□景色
日本人論は、日本人に足りない点、悪い点を指摘しそれを正そうという方法をとるのがふつうだが、『武士道』は外国人の日本に対する誤解を解くため日本の美点をあげていく方法をとる。
日本には日本の価値観があり、道徳があり、伝統があり、文化がある。グローバルスタンダードではないけれども、そうでなければならない必然性はどこにもない。いま、多くの人がいやおうなしに押し付けられる欧米流の論理に疑問を感じている。それがなぜなのか理解し、日本人の思考様式というものを自覚するために、この本は読み継がれていく価値と必要がある。
□本
□要約
武士道の徳目の義、勇、智、仁、礼、信に支えられ最上位に位置する忠は、主君への諂いや追従ではない。自らの名誉をかけた行動である。
日本人は、武士道の「勇」の徳により物も言わずに苦痛に耐える忍耐力をつけ、「礼」の徳により相手を思いやり、自らの感情をあらわにしない態度を身につけた。そして両者は統合されストイックな「克己」という気質を生んだ。切腹は克己の極地であり、強い精神力なくしてはなし得ず、武士の身分にふさわしいものとされ「名誉」とされた。
新渡戸は武士道を賞賛しながら、今や武士道は滅びつつあるという認識に立つ。しかし同時に、武士道は滅びた後にもその灰のなかから甦る不死鳥のように、日本の将来を照らすだろうと予言する。