2023CPBLドラフト指名選手リスト 樂天桃猿+中信兄弟


樂天桃猿(指名7名)

邱鑫(チョウ・シン) 穀保家商 174cm 74kg 18歳 右左 OF
〇コンタクト バットコントロール 走力 △パワー コーナーOF向き
主要国際大会経歴(高校以降) 22年:U-18ワールドカップ

 穀保の小柄な切り込み隊長。中学までは内野手も、高校から外野手に転向。昨年のU-18ワールドカップでは打率.458をマークしベストナイン、昨年の黑豹旗、今年の高校野球リーグ、玉山盃に至っては3年連続でベストナインを獲得と実績十分。俊足とバットコントロールが上手い打撃が持ち味で、率を残せる1番打者タイプ。ただし体格が小柄でパワー不足であり、腕だけで当てに行くスイングも目立つためプロでは修正が必要になるだろう。また外野守備も能力は平凡で、送球動作がスムーズではなくCFを任せるには不安。実際に穀保では主にLFを守ることが多かった。打撃、出塁能力で突出したものを見せなければ、プロでは4番手外野手に甘んじてしまう可能性が高い。樂天桃猿はOF争いが激しい中での指名となったが、2~3年後から打撃で一軍の座を狙える選手になるか。

林華偉(リン・ホァウェイ) 国立台湾体育運動大学 178cm 85kg 20歳 右右 RHP
〇球種 △アップサイド
主要国際大会経歴(高校以降) なし

 レベルアップした姿を見せ高順位での指名を得た右腕。穀保家商ではリリーフで火消し役を担ったが、高3で不調に陥り富邦からドラフト12位指名と指名順位が低かったことから大学進学。大学進学後も良いパフォーマンスを見せ、今年の春季リーグでは3試合に先発し16IP 13K 2BB ERA0.56。球種は最速148km、平均138~143kmのストレート、縦に落ちるスライダー、チェンジアップ、フォーク、カーブと多彩。コーチによると大学ではボールの質、回転数、変化球のコントロールが向上。大学では7回ノーヒットノーランを達成するなど先発としても結果を残しており、樂天桃猿では先発としての起用が見込まれている。大学に入って平均球速がアップし欠点が少なくなったが、今が完成形のハイフロアーな投手という印象もある。

賴胤豪(ライ・インハオ) 北科附工 173cm 65kg 18歳 右右 RHP
〇ストレート △体格 投球フォーム リリーフ向き
主要国際大会経歴(高校以降) なし

 リリーフ向きの速球派右腕。高校では1年後半に膝の手術で約半年の離脱も、2年から主力投手となり、3年に先発からリリーフへ移った。力感のある投球フォームから優れたエクステンションで最速149km、リリーフでは平均145km前後のストレートに、大谷翔平(エンゼルス)を参考にしているという横方向への変化が大きいスライダーが武器で他にもフォーク、チェンジアップを投じる。逆W字型の投球フォームのため、肩肘の故障が心配。小柄な体格でこれ以上球速を伸ばせるかは未知数だが、憧れと語る曾峻岳(富邦)のように、ストレートの球威で抑える勝ちパターンのリリーフが将来像。

曾家輝(ツェン・ジャーフイ) 国立台湾体育運動大学 184cm 70kg 20歳 右右 RHP
〇コントロール △球速 変化球
主要国際大会経歴(高校以降) なし

 安定感あるリリーフ右腕。決して有名校ではない台中の新社高中出身で、同校を卒業した投手のプロ入りは劉昱言(味全)以来7年ぶり2人目。大学1年時は先発メインも、今年の大学野球リーグではリリーフとして好投を続け大会トップのERA0.64。コントロールを高く評価されており、四隅にしっかり投げ分けることが可能。バランスの取れた投球フォームから140km台前半のツーシームを多く用い、スライダー、チェンジアップと組み合わせ打ち取るゴロボーラーで、タイプとしては吳哲源(中信兄弟)に近い。プロのリリーフとしては球速と変化球の質を高めたいが、マウンドでの落ち着き、肩肘の健康さも備えているため、完成度の高いリリーフとして即戦力での活躍も見込めそう。将来的には勝ちパターンを担える存在になりたい。

李勛傑(リ・シュンジェ) 平鎮高中 186cm 85kg 18歳 右右 1B/OF
〇パワー △コンタクト 走力
主要国際大会経歴(高校以降) なし

 パワフルなスイングが魅力のパワーヒッター。平鎮高中では1年時から期待された存在で、高2の黑豹旗ではベストナイン、高3からは4番に定着。がっちりとした体格からフルスイングでボールを捉え、引っ張り中心に長打を生み出す。バットコントロールは平凡、コンタクトを課題としており、プロ入り後はスイングを修正する必要がありそう。守備は高2まではコーナーOF、高3からは1Bメインで強肩、走力は平均以下。樂天桃猿は梁家榮に続く3Bの若手が伸び悩んでいるというチーム事情があるため、中学までメインに守り、自身が一番好きなポジションと語る3Bで起用される可能性もある。ただ沈鈺傑育成部マネージャーによると、チームとしてはLFで起用したいとのこと。樂天桃猿のOFは攻撃力ある選手が集まる競争が激しいポジションのため、より打力でアピールすることが必要となる。

杜禹鋒(ドゥ・ユーフォン) 東大体中 175cm 67kg 18歳 右右 2B/SS
〇守備 走力 △パワー 体格
主要国際大会経歴(高校以降) なし

 守りでセンスの良さが光る2B。中学までは桃園でプレーも、目立った活躍はなく高校は台東の東大体中でプレー。高3ではキャプテン兼1番打者として高校野球リーグ3位、玉山盃準優勝に貢献。天性の野球センスを守備でいかんなく発揮し、難しい打球も難なく捌くことができ、打球を予測し先回りして守ることにも長けている。打撃は身体の線が細くパワー不足ながらミート中心にボールをしっかり捉えることに長ける。守備についての懸念は高2からはほぼ2B専で肩もそれほど強くないため、2BからSSや3Bに移るとなるとチャンスを得られなさそうな点。2Bを守れる若手が不足している樂天桃猿にはハマりそうな選手ではあるが、打撃で大きな期待はできない。林靖凱(統一)のような守りで魅せる選手となれるか。

郭玟毅(グォ・ウェンイ) 中国文化大学 178cm 85kg 23歳 右右 RHP
〇奪三振 △経験 コントロール リリーフ向き

 投手転向で活路を見出したリリーフ右腕。ラグビー一家に生まれ、父親は台湾代表で日本のセミプロでも約3年半プレー、兄も現在日本でプレーしている。高校卒業年の19年、そして昨年ドラフト参加も指名はなく、三度目での指名となった。高校、大学2年の途中まではOFだったが、スイングの負担が大きく肩の脱臼を繰り返していたことから2年の春季リーグから投手転向。速球派リリーフとして。ストレートは最速149km、平均140km前半で大学野球リーグでは2年連続でイニング以上の奪三振。変化球はスライダーを多く投じ、今年から練習を重ねているチェンジアップを組み合わせる。コントロールがアバウトで粗削りな印象はあるが、投手転向から日が浅く伸びしろに期待できる。

中信兄弟(指名5名)

林暉盛(リン・フイシェン) 中信兄弟自行培訓 188cm 93kg 25歳 右右 RHP
〇奪三振 △コントロール
主要国際大会経歴(高校以降) なし

 即戦力として期待がかかる右腕。高校2年時に152kmをマークし注目を集めたが、以降は怪我や投球フォームが崩れコントロールを乱し停滞。大学進学後は科学トレーニングの導入、またアメリカのサマーリーグで調子を取り戻し、大学の1学年先輩の鄭浩均(中信兄弟)と共に19年にドジャース入り。20年はコロナでマイナーリーグが中止となり、21年はRkとAで計14試合42.1IP ERA5.74、昨年はAで17試合(5先発)52.1IP ERA6.71、8月にリリース。その後ABLでプレーも登板機会は少なく、今季は張景淯と共にアメリカの独立リーグでのプレーを予定したが、ビザの関係で実現せず。6月下旬に中信兄弟と自行培訓選手(練習生)として契約。平均147km程度の水平移動の大きいツーシームに、曲がり幅の少ない140km程度のカットボールを組み合わせ、ピッチトンネルを上手く使い打ち取る投球が持ち味で、他にベース付近で大きく落ちるチェンジアップも投じ、マイナー通算K/9 9.9と高い奪三振能力を誇る。一方でコントロールが課題で、変化球の曲がりが早く打者に捉えられるケースが多い。前述の鄭浩均と似たタイプではあるが、全体的には一枚落ちるといったところ。中信兄弟としては勝ちパターンが手薄になっているためリリーフで加わってくれるとありがたい存在。

徐博瑋(シュ・ボーウェイ) 国立体育大学 178cm 90kg 22歳 右右 C
〇打撃 △守備
主要国際大会経歴(高校以降) なし

 打力を武器とする大学生捕手。高校時代、明徳義塾高に留学経験あり。昨年は台鋼の推薦を得てドラフト参加も指名ならず。今年はキャプテンを務め、捕手としての出場機会も増え、課題の守備改善に努めた。今年の大学野球リーグでは預賽で打率.180 OPS.583と振るわずも、複賽で打率.308 OPS.840と復調。打力に強みを持つ捕手で、DHや1Bで中軸に入ることもある。守備は肩は悪くないものの、送球動作が大きいと国立体育大学の邱俊文監督から指摘されている。今ドラフトでは予想外の上位指名となったが、中信兄弟の捕手陣の最年長が外国人のペーニャを除くと黃鈞聲と陳家駒の34歳で、2人とも今季二軍でも成績が振るわず。正捕手に近い高宇杰は26歳。21歳の林吳晉瑋は一軍の3番手捕手も守備面で課題を残しており、22歳の陳統恩は二軍で平凡な成績、26歳の潘泓凱も出場は僅かと不安がある状況。それだけに今ドラフトで4巡目の胡孟智と併せて捕手を2名指名したのは若手捕手の底上げを目指したと判断できる。

張士綸(ジャン・シールン) 美和中学 179cm 70kg 18歳 右左 SS
〇守備 走力 △パワー
主要国際大会経歴(高校以降) なし

 ディフェンシブな高卒内野手。兄は張政禹(味全)。細身で手足が長く、兄と同じく守備のセンスに優れ、肩、足捌きも良い。打撃はゾーン理解に長けているとの評価。中信兄弟のSSは絶対的なレギュラーである江坤宇が守り、バックアップ、二軍も人数に不足ない状況での指名となったが、SSを守れる運動能力の高い選手を指名し、状況に応じては他ポジションにコンバートしていくという近年の球団の傾向に沿ったものと見られる。球団はアップサイドの大きい存在として、大方の予想を上回る3位での指名を決めた模様だ。

胡孟智(フ・モンジ) 平鎮高中 161cm 66kg 18歳 右右 C
〇肩 キャッチング △体格 打撃
主要国際大会経歴(高校以降) なし

 小柄な平鎮の正捕手。家族からは安定している合作金庫や台湾電力といった社会人入りを薦められるも、今ドラフトが不作年であり、指名のチャンスが大きいと考え参加。プロ入りとなるとCPBLでは史上最も身長の低い選手となる。小学5年生から捕手で、平鎮高中では2年から卒業した張翔(統一)の後を受けて正捕手となり守備で高い評価を受けている。特に捕球から投げるまでの速さと肩が際立ち、ブロッキング能力も高い。平鎮高中の吳柏宏監督は「戴培峰(富邦)の高校時代よりも盗塁阻止能力は上」との評価。今ドラフトは捕手の大物が少ない中で徐博瑋、陳世嘉と大学生捕手2人が上位指名を受けたことから、大方の予想よりも早い順位での指名となった。体格ゆえ打撃に多くは期待できないものの、守備力に長けた二番手捕手として一軍に定着できる資質を有している。

楊祥禾(ヤン・シャンヘ) 中国文化大学 180cm 75kg 20歳 右右 SS
〇コンタクト 肩 △アプローチ 守備の安定感
主要国際大会経歴(高校以降) なし

 攻守のバランスが取れた大学生SS。高校時代は最速145kmをマークする二刀流としてプレーも、プロ入りを考えて大学入学後は野手に専念。紀慶然(台鋼)が抜けた後はレギュラーSSに。打撃はアプローチに課題も、広角に安打を放つことができる。プロでもSSを守れる守備力で平均レベルの守備範囲と平均以上の肩を誇るが、キャッチングの安定感向上が課題。走力は平均以上。今年の春季リーグ預賽では10試合で打率.564。率を見込めるSSとしてレギュラーになれるポテンシャルを秘めている。上司指名候補としてドラフト前は名前が挙がったが、今年は高卒のSS候補が多く出てきた年であり、大学生で年をとっている点が指名順位にも影響したか。

参考:
Taiwan Baseball Notes
https://taiwanbaseballnotes.wordpress.com/

史丹利視角的體育世界
https://www.youtube.com/@stanleybaseball  

沙拉
https://www.sportsv.net/authors/salada/articles

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