□景色
避けがたい出来事に打ちのめされる、挑戦に挫折するなど、「生きがい」を脅かす経験はいつでも誰にでも起こり得る。さらに、なんとかして一刻でも早く立ち上がろうと躍起になるがうまくいかない、新たな困難に襲いかかられる、立ち上がれないことに罪悪感を覚える、ことがある。
こうしたときの「待つ」意味、「待つ」はたらき、を神谷は語る。前に進むのではなく、そこにたたずみ時機を「待つ」。それがもっとも創造的な営み。「待つ」行為を経ることで、私たちは真に自分に必要なものを自分のなかから見出すことへ導かれていく。その導きの光になる苦しみや悲しみ。
□本
「生きがい」は「虚無と暗黒」の世界にあってもなお、火を灯しつづける何か。わたしたちに求められているのは、うろたえることではなく、潜んでいる何かを見る「眼」を自己のなかに開くこと。
自らを包む闇が深ければ深いほど、光を強く感じるようになる、絶望とは闇の経験であると同時に光を見出す経験だったと、英国詩人ジョン・ミルトンはいう。
待つ者もまたその姿によって全身全霊で人生に誠実を尽くしている。人は待つあいだ、全身で迫りくる未来を感じている。一見すると何ら特別なことはしていないように見えるが、待つことは、全身で、どこからかやってくる未来の光を感じ、静かに準備を進めていくことにほかならない。