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【CRAの勉強日記⑵】がんの病理診断

こんにちは。
ナルトとサスケの最後の戦い、NARUTO作中屈指の名シーンのこだわりに感動したTaishiです。

ナルトは最後の力を振り絞って螺旋丸を出しますが、背負っている里のみんなの期待や思いが、いくつもの”手”となって螺旋丸を形作ります。
対するサスケは一人で千鳥を作り、それぞれの歩んできた人生が術に乗り移ってぶつかった、コントラストを表しているシーンだと今までは思っていました。

しかし、サスケの千鳥をよく見てみると、サスケとは別の、もう一本の”手”が千鳥を支えているのです。

「暁」の服の腕先から伸びた手。
里の全員がナルトに味方する中、兄のイタチだけは死んでもなお、裏切り者であるサスケの味方だったのです。
この細かな描写にもこだわりを感じる演出、まさに名シーン。泣ける。

…この記事はナルトについて記載するものではなく、私ががんの知識を勉強して、噛み砕いたものを載せるものです。

前回記事はこちら。

何度も書きますが、がん治療は多岐に渡っており、中には科学的におかしな民間療法等も蔓延っているからこそ、
医療に携わっていない方々ほど、きちんとした知識を学んでいただきたい
と思っています。

このシリーズが、その一助になればと思います。
ではでは、書き進めていきます。

◆病理医

【病理医とは】
がん診断に極めて重要な役割、それが病理医です。
患者の臓器や細胞を診断し、病気の原因を究明して治療法を判断します。
がんはもちろん、感染症の菌やウイルスを特定するのも病理医の仕事です。

【病理診断科】
2008年に国から認可され、保険診療の適応、病理科の開業、病理外来が可能となりました。

【病理医の現状】
病理医になるには専門試験があるのですが、現在、僅か2500人ほどしか認定病理専門医はいません。
2500人で全国8000ほどの病院をカバーしているのです。
→圧倒的な人手不足にも関わらず、欠かすことのできない超重要なポジションが病理医です。

◆病理診断の流れ

以下の手順で病理診断がなされます。

①診察:患者様が主治医にかかります。
②診療情報提供:主治医が①で得た情報を病理医に提供します。また、患者様は生検・手術・細胞診により病理科に情報を提供します。
③標本作成:病理科は②で得た検体を標本として作成し、病理医に提供します。
④診断・細胞診スクリーニング:病理医は提供された標本と情報より、診断・細胞診を行います。
⑤組織・細胞診断:④で決定した診断を主治医に提供します。
⑥病態・治療方針説明:⑤を元に、主治医は治療方針を決定し、病態と合わせて患者様に伝えます。

◆病理組織標本の作り方

【生検・手術検体の種類】
上記②の検体は、それぞれ以下の操作より採取されます。

・試験切除、掻把:皮膚、リンパ節、軟部・骨、筋肉、神経、乳腺、子宮頸部・内膜、子宮内容
・内視鏡:消化管(食道、胃、十二指腸、小腸、大腸)、気管支・肺、膀胱、関節
・腹腔鏡:肝臓、腹腔、骨盤臓器
・胸腔鏡:肺、縦隔組織
・CT/エコー下針生検:軟部、乳腺、縦隔、心筋、肺、肝臓、腎臓、前立腺

【病理標本作成の流れ】
上記③の病理標本は、以下の手順にて作成されます。

①ホルマリン固定:生体組織(水分80%、蛋白質12%、脂質8%)の、主として蛋白質に1次変性措置を施すことを「固定」といいます。
②組織切り出し
③カセット収納(脱水・脱脂・パラフィン浸透)
④ブロック完成
⑤薄切
⑥組織(永久)標本完成

【細胞診断】
細胞診断は、迅速・簡便にできるため、幅広い応用が可能です。
採取した細胞の診断は、大きく分けて2つの手順があります。

①剥離ないし穿刺・吸引で採取した細胞検体を、ガラスに塗抹→湿固定→PAP染色orギムザ染色を行い診断します。
②液状の検体(腹水、胸水など)は採取後、遠心分離→スライド上塗抹し、すぐに固定→染色を行います。

【染色】
病理組織診断は、一般的にHE染色と呼ばれる方法を用います。

HE染色=Hematoxylin-Eosin染色は核を藍色に染めるヘマトキシリンと細胞質を赤色に染めるエオジンで重染色する方法です。
・細胞及び組織構造の全体像を把握する為に行います。

他にも、目的によってPAS染色、EVG染色、アザン染色、銀染色、PATH染色
鉄染色、アルシアン青染色などが用いられます。
様々な技を駆使して、見やすくしているんですね。

【免疫染色】
免疫染色は組織および細胞の抗原を検出する組織化学検査です。
抗原抗体反応を可視化するために特異抗原と標識物質の免疫複合体を形成させ発色させます。(分かりやすく言うと、免疫の力を使って調べたいものを識別するのです)
以下の手順の際に用いられます。

✓ 癌と肉腫の鑑別
✓ リンパ腫の確定診断(ex:CD20→悪性リンパ腫)
✓ 乳がん、肺がんなどの特定の分子標的薬の治療適応

◆病理診断で分かること

【正常/良性腫瘍/悪性腫瘍の鑑別】
病理診断では、腫瘍の有無だけではなく、発育形式や速度、転移や異型性から、良性か悪性かも判別することができます。

【癌と肉腫の鑑別】
実質(腫瘍本体)と間質(他の血管や結合組織)が見分けられるものを「上皮性腫瘍=癌」、見分けられないものを「非上皮性腫瘍=肉腫」として鑑別します。

【分化度の鑑別】
細胞の分化度と特徴を見ることで、良性腫瘍と悪性腫瘍を見分けることができます。

・分化度が高い、発生した母細胞に類似→良性腫瘍
・分化度が高い、母細胞と異なる→悪性度の低い悪性腫瘍
・分化度が低い→悪性度の高い悪性腫瘍

※分化度:細胞の成熟度合いのこと。未熟=分化度の低い細胞は、活発に増殖する傾向があります。

【組織学的特徴】
細胞は、以下の3段階を経てがんになります。

○イニシエーション(ex:異型性):正常細胞が損傷を受け、修復過程中に突然変異を起こした状態です。この段階からがん化まで20-25年以上かかると言われています。
○プロモーション(ex:上皮内がん):前がん病変をがんの方向に導く段階です。
○プログレッション(ex:扁平上皮がん):初期がんが自律的に増殖する段階で、DNAが不安定性を増して遺伝子損傷が進行し、悪性化して進行がんとなります。

◆分子標的治療と病理診断

【分子標的治療とは】
がん細胞は、正常細胞と違って際限なく増殖しますが、それに必要な特有の因子があります。
そのがん細胞特有の因子を狙い撃ちする治療を「分子標的治療」といいます。

【分子標的治療薬の一例】
上皮成長因子受容体=EGFRを標的とした薬剤(EGFRチロシンキナーゼ阻害剤)が、イレッサ(一般名:ゲフィチニブ)です。
2002年にアストラゼネカより発売された、非小細胞肺がんの治療薬です。

イレッサが使われ始めた当初、効果の出方に差があることが判明しました。
「東洋人、女性、腺がん、非喫煙者」において奏功する率が高く、研究を進めたところ、この群にはEGFR遺伝子の変異があることが発見されました。

現在、肺がん治療開始前に生検や手術で採取したがんの組織を使って、EGFR遺伝子変異の有無を調べることで、
適切な患者様にイレッサが用いられています。


いかがでしたでしょうか。
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