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起源の石とプリースティス。我が眼に映るまま見据えた今と未来(アークナイツ世界観考察)

【注意】この考察は非公式であり、ネタバレや個人の見解、推測を含んでいます。2022年3月時点の情報を元に執筆しているため、今後の実装次第で公式設定とはかけ離れた考察となる可能性がある点を予めご了承ください。

アークナイツ「VIGILO -我が眼に映るまま-」イベントPV 0-25 screenshot

砕け散っていた欠片が徐々に元の形を取り戻し、一つの名があなたの脳裏に浮かんだ。
M8-8 夢からの「覚醒」

人は皆、自身の経験に基づいて世界を区別し、認識します。

連続した意識と秩序立った記憶の再生が自らを認識するための条件だとすると、逆説的に、記憶を失った人はアイデンティティを消失し、第三者からの伝聞によって自分という”他人”の存在を感じることでしか、求められる役割を把握できません。

目覚めた瞬間から強烈にロドスを率いる役割を求められ、自身の必要性を疑う暇もなく戦いに身を投じていくドクターの状況は、不幸にして幸いと言えるでしょうか。

指揮官でも、司令官でも、艦長でもなく、doctor(博士)。戦の指導者ではなく、学術的な称号としての意味を持つこの呼称は、イベント『我が眼に映るまま』においてその意味を遺憾なく表現するエピソードを獲得しました。

それと同時に湧き上がる疑問の数々。

源石とは何なのか?

過去のドクターは何者だったのか?

テラとはどのような世界なのか?



プリースティスとは誰なのか?


・・

・・・


テラの物語は現在進行系で描写され続けている以上、現時点でこれらに対する”正解”を導き出すことはできません。

しかし、現時点で提供されている情報を整理し、観察し、思考し、想像することはできます。

今回の記事は、これまでのものと比較すると突飛で、根拠希薄なものとなり得るかもしれません。

ただ、身体の欠けたギリシャ彫刻のように、必要な要素が欠落しているからこそ無限に想像を膨らませることができますし、あれこれと思索にふける過程を楽しむことこそが、考察の醍醐味でもあります。

各々が考えるアークナイツの世界観に、この記事が少しでも足掛かりを残せるのであれば、一執筆者としての冥利に尽きるというもの。果てのない思考の旅路ではありますが、しばしお付き合いください。



イースターエッグとCBT

まずは比較的ハッキリとした材料のある要素から整理していきます。

イベント『我が眼に映るまま』の中で特に余韻を残す演出となっていたのが、シナリオのラストシーンです。

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<PRTS初の機能テスト>
『我が眼に映るまま』最後の賭け

「初の機能テスト」というのは文字通り、プレイヤーが初めてPRTSに接続したCBT(クローズドβテスト)を指すものでしょうか。

/と\が並べられた壁の画像は、CBT時代に提示されていたイースターエッグの一つです。

数々のイースターエッグを解き明かすため、大陸の有志たちは「GORIE」という名のチームを結成し、この壁についても解法を見出しています。

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その解読方法についてはここでは割愛しますが(※詳細は記事最後の参考リンク参照)、このイースターエッグを解き明かすと、次のメッセージを得ることができます。

Doctor
after a few weeks you will disappear. but when “you” once again return to the deep, you may still remember what you did.
by the way, the Reason you don’t see me is that i am trying to get some useful information for prts from abyss.
see you soon.
closure
ドクター
数週間後、君は姿を消すだろうね。でも「君」が再び深淵に戻ったとき、君が何をしたかをまだ覚えているかもしれない。
ところで、君から私の姿が見えないのは、私が深淵からprtsに有益な情報を得ようとしているからなんだよ。
また近いうちにね。
クロージャ
※筆者和訳

CBTから年数が経過していることもあり、上記のメッセージが現在のクロージャの設定と整合性の取れるものかどうかは判断することができません。

少なからず、過去のドクターと現在のドクターに対し、対比構造が繰り返し用いられていることが分かります。

クロージャ:あたしが思うに……ドクターに影響を及ぼせるのは「ドクター」だけなんじゃないかな。
『我が眼に映るまま』最後の賭け

・立ち絵の有り無し
・昔と今
・youと"you"
・ドクターと「ドクター」

これらは、ドクターという1つの器に対して異なる人格が内在していることを仄めかしています。特に後者、つまり現在のドクターはプレイヤー自身を思わせるような演出が8章にもありました。

ケルシー:ロドスが君とPRTSとのニューラルコネクタの接続を切れば、君は直ちに移動端末のシミュレーション演算中枢から遮断され、PRTSの目と権限を失う

ロドスの情報処理システムの莫大な情報の海から君は解放され、それ以降は二度とロドスの情報データベースにログインする必要もなくなる

君の情報端末をシャットダウンすれば、一瞬で全てが消える。私たちの取捨選択はとても簡単だ――ボタン一つで接続を切断し、自分が選択したその世界に自分を残すことができる。
『怒号光明』M8-8 夢からの「覚醒」

PRTS:Primitive Rhodesisland Terminal Service

Primitiveとは「昔の、旧式の」という意味を持つ形容詞ですが、機能性を鑑みるにPRTSはテラの文明においてロストテクノロジー、或いはオーパーツであるようにも思えます。

プレイヤーはPRTSと通じてドクターの肉体へとアクセスし、テラ世界のキャラクターたちと交流を持つことが可能です。

逆にPRTSとの接続を失ってしまうと

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ドクターの肉体はフリーズし、テラ世界の惨状に介入することなく、『ゲーム』を終了させることができます。


メタフィクション、テラ世界と現実世界とを仕切る「第四の壁」を超える手法は、プレイヤーの興味を大きく引きつける効果を発揮する反面、多用し過ぎると興ざめしてしまう可能性を秘めた諸刃の刃です。

今までも考察記事にてArknightsを「AR Knights」と解釈し、テラの世界が拡張世界であることを考察してきました。

ゲーム本編からは離れますが、テラの世界がバーチャル空間だとする設定はコラボ先でも適用されています。

2021年12月、CytusⅡはアークナイツとのコラボを果たしました。

Noah:≪Arc Nights≫って呼ばれるバーチャル空間で冒険したり、他のヒトと交流したりできるんだ
CytusⅡ『Audio_Noah_693_01_29』
Noah:A.R.Cは間違いなく各領域の天才を集めた場所だ。だから僕もはじめて≪Arc Nights≫の資料を見た時は驚いたんだ。
(中略)
Noah:あれは一人で世界をひとつ作り上げたと言っても過言じゃない。すごい人だよ……
(中略)
Noah:僕も本人には会ったことがない。メールでのやり取りのみだ。メールでは自分のことを「ドクター」と名乗っていてね、名前すらわからないんだよ……不思議な人だ……
CytusⅡ『Audio_Noah_693_01_30』


また、2022年3月10日に突如として作成されたアークナイツ:エンドフィールドのユーザー名も、「AKEndfield」とアルファベットに大文字のAとKを使用しており、箱舟を「ArK」と表記するのは不自然であることから、上記の解釈を後押しする材料になっていると捉えることもできるでしょうか。


しかし、1つの考えに固執し、何もかもがメタフィクションの手法だと安直に考えてしまうのは、思考の放棄とも言えます。

そこでこの先は、一旦メタフィクションとしての認識から離れ、別の視点から明日方舟というタイトルについて解釈していきます。


明日方舟と皆既日食

アークナイツ「VIGILO -我が眼に映るまま-」イベントPV 0-16 screenshot

数ある考察の中に、明日方舟とは明日(今日の次の日)を指しているのではなく、「明」の字が「日と月が重なる」点に着目し、日食が起こる際の天体の位置関係に対応していると捉えたものがあります。

日と月が重なる現象は「皆既日食」と呼ばれ、地動説が唱えられる遥か以前より記録されてきました。

方舟を「ノアの方舟」と捉え、旧約聖書に皆既日食の手がかりを求めてみます。

「日よ とどまれ ギブオンの上に
 月よ とどまれ アヤロンの谷に。」
日は とどまり
月は 動きをやめた
民が 敵を打ち破るまで。
『ヤシュルの書』にこう記されているように、日はまる一日、中天にとどまり、急いで傾こうとしなかった。
日本聖書協会『新共同訳 新約聖書詩編つき』 ヨシュア記10章12-13節

宗教指導者が重要な局面において自然現象を思いのままにするような表現は、古今東西問わず様々な文献に見つけることができます。

伝承される物語の年数が経過するほど、地域が広まるほどにその話は誇張される傾向にあるため、逸話にはあくまで逸話なりの読み解き方が必要です。しかし、必ずしも誇張されたものばかりと言い切ることもできません。

例えば、古典文章で「3つの太陽が現れた」と表記されると信じがたいものがありますが、これを「幻日」として捉えるならばその文献は一定の信ぴょう性を持ちます。

先述の旧約聖書(ヨシュア記)の皆既日食については、イギリスのケンブリッジ大学が「日食に関する人類最古の記録」として研究を進めています。

ヨシュア記はモーセの後継者であるヨシュアが、約束の地(神がイスラエルの民に与えると約束した土地)を征服していく物語です。

旧約聖書の「旧約」とは、神がモーセを通して人類に与えた契約を意味する言葉。この言葉は、CBT時代にも使われていました。

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契約に背いた者は、空と大地から永遠に追放される。

空と大地から追放された存在というと、アビサルが対峙する恐魚やシーボーン、深海教会が思い当たりますが、話が逸れてしまうため今回は放念します。

新約聖書において、イエスが十字架刑に処されたときに天空を覆った暗闇は皆既日食ではないかとする説もあり、総じて重要な局面で描写される自然現象と言えます。

STARSET『INFECTED』のMVでも、皆既日食のようなデザインが採用されています。

Here's a challenge for all mankind
The preacher man is warning of the end times
これは全人類への挑戦状だ
伝道師は終末の時を警告している
『INFECTED』歌詞

本曲が採用されたティザーPV4はレユニオン編完結と言える8章を描いた動画となっており、ロドスは多大な犠牲を払いながらも感染者を救う方舟として、テラの世界を席巻しました。

以上を踏まえて、皆既日食の意味するところはテラ世界におけるターニングポイントであり、同時に引き起こる数々の困難に対して救いの手を差し伸べる方舟の物語、というのが明日方舟というタイトルに込められた意味と捉えることができるでしょうか。

続いて、アークナイツにおけるプリースティスについて確認していきます。


継承されたプリースティスの因子

「アークナイツ」ティザーPV4 2-49 screenshot

Priestessとは女司祭を意味する言葉であり、タロットカードにおいては女教皇(The High Priestess)とも呼ばれています。

日本語への翻訳で「キリスト教以外の」女司祭と注釈がつきますが、これはカトリック教会において女性が司祭以上の職に就くことを認めていないという背景があります。

アークナイツにおいてキリスト教(カトリック)としての要素を色濃く醸し出しているのが天使をモチーフにしたサンクタの住まうラテラーノであり、その対局に位置づけられるのが悪魔をモチーフにしたサルカズが集うカズデルです。

カズデルのモチーフはエルサレムではないかという説もあり、キリスト教の聖地であることを加味すると一見矛盾するようにも見えますが、歴史を紐解いてみると異教にあたるものを”悪魔”や”魔女”として定義していたこともあります。

わざわざ「キリスト教以外の」というニュアンスのある単語が名前として採用しているのは、サルカズ種族との繋がりを示唆するためでしょうか。

キリスト教において邪悪な神格の頂点として位置づけられるのが、人類の敵(archenemy)、魔王サタンです。

タルラ?:
本物だ。コータス、おめでとう。
お前は何かの破片でも、実験体でも、模倣者でもない。
お前は確かにサルカズの君主……人間の敵だ。
『怒号光明』JT8-2 瞠目の先に「黄昏」
汝こそ魔王——この大地の遍く総てを隷属させる者なり
『苦難揺籃』7-18 愛国者の死

サルカズの記憶を継承し魔王と呼ばれるアーミヤには、プリースティスと共通の立ち位置であるような演出が見られます。

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7章でのケルシーの言によると、サルカズの預言は種族全ての記憶が融合したものです。これは、サルカズには記憶を継承する手段が存在することを意味します。

テレジアは出会ってからそれほど年数の経っていないドクターに対して、周囲からも不思議がられるほどに並々ならぬ信頼をおいていました。これは、テレジアに継承されていた記憶や感情の中にプリースティスの思念が一部混ざっていたと仮定すると合点がいきます。

私たちの絆は、時空さえ超えられるって信じてる。
『怒号光明』M8-8 夢からの「覚醒」

そしてテレジアからプリースティスの記憶を継承したアーミヤもまた、同じ理由でドクターに対して全幅の信頼を置いていると考えると、時折アーミヤが周りを驚かせるほどにドクターへ判断を委ねていることにも符号するでしょうか。

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テレジアは、現実世界での常識となっている地動説を知らなかったことから、受け継いだ記憶・感情はあくまで断片的なものでしょうか。

この大地には限りがあって、それは1つの球体の表面を僅かに覆う土でしかないと。
――テレジアの手紙

記憶の一部が継承されていると仮定すると、歴代サルカズ王の面々もプリースティスの感情を引き継いでいるのか、という問題に出くわします。そのため、プリースティスの因子を次ぐ人物がロドスの骨格に触れる、PRTSに接続する、ドクターと接触する、など他の条件が必要になるのかもしれません。

その条件トリガーをケルシーに求めてみます。ケルシーの原型となるキャラクターはアークナイツリリース以前、海猫氏によってデザインされていました。

イラストに「リンクス(линкс)」と記載されていることから、ケルシーのモチーフはオオヤマネコと推測されます。オオヤマネコはアメリカインディアンの文化で「秘密の番人」として知られ、その眼は隠された真実の解明し、透視の能力を持つという伝承があります。

ケルシーの種族はフェリーン(ネコ科)ですが、その寿命の長さやシナリオに秘められたエピソードの数々から、テラに住まう他の住民たちから一線を画した存在性を感じ取ることができます。

pixivアイコンや所在地「エジプト」に表れているように、海猫氏は無類のエジプト好きとして知られていることに着想を得ると、ケルシーには女神バステトとしての要素を見出すこともできるでしょうか。

古代エジプトにおいて、バステトは「王の乳母」、そしてファラオ(王)の守護者として信仰されていました。

ケルシー:私はアーミヤを守る、そして君を守ると約束した。
『怒号光明』M8-8 夢からの「覚醒」

ドクターとアーミヤのサポート役に徹している他、魔王となったアーミヤを守る立ち位置からも、ケルシーにはバステトとしての要素を感じることができます。

8章でドクターの口から発せられたプリースティスの名前を聞いて驚いた様子を見せていることから、少なくともケルシーが何らかの秘密を握っていることは明白です。


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視点を変えて綴りに注目すると、PRiesTeSsと「PRTS」という略称を得ることもできることから、PRTS=プリースティスの人格と捉える向きもあります。

クロージャ:君の構造を人体にたとえて説明するなら、今の君はその人体の中にエンジンを搭載してるようなものなんだよ。
『我が眼に映るまま』最後の賭け

クロージャをして生命があるようだと言わせるPRTSの機構は、プリースティスの一部を取り込んだものでしょうか。自身に関する機密情報には最も強固なセキュリティ処理を施し、おいそれとアクセスできないような仕組みとなっています。

しかし、それでも。

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PRTSが流したプリースティスと思しき女性とドクターの映像は、然るべき時にドクターへ自分を思い出してもらうための忘れ形見でしょうか。

私のこと、忘れちゃだめよ。
『怒号光明』M8-8 夢からの「覚醒」



全ての始まり

※ここからの文体は断定調となりますが、この項目は全て推測として捉えてください。


ドクターが身体を回復させるために入った石棺、『家庭用生理機能修復マシン』。現在の舞台となっているテラ世界の文明より遡ること遥か昔、ドクターは同じようにその機械を起動させたことがあります。

例の冷たい機械にあなたが横たわると、さっきまでハッキリとしていた意識が突然の倦怠感に襲われる。
『怒号光明』M8-8 夢からの「覚醒」


耳を劈くように鳴り響く警報は、当時の”ロドス”が危機的状況に陥っていることを指し示すもの。

かつて、石油に変わる新たなエネルギーとなった「起」通称、源石<originium>を生み出した企業ロドスは、世界から注目の的となっていました。

研究者たちは自らの遺伝情報を特殊な鉱石に組み込み、源石は生物のように自己増殖する形質を有することで、その限られた質量からは想定できないほどのエネルギーを発することが可能です。

「アークナイツ」ロドス PV - YouTube - Google Chrome 2022-03-11 18-35-12

「アークナイツ」ロドス PV

反面、源石が自然界に及ぼす影響は大きく、その負の側面として人類を滅ぼす兵器になり得る重大な欠陥をも持ち合わせていました。

やがて戦争の主要兵器と化した源石を巡り、世界大戦が勃発。

源石研究のパイオニアとして知られていたロドスもやがて、主要軍事施設として目をつけられ、一企業には為す術もなく、制圧されてしまいます。


追手から命からがら逃げ延びたドクターは、同僚であるプリースティスと必死に廊下を駆け巡るも、重症を追ってしまい自らの傷を癒やすための機械へ身体を横たえました。

名残惜しそうに、ドクターの手を握るプリースティス。

……まさか、今度は私が手を放したくないだなんて。
でも、こうしなくちゃいけないの……じゃないと、あなたは死んでしまう。
……あぁ、Dr……そしたら、二度と会えなくなるかもしれないわ。
『怒号光明』M8-8 夢からの「覚醒」

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薄れゆく意識の中でプリースティスの言葉が響き渡りました。

海が煮えたぎり、大気が消えようと、衛星が重力の渦に巻き込まれようと、膨れゆく太陽がその子供たちを呑み込み、全てが静寂に帰そうと……
私たちは再会できるわ。暗闇の中、星の光で彩られた文明の果てで私たちは再会する……きっと。
その日を待つわ。何があってもその日を待ち続ける。だからあなたも待っていて。私のことも、待っていてね。
『怒号光明』M8-8 夢からの「覚醒」

「アークナイツ」ティザーPV4 2-44 screenshot

「アークナイツ」ティザーPV4


激化する世界大戦の中、人類は荒廃していく大地を離れ、やがて宇宙へと進出。

あの星々は私たちの足元に拡がる大地と同じように、空の軌道を進む筏であると。
――テレジアの手紙


長い時を経て、地球内部のマントルが対流し、プレートは移動。それぞれ分かれていた大陸はやがて集合し、かつて人類が預言した「アメイジア大陸」のごとく全ての大地が繋がった超大陸が出現することになりました。

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アークナイツ「TERRA EXPLORATION」


かつての住人たちが見放した大地では動物たちがヒトの遺伝情報を持つ源石の影響を受けながら独自の進化を遂げ、やがてヒトに近しい姿を得ることに。

私たちの身体は最初からこうだった訳ではなくて、歩けるようになるまでは地を這っていたこともあると。
――テレジアの手紙

テラの歴史は、先民(エーシェンツ)と呼ばれる人形生物によって新たなページが刻まれていきます。


起源の石

先程の項目で記述した内容は筆者による、荒唐無稽な妄想に過ぎません。しかし、源石の英名「originium」が起源を示す英語「origin」+塩を作りうる金属・非金属の存在を示す語尾「-ium」から成り立っている点は、一考に値します。


源石が遺伝情報を有しているという点については、源石と長く接する中でアーツに長けたサルカズが記憶を継承する手段を持っているということから着想を得ました。

我は見た 破壊し尽くされし数多の都市を
我は見た 大地を埋め尽くさんとする源石の群れを
我は見た 黒き冠を戴き、千万の魂を記憶と化す汝の姿を
汝こそ魔王——この大地の遍く総てを隷属させる者なり
『苦難揺籃』7-18 愛国者の死

パトリオットが口にしたこれらの言葉は、過去に人類が経験した負の歴史と捉えることはできないでしょうか。

まだ日本版では実装されておらず、ネタバレとなるため詳細は伏せますが、時には禁忌をも犯しながら源石を研究するライン生命に所属していたフィリオプシスの回想秘録には、源石に冒された研究者が過去に存在した人類の歴史を追体験するような描写が存在します。


明日方舟の公式美術設定集には、アークナイツの制作に関わったスタッフへのインタビューが収録されています。アートディレクターの唯さんは、ケルシーが未来を、アーミヤが確定された過去を代表する存在であり、表情や、様々な仕草へ彼女の内面的特徴を盛り込んでいると語りました。

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そして先の項目でアーミヤがプリースティスの記憶を継承している可能性について触れましたが、彼女たちの瞳には源石を象徴するひし形が宿っています。


8章の最後、ドクターの血液は血清のように作用し、アーミヤの症状を緩和することに繋がりました。

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ケルシーは、抜き取ったばかりのあなたの血を腰の器具に入れ、数秒後、青い液体となったそれをアーミヤの首筋に注射した。
『怒号光明』END8-1「終幕」或いは「序章」

仮に、地球上の動物たちがドクターたち研究者の遺伝情報を含んだ源石によってヒト型へと変化したならば、テラ世界の大地に住まう先民たちは全てドクターやプリースティスを起源にしているとも考えることができます。

エクシアは時折ドクターのことを義人と呼びますが、「義人」とは聖書における神の眼から見て正しいことをしている人を指す言葉です。

ノアは義しき人であった。同時代の人々の中で全き人であった。神とともにノアは歩いた。
旧約聖書「創世記」(関根正雄訳 岩波書店 第90刷)

神による大洪水を生き延びたノアは全ての人類の祖先となりましたが、同様にドクターも旧約聖書のノアに相当する人物なのでしょうか。


それでも、前へ進む

過去に何者であろうと、いかに崇高な存在であろうと、チェルノボーグで目覚めたドクターが認識する”自分”は、何も知らない一人の人間に過ぎません。

しかし、己の無知を自覚することは真理を探求する上で根底にあるべき認識であり、人が物事を考えるための第一歩です。

エイヤフィヤトラ:
『大炎風情志』『伝説なき塔』『クルビア司法観察ノート』『征服と同化』……先輩、これ全部、普段から読んでる本なんですか?
『我が眼に映るまま』その全てを忘れず

常に驕らず、多岐に渡る分野へ関心の裾野を広げながら、数多くいるロドスの乗組員一人ひとりに声をかけ交流する姿は、命を任せるに足る人物としてオペレーターたちの眼に映ります。

『我が眼に映るまま』エピソードの一つ「その全てを忘れず」では、ドクターが源石研究者時代に編み出した公式の一つを思い出し、危機的状況を打破する離れ業を見せました。

数字や記号から構成された計算式は、世界を認識する手段の一つです。定義づけられた公式により予測可能となる自然現象はやがて回避可能な事象、ひいては「常識」として広まり、やがて集団的な認識によって世界は書き換えられます。




過去のドクターがどうあれ、今のドクターの眼に映る世界は、現在のロドスとその未来です。

ケルシー:君は記憶を失くした状態で目覚め……戦うこと、犠牲を目の当たりにすることを余儀なくされた。そして、これまで我々は君にあまり選択肢を与えてこなかった……
ドクター。君は一体何のために戦っている? 私の目を見て、答えてくれ。

その瞬間、記憶の奔流があなたを飲み込んだ。チェルノボーグで目覚めてから起きたすべての出来事がありありと目に浮かび、喜びと悲しみが絡み合う……
そうして、一つの答えが、次第にはっきりとあなたの脳内で浮かび上がってきた。それはほぼ無意識にあなたの口から滑り出る――
ケルシー:
ならば、どうか……今口にした答えを忘れないでくれ。
……誰にも理解されなくとも、我々は皆自らの道を見つけられる。
『我が眼に映るまま』行き着く先を恐れず

「アークナイツ」ティザーPV4 2-28 screenshot

「アークナイツ」ティザーPV4





参考リンク


GORIEによるイースターエッグ解説(中文)

筆者の個人ブログにて、上記を日本語で解説しています。


春節に投稿された二次創作動画。ドクターとプリースティスの関係を考察する上で、この動画から多くの着想を得ました。



参考文献


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