俳優の条件

スタニスラフスキーアカデミーの校長レニードアニシモフ先生はスタニスラフスキーの言葉を引用して言います。

『目立ちたい、認められたいと思うのは、まだ乳歯だけの子供の状態。俳優は、エゴイズムという乳歯が抜け落ちていく状態を体験する・・・自己犠牲の精神が出てきた時に初めて俳優になれる。自分のことを忘れれば天才になれる』

私が俳優になりたいと思った理由が実はこういうところにあったのだと気付かされます。
自己犠牲=自分がなくなったとき初めて俳優になれる。

アニシモフ先生は一貫して「ムジャキ、ムジャキ!」と演じる我々に向かって言葉をかけます。
そう、邪気があるうちは人を感動させる演技は出来ないのです。
邪気とは、「すなおでない、ねじけた気持・性質。わるぎ。」  要はエゴですね。

そう、エゴを握りしめているうちは感動させられる演技はできない。

もう一人の自分が、エゴを見つめること。

お金や地位のこと、人間関係のことで苦しんで、怒って、嘆いているエゴの自分を優しく見つめて、見守る自分。 そんなもう一人の自分に自分がなったとき、エゴは柔らかくなっていき、自然と溶けていきます。

俳優はその境地になったとき、自分の過去の経験をもっと味わい深く追体験し、表現できるようになる。
それが感動となって見ているものの気持ちを揺さぶる。

そういうことだと思います。


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