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ものを「作る」と「売る」話

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地場産業・伝統工芸・量産品の「作る」と「売る」に関する記事をまとめています。
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#職人

ひな人形の職人が作る、リンゴのオブジェ。3つの伝統工芸がコラボした、揺れる縁起物

明日、人形のような林檎「キメコミアップル」の先行販売を開始します。 ひな人形などを手掛ける江戸木目込人形の職人さんが製作。素材には西陣織・金沢箔を用いており、3つの伝統工芸がコラボしました。起き上がりこぼしとして、揺れる縁起物を楽しんでもらえると嬉しいです。 端午の節句にちなんで、明日5月5日に先行発売します。おうち時間に揺らして癒されたり、飾ってくれたらと思います。 3つの特徴 ①節句人形を手掛ける、東京の伝統工芸品「江戸木目込人形」の職人が作る。 ②素材には西陣織・

サークルを立ち上げます。「これからのモノづくりを考える部」の内容について

皆さま、初めまして。 プロダクトデザイナーの三島と申します。日本全国を飛び回り、伝統工芸や地場産業を活かすモノづくりをしています。 noteでは、ものづくりの「作る」と「売る」についての記事を書いてきました。今までは自分の経験の話や考えを書いてきましたが、これからは皆さんと一緒に考えたり、実際に作っていくこともやりたいとも思います。 そのために、今回サークルを立ち上げました。 「これからのモノづくりを考える部」 コンセプト モノを「作る」「売る」「使う」を考える。一

東日本大震災から9年が経った今日、人を守るものを作るという思いから、光る組紐が生まれました。

3月11日。 今から9年前の今日、東日本大震災が起こりました。 この9年間に様々なことが起こり、時代も大きく変わろうとしています。 その中で忘れてはいけないこと、今できることがあります。 当時19歳だった自分はデザイナーとなり、ものづくりに関わっています。 いま、その自分ができることは、防災のためのものづくりをすること。 9年が経った今日、人を守るものを作るという思いから、 光る組紐を生み出しました。 「蛍組紐」 創業130年の組紐工房 龍工房が手掛けた、 防災にも

創業130年の組紐工房が手掛けた、防災にも役立つ、光る組紐ブレスレット。

明日、3月11日という日に合わせて、 組紐の先行販売(クラウドファンディング)を開始します。 創業130年の組紐工房 龍工房が手掛け、 プロダクトデザイナーであり防災士でもある三島大世が考えた、 光る組紐ブレスレット「蛍組紐」 3つの特徴 ①糸から紐を組む、日本古来の伝統技術である組紐を身に付けられる。 ②熟練の組み技術で、蓄光撚糸を組んだ組紐は、暗所で蛍のように光る。 ③世界的なヒット映画「君の名は。」の組紐を監修し、某ワールドカップのメダルの紐も手掛けた龍工房。 リ

職人の世界は分業制

職人の世界は基本的には分業制で、製品として完成するまでに多くの工程に分かれており、その一つ一つにその専門の職人が存在しています。つまり、一人で完結する仕事ではなく、協業して成り立っていると言えます。 例えば、陶磁器。ひとつの焼き物が完成するまでに、陶土屋、型屋、生地屋、窯元など非常に多くの職人が関わっています。 なぜ職人は分業制になっているのか?というとそれぞれの工程が、非常に高い専門性を必要とするので、1人前になるのに10年かかるとも言われています。つまり、分業せざるを

自分の仕事に誇りを持つのが大切

ある絵付けの職人さんは焼き物の工程で絵付けが一番大事だと言い、ある生地の職人さんは形作りが一番大事だと言っているのを聞いて、職人さん達は自分の仕事に誇りをもってるからこそ、素晴らしい仕事ができるのだと感じました。 職人の仕事は分業制が一般的であり、一つ一つの工程が無くてならないものであり、全ての工程が大切だと言えます。ただ個人だけでは完成せず、実感が湧きにくいという話も聞きます。 同様にデザイナーの仕事も、企画やデザインを請け負っていますが、製造や販売はクライアント側の仕

自分が本当に欲しいモノは、現地で職人さんから直接買う。

自分が本当に欲しいモノは、なるべく現地で職人やメーカーから直接買うようにしています。特に工芸品に関しては、その産地で買うようにしています。これにはいくつか理由があるのでご紹介します。 ①好きなものを選ぶことができる。職人が手作業で作ったものは、質はどれも高く同じなるように作られていますが、一点一点違いがあり、個性があります。 例えば、木製品だと一つずつ木目も違いますし、陶磁器でいえば窯の状態や釉薬の掛け具合、土の収縮率で少しづつ違いがわかります。漆器の塗りも刷毛や生地によ

伝統工芸を現代の暮らしに取り入れる方法④ 企業とコラボする。

今までに3つの手法について話してきましたが、今回は企業とコラボして、伝統工芸を現代の暮らしに取り入れる方法をご紹介します。 伝統工芸を現代の暮らしに取り入れる方法 ① 伝統工芸の技術を転用する。 ② 伝統技術と最新技術を組み合わせる。 ③ アニメとコラボする。 ④ 企業とコラボする。 企業と伝統工芸がコラボすると聞くと、ノベルティとして伝統工芸を用いることがまず浮かびますが、その場合はただ既製品に名前を入れただけというパターンが非常に多く、コラボとは言えません。 両方の

作りたいものではなく、使いたいものを作る。

技術ありきで作りたいものを作るシーズ視点・プロダクトアウトの考えで作ったプロダクトは、ものとして使えるものになることは少ないです。結果、売れないのでクライアントもデザイナーも商社も困り、技術が広まることもありません。 そうならないためにも、その技術を活かして、まずは自分たちが使いたいものを作ることをしましょう。自分たちが使いたいものであれば、同じ価値観を持った人、同じ問題を抱えている人は欲しくなり、買います。そうすると、全員に利益があり、結果技術が広まります。 前回お話し

デザイナーの実績作りのために商品開発をするのはもうやめよう

先週、デザイナーの実績作りのために商品開発をするのはやめようという話を職人さんと話していました。 なぜデザイナーが職人さんやメーカーにアイデアを持ち込むのかというと、大きく2つのパターンがあります。 ①仕事にも実績にもなるので、作ってほしい。(職人さんがお金を払う。) 販売や開発費用は職人さん持ちになるので、負担がかなり大きいです。もちろん販売などもお手伝いする前提のデザイナーもいますが、基本にはクライアントワークと同じになります。 しかし、クライアントワークにとって大

デザイナー、職人、リモートワーク

今現在、コロナウイルスの影響によってリモートワークが推奨されています。noteでもリモートオフィスというお題が始まったので、この機会にフリーランスのデザイナーのリモートワークについて話していきます。 そもそもフリーランスはリモートワークですらない。リモートワークは会社以外での勤務、主に在宅勤務のことを指します。つまり、フリーランスに勤め先はないので、どこで仕事をしようが自由です。 今現在は借りている事務所(コワーク)があるので、そこに通って基本的には作業や仕事をしている感

伝統工芸を現代の暮らしに取り入れる方法③ アニメとコラボする。

マンガ好きなプロダクトデザイナーとしても活動している自分ですが、伝統工芸とアニメや漫画、ゲームをコラボする流れをよく見かけます。 アニメと伝統工芸という日本が誇れる2つの文化ですが、共通点も多くあります。例えば、細部にまでこだわって良い物をつくるという「ものづくり」という点、時代に合わせて「進化」してきたという点で共通しています。 伝統工芸は時代の生活や流行、使い手に合わせて数百年と技術を進化させてきました。同様に、アニメも生活や流行、視聴者に合わせて多種多様なスタイルに

伝統工芸の技術を転用する実例

前々回の記事「伝統工芸の技術を転用する。」の実例を載せるべきだったと、今思ったので書きます。 技術を転用するという手法は、デザイナーが携わっていることが多いです。デザインアプローチとしてよく使われており、ある技術を他分野に転用し、新しい価値を創造する手法です。 それでは、紹介していきます。 ①effe(眼鏡→防災笛) 鯖江眼鏡 現在、福井県は「福井市」や「鯖江市」を中心に日本製めがねフレームの約95%を生産し、世界最高品質のめがねを全国・世界へ届け続けています。 19

伝統工芸を現代の暮らしに取り入れる方法② 伝統技術と最新技術を組み合わせる。

前回は、①伝統技術をそのまま他分野に転用する方法をお伝えしました。 今回は、伝統技術と最新技術を組み合わせて、新しい価値を生み出し、現代の形に取り入れる方法を紹介します。 デジタル全盛期時代の現代では、商品開発分野においても、3Dプリンター、レーザーカッター、切削機、IoTなどもデジタルツールが一般的な道具となっています。 プロダクトデザインの業界でも、設計に用いる3DCADや、試作や検証をするための3Dプリンターなどのテクノロジーが広く使われています。これらを利用する