以降) なし
今年の大学野球リーグ優勝に貢献した捕手。三民高中では2年から出場機会を増やし、キャプテンも務めた。最大の武器は肩で、二塁送球ポップタイムは最速で1.9秒。今年の大学野球リーグ決勝の南華大学戦では1試合に3つの盗塁阻止を記録した。ディフェンシブな捕手との評価も、今年の春季リーグでは野球人生初となるHRを放ち、意外性のある打撃も持ち合わせる。今年のドラフトに参加した捕手では最も即戦力としての活躍が期待できる存在。台鋼は新球団ゆえ生え抜きの捕手も年齢が近い若手で競争となるが、守備力の高さで差別化できるか。
③張誠恩(ジャン・チェンエン)
高苑工商 177cm 75kg 19歳 右左 SS/3B
〇アプローチ 肩 走力 △完成度 変化球
主要国際大会経歴(高校以降) なし
運動能力に長けた二刀流。台鋼とは昨年客員コーチに就任した井端弘和氏が高苑工商を訪れた際に直接指導を受けたという縁がある。打撃はアプローチに長け、単打を積み重ねていくタイプ。守備は打球反応が良く、範囲も広く強肩。走力も平均以上。投手としては最速148kmをマークし、重要な試合でも最初は野手として出場し、リリーフで登板するケースが多く見られた。持ち球であるカーブ、チェンジアップ、スライダーを磨いていく必要はあるが、投手の方が成長速度は速く、野手は高い身体能力を生かせれば特に打撃で伸びしろがあり、プロではどちらで起用されるのか注目したい。今回のドラフトでは3Bとして参加しており、野手としてプレーする場合はメインのポジションを移す可能性もある。
④曾奕翔(ツェン・イーシャン)
鶯歌工商 180cm 75kg 19歳 左左 LHP
〇球速 落ち着き △コントロール
主要国際大会経歴(高校以降) なし
完成度の高い細身の高卒左腕。肘が石灰化したことによるリハビリに3~4ヶ月を費やし、今年前半の出場機会が少なかったことから参加を決めた今年6月のCPBLトライアウトでは自己最多タイの146kmをマーク。球速も故障前の水準に戻り評価を上げていく中で、MLBのタイガースからも口頭で20万ドルのオファーがあったが、CPBLドラフト参加を決めた。バランスの良い投球フォームから先発では130km台後半のストレート、変化球はストレートとの見分けがつきにくいチェンジアップ、縦に落ちるカーブ、横方向への曲がりが大きいチェンジアップ、投球比率は少ないフォークを投じる。またマウンドでの落ち着きにも定評があり、プロ向きのメンタルを有している。課題は各球種のコントロールで、カウントを悪くした際は球種を落としてストライクを取りに行く場面が見受けられた。細身でアップサイドは大きいため、先発として時間をかけ育てたい。
⑤巫柏葳(ウ・ボーウェイ)
崑山科技大学 177cm 77kg 21歳 右右 RHP
〇ストレート △コントロール リリーフ向き
主要国際大会経歴(高校以降) なし
力のあるストレートを身に付けエースに成長した右腕。高校時代は無名の存在も、大学入学後に投球フォームを修正、科学トレーニングを取り入れチームのエースに成長。昨年の大学野球リーグでは先発、リリーフで起用され34.2IP 26K ERA2.34。今年の春季リーグでは2試合に先発し14IP ERA2.57も、7BBとコントロールに課題を残した。上背はないものの140km後半を常時マークするストレートが武器で、CPBLトライアウトでは自己最速を更新する149km。ロールモデルは自らが目標とする選手であると語る曾峻岳(富邦)。台鋼はここまで二軍で勝ちパターンが固定できず苦しんでいるが、リリーフの一角に食い込めるか。
⑥林詩翔(リン・シーシャン)
大同技術学院 180cm 75kg 22歳 右右 RHP
〇球威 △コントロール リリーフ向き
主要国際大会経歴(高校以降) なし
リリーフとして力で押す投球が見たい右腕。昨年ドラフト参加も指名はなく、今年CPBLトライアウトに参加し自己最速の147kmをマーク、再度のドラフト参加。高校は平鎮高中に入学も出場機会に恵まれず、高2後半に花蓮の玉里高中に移り、野手から投手に転向。大学は大同技術学院に入学しエースとなるも、昨年大学が新入生を募集停止。新入生が入らなくなったため選手不足となり登板過多に。今年の大学野球リーグでは38IP 44K ERA0.95と活躍も、その後の春季リーグでは疲労もあってか18.2IP ERA10.61と打ちこまれた。ダイナミックなオーバースローから力のあるストレートとスライダー、チェンジアップが主な球種で空振りを多く奪える。投球スタイルとしてはリリーフ向きで、巫柏葳と同じく勝ちパターンに入ることができれば面白い。
⑦郭俞延(グォ・ユーイェン)
国立体育大学 185cm 85kg 20歳 右右 RHP
〇ストレート △変化球 コントロール
主要国際大会経歴(高校以降) なし
大学でレベルアップした姿を見せた右腕。高苑工商では統一ドラ3の辛俊昇と並んで左右のエースとして活躍。大学進学後はリリーフとして起用され、昨年のドラフトに参加も指名は無かったが、今年の春季リーグでは自己最速150kmをマークし11.2IP ERA0.77の好成績。ストレート中心の投球スタイルで、リリーフでは130km後半~140km前半をマーク、変化球は自信があると語るスライダー、カーブに加えてフォーク、チェンジアップと豊富だが武器となる球種がなく、ボールがばらつき球数が嵩む場面が見受けられる。プロ入り後は変化球とコントロールの修正に取り組みたい。
⑧黃群(ホァン・チュン)
南華大学 175cm 78kg 20歳 左左 LHP
〇完成度 球種 スタミナ △球威 疲労
主要国際大会経歴(高校以降) なし
先発として成熟した投球を見せる左腕。高校時代は目立った実績がなかったが、大学で球速がアップ。南華大学のエースとして、今年の大学野球リーグでは44IP 47K ERA0.90でチームの準優勝に貢献。ストレートは130km台後半~140km程度だが、球種はツーシーム、スライダー、カーブ、スプリットチェンジと豊富で、緩急で打ち取るタイプ。スタミナと奪三振能力にも長け、今ドラフトの大学生投手では即戦力として期待された存在だったが、予想に反しての下位指名。CPBLトライアウトで球速が出ず、疲労や故障の懸念があったからではないかとの声もある。ただ先発として完成度の高いタイプであり、8巡目指名で戦力になれば台鋼としても儲け物であろう。
富邦(指名8名)
①王念好(ワン・ニェンハオ)
北科附工 183cm 85kg 18歳 右右 3B/1B
〇パワー アプローチ △走力 3B守備
主要国際大会経歴(高校以降) 22年:U-18ワールドカップ
ここ数年の高校生ではトップクラスの打力を誇る野手。高校は強豪の穀保家商に入学する可能性もあったが、出場機会を求め北科附工に進学。昨年のU-18ワールドカップでは9試合打率.294 0HR 1打点 OPS.971、今年の高校野球リーグでは打率.520 1HR。玉山盃では桃園市の4番としてHRを放ち優勝に貢献。最大の武器である打撃はパワーが魅力だが弱点が少なく、広角に打球を放つことができ、カウントを悪くしてからは粘り強く投手に球数を投げさせるなどアプローチも良好。走力は平均以下。守備は3Bメインだが、プロでも引き続き守れるかは微妙で1Bメインになる可能性も。3Bに残れれば劉基鴻(味全)を超えるポテンシャルがある。富邦は1Bにレギュラーの范國宸、プロスペクトに王苡丞が控えており、チームの編成的にも何とか3Bの長距離砲として育ってもらいたいところだ。
②陳聖文(チェン・シェンウェン)
嘉義大学 175cm 65kg 20歳 左左 LHP
〇スライダー メカニクス △リリーフ向き 故障
主要国際大会経歴(高校以降) なし
左殺しのリリーフになるポテンシャルを秘める細身の左腕。予想外の高い順位での指名となったが、これは富邦の投手コーチが投球フォームのスムーズさを高く評価したことによるもの。高校時代は肘靭帯を傷めた影響で安定した活躍ができなかったが、大学入学後にPRP治療を行い、1年時は実戦登板なし。2年から復帰すると球速を取り戻し、チームのエースに成長。今年の春季リーグでは20.1IP ERA0.44 26Kを奪い大会の奪三振王に。細身の体格から腕のしなりを使って投げられ、投球フォームのバランスも良好。ストレートは130km台後半と速くなく、横変化の大きいスライダーが武器で空振りを多く奪える球種だが、コントロールが不安定。球種の少なさから単調な投球スタイルであり、リリーフ向き。丘昌榮監督は二軍で何試合か投げさせた後、一軍に昇格させるプランもあると話している。
③林旺熙(リン・ワンシ)
中国文化大学 180cm 88kg 20歳 右左 RHP
〇ストレート △変化球
主要国際大会経歴(高校以降) なし
文化の火の玉守護神。中学時代から注目されるも、高校では今一つ。しかし大学で成長し、球速も最速151kmまでアップ。今年の春季リーグでは5.1IP 8K ERA0.00と完璧な投球。どっしりとした体格から投じられるストレートは常時140km台後半をマークし威力があり、高めでも空振りが奪える。また速球派でありながらコントロールも悪くない。一方で変化球はスライダーはあるものの空振りを奪えておらず、最近はフォークも練習しているとのこと。球速の速い投手にも対応が早いプロで生き残るには空振りを奪える変化球を確立したい。富邦は現在抑えの曾峻岳が早ければ来年に海外移籍の可能性があり、似たタイプの後釜として後期から一軍で姿を見られそうだ。
④高捷(ガオ・ジェ)
台湾体育運動大学 178cm 71kg 21歳 右左 2B/3B
〇内野複数ポジション
主要国際大会経歴(高校以降) なし
手足が長く運動能力に長ける内野手。昨年のベースボール5ワールドカップで代表入りし3位に貢献、今年の大学野球リーグでは大会3位の打率.409をマーク。守備は2B、3Bをメインに守り1B、SSも経験ありと内野全ポジションの経験があるのが強み。昨年富邦は3巡目で池恩齊、5巡目で林岳谷、10巡目で賴柏均と似たタイプの内野手を獲得しており、激しい競争になることが予想される。
⑤林育辰(リン・ユーチェン)
彰化芸中 182cm 72kg 18歳 右右 RHP
〇ストレート △コントロール
主要国際大会経歴(高校以降) なし
今ドラフトでは貴重なサイドスロー右腕。高2までは金属バットの部でプレーも、高3から球速が上がり木製バットの部に移り、玉山盃では2試合で7.1IP 10K 無失点の好投。リリーフとしての登板が多く。サイドスローから平均140kmに満たない程度のストレートはシンカー気味の軌道を辿り打者の手元で伸び、打者の内角、高めに投じ威力を発揮する。変化球は120km前後のスライダー、115km前後のカーブ、左打者にはチェンジアップが持ち球。ストレートとスライダーは軌道が大きい故コントロールを乱すことがあり、要改善。球速がアップすれば勝ちパターンのリリーフが将来像か。
⑥李祐賢(リ・ヨウシェン)
彰化芸中 187cm 83kg 18歳 右右 RHP
〇体格 △素材型
主要国際大会経歴(高校以降) なし
恵まれた体格を有する二刀流。外野は主にCFを守りながら、高2からは投手も兼任し主にリリーフとして登板、平均140km程度、最速は145km。昨年富邦入りした高校の先輩、郭泰呈と似たプレースタイル。投手としてのキャリアは浅く、まだ完成されてはいないものの今後の可能性を感じさせる。本人も投手の方が自信ありとのコメント。プロでも投手でプレーしそうか。
⑦陳愷佑(チェン・カイヨウ)
東日本国際大学 176cm 75kg 19歳 右左 SS
〇守備 △木製バットへの対応 リリーフ向き
主要国際大会経歴(高校以降) なし
日本で高い野球センスを見せる二刀流。高校から高知中央高に留学、林威漢(台鋼)とは同期。卒業後は東日本国際大に進学。日本での留学を続けることもできたが、自分の力で稼げるようになりたいと台湾に戻ってのプロ入りを決意した。高校から高い運動能力を生かした二刀流としてプレーし、大学では投手メインでプレー。野手としてはSSとして守備力に優れ、走力と肩もあるが、打撃は日本に留学していたため、木製バットへの対応に時間がかかる可能性がある。投手としては最速148km、スライダー、カーブ、フォーク、スプリットチェンジと球種も多いが、体格的にはリリーフ向きか。プロ入り後は投手、野手どちらでプレーするのか注目したい。
⑧林莛淯(リン・ティンユ)
全越運動 182cm 78kg 22歳 右左 OF
〇肩 スピード △安定感
主要国際大会経歴(高校以降) なし
ディフェンシブさが光る社会人外野手。走力に優れ、守備は強肩で内野手への送球も正確、守備範囲も広い。打撃では積極的なアプローチが目立ち、バットコントロールも良好。課題は守備では打球判断、打撃ではアプローチ。富邦ではまず守りと足でアピールして、他の外野手との差別化を図りたい。
参考:
Taiwan Baseball Notes
https://taiwanbaseballnotes.wordpress.com/
史丹利視角的體育世界
https://www.youtube.com/@stanleybaseball
沙拉
https://www.sportsv.net/authors/salada/articles