【ゼンゼロ考察】断層の謎~アルペジオ大断層と、ホワイトスター学会・反乱軍・讃頌会を巡る陰謀について
【注意】本記事はゼンレスゾーンゼロのイベント『断層の謎』関連のクエスト及び4章までのネタバレ、個人の見解・推測を含んでいます。また、Ver.1.3時点の情報を元に執筆しているため、今後の展開される情報とは異なる可能性があります。
Ver.1.3アップデートにて実装された『断層の謎』は、零号ホロウ内にあるアルペジオ大断層への探索を通じて、本編時間軸より遡ること2年前に発生したホワイトスター学会に絡む事故を解き明かすシナリオとなっている。
シナリオを読み進めていくなかで明かされていった反乱軍、そして謎の黒幕の仄めかしは今後の展開を解き明かすためのパズルのピースとなる可能性を秘めているだろうか。
先刻の公式予告番組にて、プロデューサーZhenyu氏はVer1.4をストーリー第一期のクライマックスと称したが、今後の伏線となりそうな要素を明らかにするため、零号ホロウに纏わる本エピソードを書き留めておきたい。
イベント関わる組織と人物
イベント『断層の謎』のシナリオを紐解く前に、まずは登場する各組織と人物について既知の情報を整理する。
ホワイトスター学会
ホワイトスター学会はホロウ調査協会に所属する組織であり、ホロウの研究を目的として零号ホロウ内に観測基地を置いている。零号ホロウ内にて活動をする以上、エーテル活性値の上昇やエーテリアスによる襲撃といった脅威に晒されることになるため、学会のメンバーたちは命を賭して研究に臨んでいる。
メインストーリーに関わる要素として記しておきたいのが、邪兎屋が赤牙組から人工知能Fairyの入った金庫を奪ったことで主人公たちパエトーンを巻き込むシナリオが展開していくが、元々赤牙組が金庫を盗むために襲撃した先はホワイトスター学会であったという点だ。
世界観PVでは「我々のパッケージをここにアップロードする」というセリフの後で、4種の人工知能JINNI・GHOST・YOUKAI・FAIRYがアップロードされる描写があった。故に、ホワイトスター学会が所有する研究所もしくはデータベースにFAIRYを除く3つの人工知能が隠されていると推測を立てることができるだろうか。
『断層の謎』シナリオを読むうえでは、スコット前哨基地のレイがホワイトスター学会に所属していることを頭に入れておくと、どのような立場から発言をしているのか読み解きやすいだろう。
防衛軍
『断層の謎』シナリオに関わる登場人物として11号が登場しているが、エージェント秘話からも分かる通り、彼女に関わるエピソードは基本的に防衛軍と反乱軍との衝突や応酬に関わるものが多い。
新エリー都における防衛軍の役割は、ホロウの拡張を阻止することから、仇なす敵対勢力の制圧まで、文字通り軍事力を用いてを都市を防衛すること。零号ホロウで作戦指揮を執るローランド大尉は防衛軍の中で責任ある立場に就いている。
メインストーリー2章で主人公たちへ心構えを問うた際に「全てをなげうって自分がトラックに突っ込んで全員を助ける」と答え、自己犠牲の精神を説いているが、まさしく防衛軍のイデオロギーを体現している人物と言える。
防衛軍について、現時点でそれほど多くの描写があるわけではないが、エーテル虚境漫遊に登場したコレクションのフレーバーテキストによると、街の防衛を任務とするダイヤモンド大隊や、新たな開発地域を探査するクリソベリル大隊といった部隊が存在する。
ホロウに関わる任務についているのはオブシディアン大隊で、防衛軍屈指のホロウ内戦闘スキルを持つ。
また、オブシディアン大隊はホワイトスター学会と共同で零号ホロウの管理を行っているため、スコット前哨基地には「OBSIDIAN」と記載のあるマークが散見される。
オブシディアン大隊は任務遂行のために強硬手段に出ることもあり、「理不尽の権化」と称されることも。
プレイアブルキャラクターとして実装されている11号については、防衛軍オブシディアン大隊内のオボルス小隊に所属。彼女の行動原理は、兎にも角にも軍人として任務を遂行することを第一としている。
余談だが、クイック支援時の「零,让开(ゼロ、どいて)」というCN版ボイスや11号のPVにて語りかけているセリフから、11号はかつて防衛軍にて「ゼロ」と呼ばれていたアンビーと行動を共にしていたことが窺える。
反乱軍
”軍”と名のつく通り、特殊な戦闘服やエーテル技術で強化された火力武装を有している勢力。「旧都陥落」を契機として多くの軍人たちが野へくだり、メインストーリー3章の飛行船墜落未遂をはじめとして新エリー都を脅かす一大勢力となっているため、ゲーム内でも敵ユニットとして戦闘する機会が多い。
反乱軍のボスは「軍の悪行を暴く」と口にしており、大量の兵士が脱隊した背景として、軍によって何かしら重大な事件・事故が引き起こされた可能性が示唆されている。
『断層の謎』シナリオについて
事の始まり
『断層の謎』は、ホワイトスター学会と防衛軍が零号ホロウ外周にあるアルペジオ大断層エリア内に観測ステーション建設すべく、障害となっている未知の怪物による輸送ロボット襲撃の真相を究明するというシナリオだ。
前哨基地にて指揮を執るローランドは、オブシディアン大隊の専門調査員である11号と優れたホロウ内ナビゲーション能力を持つ主人公たちに調査を依頼する。
未知の脅威を特定するという性質上、11号は小型で機動性に優れるボンプたちによる調査が適切だと判断しチームを編成するが、その中には本編より遡ること2年前のアルペジオ大断層の探索失敗を契機に失踪した「4412号」という名のボンプが含まれていた。
この「4412号」の持ち主こそが物語の鍵を握る人物であり、自己犠牲と奮進の救出劇のエピソードが内包されている。
アロウィン:アルペジオ大断層を巡る救出劇
2年前、ホワイトスター学会は大断層の深部にある第四研究所の遺跡へ、封印されていた特殊なエーテル物質を回収する準備をしていた。その情報を聞きつけ、エーテル物質の横取りを目論んだ反乱軍は学会へとスパイを送り込むことを決める。
その反乱軍所属のスパイはコードネーム「4412」、アロウィン・ミスティックという名の女性だ。アロウィンこそが先の「4412号」の持ち主であり、自らのコードネームと同じ番号をボンプへ名付けている。
彼女は身分を偽ってホワイトスター学会へと潜入したが、いずれ裏切らなくてはならない仲間との交流に苦悩していた。
タブレットに残された履歴は親子の会話を装い、第四研究所の鍵を入手する手筈をアロウィンへ尋ねた反乱軍のメッセージだ。問いに対してアロウィンからは返信が一切ないあたり、任務に対して消極的であった彼女の姿勢が窺える。
鍵を入手する試みは失敗に終わったため、反乱軍は保管庫を爆発する計画に切り替え、爆薬とロボットと調達した。アロウィンは命令に従って反乱軍の仲間と合流するが、第四研究所に向かう途中で高危険度のエーテリアスと遭遇。
ホワイトスター学会の面々たちと打ち解けていた彼女は、反乱軍の命令よりもエーテリアスの脅威から学会の同僚を救いだすことを優先し、踵を返す。
アロウィンが取った行動は、爆薬を積んだ反乱軍のロボットの命令を書き換えることだった。彼女は特定の位置で爆薬を起爆する命令を「高レベルのエーテル活性体を特定、至近距離で爆弾を起爆せよ」へと変更し、高危険度エーテリアスへ対抗した。
程なくして、アルペジオ大断層では大爆発が発生。巨大な衝撃波はホロウの構造を大きく作り変え、乱流の回廊が誕生した。
爆発によってエーテリアスを追い払い、ホワイトスター学会の仲間たちの救出に成功したアロウィン。しかし、彼女は反乱軍ロボットへ命令するために高危険度の個体へと近づきすぎたため、その身体はエーテルによって蝕まれていた。
せめて最期は人間のままでいたいという願いを受け、命を救われたホワイトスター学会の同僚はアロウィンを火葬し埋めることを決める。
アルペジオ大断層の爆発後
アロウィンの奮闘により大多数のホワイトスター学会の研究員たちは生還するが、高危険度エーテリアスによる特殊な侵食症状により、彼らはアロウィンに関する記憶を失うこととなった。
唯一記録を残していたのはボンプの「4412号」だが、アロウィンは高危険度のエーテリアスに立ち向かう直前にその記録を削除する。
高危険度エーテリアスを追い返すために使用した反乱軍のロボットは爆発後も稼働可能な状態であった。事件から2年後、主人公たちが調査するきっかけとなった未知の怪物とは、主人亡き後も「高レベルのエーテル活性体を特定、至近距離で爆弾を起爆せよ」という命令をこなし続ける反乱軍ロボットであり、輸送ロボットからエーテル爆薬を奪い続けているというわけだ。
ホロウは人間だけではなく機械をもエーテリアス化させる特性がある。反乱軍ロボットのうち1台でも侵蝕されてしまえば、高レベルのエーテル活性体とみなし大量に奪ったエーテル爆薬を大規模に爆発させる恐れがあるため、主人公たちは反乱軍のロボットを排除し、事態は収束に向かう。
残された謎~讃頌会と思しき教団について
ホワイトスター学会の先遣隊も反乱軍も、遂には第四研究所の遺産である特殊なエーテル物質を手に入れることは叶わなかった。2年の歳月を経て、主人公たちは研究所の地下保管室と思しき場所で意味深なアタッシュケースを見つけるが、中に入っていたのは意味ありげなメモのみ。
箱には何者かが奪った形跡が残されていた。メモに記されている「始まりの主」はEN版表記でthe Creator(創造主)となり、何かしら宗教に関連する組織であると推測を立てられる。
ゼンゼロにおける謎めいた宗教に関する情報は、虚境漫遊のコレクションでも確認することができる。
零号ホロウから発見されたPCに残されたこの日記は、とある防衛軍の一等兵が「旧都陥落」前夜について綴ったもの。
日記の持ち主は「旧都陥落」が起こる直前に怪しげな教団が集会を目にしており、その教団こそが大災害を引き起こした原因ではないかと推測している。
零号ホロウに飲み込まれた日記の持ち主は、ホロウ内で人間の活動の痕跡を発見。この「旧都陥落」が自然発生したものではないとする証拠を残すために、エーテルによって肉体を蝕まれる中でパソコンに文章を残し続ける。
オード(ode)とはフランス語で、古代ギリシャの朗読による頌歌(しょうか、崇高な主題を多くの人や事物などに呼びかける形式で歌う自由形式の叙情詩)を意味する言葉。
この「頌歌」という単語は、隠しクエスト「アンダープロフェシー」のラスボス(予言者)を倒した際にセリフの中にも登場する。
宗教、そして頌歌という並びで想起されるのは、世界観紹介PVにおける星見家三代目当主の紹介に登場した「讃頌会」という組織だ。
星見家三代目含め、旧都(エリー都)の創建に関わった7人の『虚狩り』たちは「旧都陥落」より昔に活躍した人物であるため、讃頌会は一時代前から活動していた組織ということになる。
一組織の上位職を葬ったことが功績として讃えられるあたり、相当悪名高い存在であったと言えるだろうか。星見家三代目当主によって司教を失った教団は、組織として一時的に弱体化したことが窺える。
そして再び力をつけた教団は「旧都陥落」の裏側で暗躍しており、反乱軍同様に新エリー都を脅かす存在として再び力をつけていると、というのがここまでの情報を踏まえた推測だ。
ここからは憶測。「旧都陥落」の裏側に宗教団体が関わっているという点を更に掘り下げるならば、エーテリアスでも侵蝕体でもない存在として描かれているサクリファイス(生贄、神に捧げる供物)も讃頌会に関わってくるだろうか。
宗教には必ず何かしらの教義が存在する。仮に讃頌会が「旧都陥落」に深く関わっているならば、何かしらの信仰に基づいて都市をホロウ内へと誘ったと見て良いだろう。
ホロウの性質こそ徐々に明かされてはいるものの、その本質が何かについては未だ多くの謎に包まれている。前回の記事では、ギリシャ神話の観点からパエトーンについて考察しているが、この延長線上でゼンレスゾーンゼロというタイトルについても推測してみたい。
ゼンレスゾーンゼロ(Zenless Zone Zero)の「Zenless」については造語だが、ギリシャ語において最高神ゼウス(Ζεύς)は格変化によってゼン(Zῆν)という対格へと変化するケースがある。
印欧語学の研究者Manu Leumannは『Homerishe wörter』にて、「Ζην-」という用法は文学と詩に用いられ、ホメロスから取り入れられたと指摘している。
ギリシャ神話という文脈でゼンレスゾーンゼロを解釈するならば、Zenless(神なき)Zone(区域)Zero(ゼロ)、つまり既存の神が不在の零号ホロウと読み替えてみるのも面白いだろう。
創作上の宗教には自らが信望する神以外を崇める存在を邪教として弾圧する展開がよく見られる。仮に、讃頌会がホロウ内にいる何かしらの存在を神として崇めるならば、既存の神(に匹敵するような力を持つ存在)が支配する世界から神のいない空間へ、つまり自らが信望する新たな神を打ち立てるための世界(ホロウ)へ全てを誘おうとするのも頷ける。
やや妄想が過ぎてしまったので話を戻すが、少なからず謎の教団が「旧都陥落」に関わっているというのは、主人公たちの先生であるカローレ・アルナが旧都陥落を引き起こしたという事実を覆す材料でもある。
12月18日より公開されるVer.1.4では、星見雅に関するエピソードが盛り込まれているため、讃頌会の司教を切ったという(恐らくは雅の)母親の活躍含めて、明かされる真相に着目したい。