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短編小説『3つのひみつ』

この春、秘密に悩む女の子のおはなしです。年齢はご想像におまかせします!
※この作品は #おうちで読もう に参加しています。朗読して、公開いただけたらうれしいです。

3つのひみつ

作:尾崎 太祐

登場人物 女子学生

春休みの宿題を終わらせながら、きみと電話する。
ふと、きみをからかいたくなった。
「ねえ、『さんみつ』って知ってる?」
きみの声、呆れた返事。
そりゃそうか、最近さんざん見た言葉だ。

じゃあさ、わたしの――と続けそうになって、思わず黙り込む。
わたしの秘密、知ってる?
わたしね、きみに隠してることが3つあるんだ。

ひとつめ。
きみがこの前無くしたっていうペン、わたしが持ってた。
テストの前に、貸してくれたんだったね。
「よく探したの?だらしないなあ」なんて言っちゃったから、
なかなか白状できないままだ。

ふたつめ。
前に渡したアレ、おいしく食べてもらえたのかな。
実はずっと気にしてる。
無難にしておけばよかったかもな。
きみが生チョコ、好きだって言うから。
もらうはずだったお返しと一緒に、感想を聞かせてもらおう。

それから、みっつめ。
最近、どうしてかわからないけど、
きみに会いたくてしかたがないってこと。
前より話す時間が増えたはずなのに、なんでだろうね。

電話の向こうから、わたしに呼びかける、きみの声。
やっぱりこの秘密は、すこし後にとっておこう。
次にきみと会えたとき、真っ先に打ち明けてやる。

こんなことを願うのはきっと、この春だけだ。
春休み、早く終わりますように。

(おしまい)


※掲載している作品は、予告なく改稿することがあります。

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