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大事なことは、目には見えない

□景色

「その人はね、花のにおいを吸ったこともないし、星に見とれたこともない。誰も愛したことがなくて、することといったら足し算ばかりだ。そして一日中、きみみたいに、オレはまじめな人間なんだ、まじめなんだ、と繰り返し、得意さではち切れそうになっている。でもそんなのは、ひとじゃない、キノコなんだ!」

もしだれかが、何百万もの星のどれかに咲くただ一輪の花が好きだったら、その人は星空を眺めるだけで、幸せになれるんだ。「僕の花が、どこかにいる」、と思ってね。けれど、もしもヒツジが花を食べてしまったら、その人の目には、突然、星がみんな光らなくなってしまう。

一つの愛が生まれれば、愛するものを包む周りの世界までも輝きだし、心のなかから愛が消え去れば、周りの景色もくすむ。

□本

『100分de名著 サン=テグジュペリ 星の王子さま』
水本弘文 NHK出版 2013年

□要約

「もちろん、ぼくのバラの花も、ただの通りすがりの人が見れば、あなたたちと同じに見えるでしょう。だけど、あの一輪の花だけで、ぼくには、あなたたちみんなよりも大事なんだ。だって、ぼくが水をかけた花なんだから」

交換価値や使用価値は基本「みんなにとって」の価値。関係価値は「私にとって」の価値で、他の人と共有できないことも多い個人的な価値。私たちは関係価値的なところからもものごとを見ていて、そのことで生活を自分らしいものにし、人間の温かみのあるものにしている。

「あんたが時間を使ったから、あんたのバラはそんなに大事な花になったんだよ」

「とても簡単なことなんだ。心で見ないとよく見えない。大事なことは目には見えないってことさ」

人間の価値や幸福を考える上では、何をどれだけ所有するかはそれ程重要ではなく、人やものとどんな関係を結べるかが重要。努力の方向はより多くの所有から、よりよい関係づくりへ移る。ものごとの本当の価値は自分がそれと結ぶ関係の質で決まり、人生の豊かさは所有物の豊かさではなく関係の質の豊かさにある。

「星たちが美しいのは、目に見えない一本の花のせいなんだ……」

人であれものであれ見えないところに大事なものが隠れている。

「きみの星の人たちは、ひとつの庭で五千ものバラを育てているけれど、さがしてるものが見つからないでいる・・・でも、さがしているものは、ただ一本のバラや少しの水のなかに見つかるかもしれない・・・ただ、目には見えないからね。心でさがさないと

実に不思議なことです。・・・ぼくたちの知らないどこかで、ぼくたちの知らない一匹のヒツジが一本のバラの花を食べたか、食べなかったかで、この宇宙にあるものがなにもかも、ちがってくるのです……。

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