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オペラ座の怪人を比較する〈ACT1〉

劇団四季の『オペラ座の怪人』はすごいらしい。そんなふれこみのミュージカルを僕は先日見てきた。そしてそのすごさに見事にハマったのであった。
それから映画を観て、原作の小説を読んだ。原作を読むことで、ミュージカルでは語られない部分の気付きがあったし、それぞれ設定や展開が違う部分があって面白かった。今回は、整理も兼ねて、舞台と映画と小説をシーンごとに比較してみようと思う。少し書き出したらあまりに長くなりそうな兆しがみえたので、前半と後半で記事を分けることにする。よっぽどの物好きだけ、ちゃんと読んで頂ければ嬉しい。

・劇団四季ミュージカル『オペラ座の怪人』(2023年1月9日公演@大阪)
・ミュージカル映画『オペラ座の怪人』(2004年)
・長島良三訳『オペラ座の怪人』(2000年,角川文庫)
上記3つを舞台版ミュージカルの進行に沿って比較していきます。【舞台】【映画】【小説】と記載する。また、小説は聞き取り調査の報告のような構成になっている。時系列が舞台と大きく違うので、舞台の進行に合わせて書きます。

【ネタバレ注意!】以下、詳しい内容につき、壮大なネタバレ大会です。

ACT1

Scene 0 Opening

・1919年のパリ。オークションは旧オペラ座で行われる。
【舞台】装飾が幕で隠されている。
【映画】柱や装飾がボロボロの描写あり。映像は白黒。
【小説】本来、オークションシーンは無い。一連の事件を調査した"物語の著者"の序文から始まる。

・張子のオルゴール
【舞台】黒い女性の25フランという声。シャニュイ子爵が30フランで落札。
【映画】女性はマダム・ジリー、シャニュイ子爵は年老いたラウルであった。(マダム・ジリーとあるが、ラウルの老いた風貌とその他の関係を考慮すると、この場合のマダム・ジリーは、メグ・ジリーのことだと思われる)
【小説】該当シーンは無い。

・シャンデリア
【舞台】シャンデリアが上がり、舞台の装飾等の幕が引き上げられ、姿を現す。「昔の亡霊も逃げ出すことでしょう」という台詞からも、入札会場が未来の出来事であることが分かる。
【映像】シャンデリアが灯り、映像に色がついていく。事件当時の姿を現す。
【小説】該当シーンは無い。

Scene 1 REHEARSALS FOR "HANNIBAL" BY CHALUMEAU

・1870年のパリ、オペラ座『ハンニバル』のリハーサル中、前支配人が新支配人を連れ、団員に紹介しに来る。
【舞台】前支配人のムッシュ・レフェーヴが新支配人であるリチャード・フェルマンとギルズ・アンドレの二人を連れて来る。マダム・ジリーを始め、メグやクリスティーヌの紹介をする。また、新支配人を団員に紹介する。レフェーヴは、引退の理由は明確にしないものの「呪われた商売から足を洗えるのは幸い」と話す。
【映画】前支配人のムッシュ・ルフェーブルが新支配人であるリチャード・フィルマンとギルズ・アンドレの二人を連れて来る。「また、新たな後援者としてラウルを紹介する。この時点でクリスティーヌはラウルに気付き、メグに「幼いながら恋人同士だった。私をのことを"ロッテ"と」と耳打ちする。マダム・ジリーはルフェーブルから案内役を引き継ぎ、メグやクリスティーヌの紹介を行う。ルフェーブルは引退する理由を聞かれ「健康のため」と答える。
【小説】紹介のシーンは無し。前支配人はドビエンヌとポリニーの2人、新支配人もモンシャルマンとリシャールの2人である。マダム・ジリーは指導者ではなく、5番ボックス席の案内係。ラウルは兄フィリップと共に、支援者としてオペラ座に通っている。クリスティーヌとすれ違うこともあるものの、社会的身分の違いのために、意識しないようにしている。

・リハ中に背景幕が落ち、カルロッタが被害に合う。
【舞台】異常な事態が続くことに腹を立て、舞台を降板してしまう。
【映画】3年異常事態が続いているが、ルフェーブルが何も手を打たなかったことを責め「対策を打つまで歌わない」と降板してしまう。
【小説】カルロッタは休養中のために、クリスティーヌが代役を務める。

・スィング・オブ・ミー
【舞台】カルロッタの代役を、メグがクリスティーヌを推薦。マダム・ジリーも後押しする。本番を迎え、見事に代役を務める。ラウルは「ブラヴォー!」と拍手を送る。
【映画】カルロッタの代役を、マダム・ジリーが推薦。本番を迎え、見事に代役を務める。ラウルは「ブラヴァー!」と拍手を送る。
【小説】代役を立派に務めたこと、単に出来事として述べられる。ラウルの兄フィリップは「ブラヴォー!」と拍手を送る(※単純に舞台を褒めている)。クリスティーヌの歌唱は今までに無い素晴らしさであったため、ラウルは一目惚れのように気持ちが昂り、楽屋へ向かう。ところが、ジョゼフ・ビュケ道具方副主任が舞台地下で首吊りの状態で見つかり、舞台裏ではメグを始めバレリーナたちがパニックになっていた。

Scene 2 AFTER THE GALA

・エンジェル・オブ・ミュージック
【舞台】メグやバレリーナがクリティーヌを取り囲み賞賛する。その後、楽屋に移動。
【映像】メグがクリスティーヌを見つけ賞賛する。その後、クリスティーヌは楽屋でマダム・ジリーと2人になる。「本当によくやったわ。"彼"もご満悦よ」と、マダム・ジリーが拾った黒いリボンのついた薔薇を渡される。
【小説】具合を悪くして、楽屋に戻る。

Scene 3 CHRISTINE 'S DRESSING ROOM

・ラウルとクリスティーヌの再会
【舞台】ラウルが楽屋を訪れ、クリスティーヌと2人きりになる。ラウルはディナーに誘って出ていく。天使(怪人)の声に導きを請う。怪人が鏡越しに姿を現す。鏡が開き、クリスティーヌは誘われていく。馬車を手配してラウルは戻り、謎(怪人)の声を聴く。しかし、楽屋は施錠されており入れない。なんとか楽屋に入った時には、クリスティーヌの姿は無かった。
【映像】ラウルが訪れ、クリスティーヌと2人きりになる。クリスティーヌはラウルに話す。「父が言ったの。『天国に着いたら、お前に音楽の天使を送る』と。父が亡くなって音楽の天使が来たの」ラウルはあまり気に留めず、ディナーに誘って出ていく。楽屋の鍵を閉める怪人。その様子を見ているマダム・ジリー。部屋で一人になったマダム・ジリーは、天使(怪人)の声を聴き、導きを請う。怪人が鏡越しに姿を現す。馬車を手配してラウルは戻ってくるが、扉の施錠によって入れなかった。クリスティーヌは鏡の奥の隠し通路を抜け、怪人に手を引かれ、ついていく。
【小説】ラウルは座付きの医者と同じタイミングで楽屋に入る。クリスティーヌはラウルに対して「どなた?」と言う。また、一人になりたいと告げ、医者やラウルを外に出してしまう。一人になったクリスティーヌに、怪人は声を掛ける。一方ラウルは、クリスティーヌが他の人に怪しまれずラウルと2人きりになるために、わざと面識が無いフリをしたのだと思い、楽屋に戻って中の様子を伺う。すると中から男(怪人)とクリスティーヌの声がする。「クリスティーヌ、私を愛さなくてはならない!」「どうしてそんなことをおっしゃるの?私はあなたのためだけに歌っているのに!」これを立ち聞きしたラウルはショックを受ける。因みに、時系列としてはこの後『ファウスト』の上演に飛ぶ。その上演で起きる騒ぎの中で、クリスティーヌは怪人に連れられて行く。

※小説において、クリスティーヌの父は、世の中の音楽の天才について、次の趣旨の話をクリスティーヌにしている。「偉大な音楽家、演奏家は皆どこかで〈音楽の天使〉の訪問を受けている。私が天国に行ったら、クリスティーヌに〈天使〉をつかわすよ」このことから、怪人と出会うまで、クリスティーヌは「父が送ってくれた音楽の天使」の存在を妄信していることが分かる。また、ラウルとの幼少期の話は以前に〈天使〉にしている。嫉妬した〈天使〉は一度いなくなってしまったことがあり、〈天使〉の声が二度と聴けなくなることを恐れてラウルとの接触を避けていた。
クリスティーヌの父は子供たちに北方のおとぎ話を言って聞かせていた。クリスティーヌとラウルも同じように聞かせていた。舞台や映画で、クリスティーヌの音楽の天使の話を、ラウルがあまり取り合わなかったのはそのためだと思われる。思い出の「おとぎ話」をしていると思ったのである。

Scene 4 THE LABYRINTH UNDERGROUND
Scene 5 BEYOND THE LAKE THE NEXT MORNING

【舞台】クリスティーヌは小舟で連れられて行く。音楽の天使は怪人だったことを知る。怪人はクリスティーヌへの愛を伝える。怪人の魅力的な声に、クリスティーヌは夢心地になるが、ベールをかけウェディングドレスを着たクリスティーヌの姿の人形を見せられ、クリスティーヌは気絶する。
【映像】馬に乗り、小舟に乗り、怪人の住処へ。音楽の天使は怪人だったことを知るが、音楽の天使に出会えたことに魅せられ恍惚とする。その後、クリスティーヌは自分の姿の人形を見て気を失う。
【小説】※『ファントム』上演後
シャンデリア落下の騒ぎで落ち着こうとしたクリスティーヌは楽屋に戻る。気付いたら暗い通路におり、何者か(怪人)に掴まれ、口を塞ぐ手は死臭がした。そしてクリスティーヌは気を失う。怪人の膝の上で目が覚めた後、馬と小舟で住処へ連れられて行く。到着すると、怪人は「エリック」と名乗る。そして自分の罪を認め、クリスティーヌに許しを請う。「自由にしないと軽蔑以外の何の感情も抱かない」というクリスティーヌ。怪人はあっさり自由にするという。

※小説では怪事件として、セザールという馬が消えたエピソードが出てくる。映画、小説では、その馬は怪人によって盗まれた後に、地下の怪人の住処への移動用として出てくる。

Scene 5 BEYOND THE LAKE THE NEXT MORNING

【舞台】小舟はクッションが沢山あり、演出の都合か、ベッドを兼ねている。気を失ったクリスティーヌはベッドに運ばれる。
【映画】怪人によってベッドに運ばれる。もぬけの殻になったクリスティーヌの楽屋にメグがやってくる。半開きの鏡を見つけ、隠し通路を少し進むが、途中でマダム・ジリーに連れ戻される。
【小説】怪人の声はクリスティーヌがずっと親しんできた〈天使の声〉に違いはない。たとえ怪人であってもそれは魅力的であり、怪人の歌声を聞きながら寝てしまう。

Scene 6 THE NEXT MORNING

【舞台】クリスティーヌが目を覚ますと、怪人は作曲中であった。クリスティーヌは好奇心のまま怪人の仮面を外してしまう。怪人を哀れに思ったクリスティーヌは仮面を返す。その後、怪人はクリスティーヌをオペラ座に返す。
【映画】流れは舞台と同じ。
【小説】クリスティーヌが目を覚ますと、怪人は彼女用のシーツやタオル、着替えを買いに出ていた。怪人が戻ると、今後の詳しい話をする。昨晩は自由にすると言ったが、もう少し一緒にいてもらう。残り5日間。何故なら、それだけの時間があればクリスティーヌは怪人を恐れなくなり、時々また可哀想なエリックに会いに来てくれるだろうから、と泣いて言う。パイプオルガンの譜面台には「勝ち誇るドン・ジョヴァンニ」という楽譜があった。20年かけて今もなお作曲中であり、この楽譜を持って棺に入り永眠するという。2人はオペラを歌う。クリスティーヌは怪人の魅力に惹きつけられ、怪人の仮面を取ってしまう。彼の顔は「醜さの化身」であり、永遠に忘れられない、二度と見たくない姿であった。怪人は、この姿を見てしまったら彼女が戻ってきてくれなくなると思った。

※怪人(エリック)の境遇は非常に不憫である。生みの母親は二度と顔を見なくてすむよう、最初の仮面を与えている。そして父親は一度も顔を見なかった。

Scene 7 BACKSTAGE

【舞台】大道具係のブケーが怪人の噂をしてバレリーナたちを怖がらせている。マダム・ジリーが止める。
【映画】大道具係のブケーが怪人の噂をしてバレリーナたちを怖がらせている。マダム・ジリーが止める。
【小説】このシーンにあたる描写は無い。ただ、ジョゼフ・ビュケは怪人の隠し通路に気付いて探る途中に拷問部屋と呼ばれる罠にハマってしまう。その部屋は過酷な幻影を見せ、吊るされている首吊り縄に追い込ませるものであった。

Scene 8 THE MANAGERS' OFFICE

【舞台】両支配人とラウル、カルロッタ、マダム・ジリーに怪人から手紙が届く。両支配人には劇場経営等の内容、ラウルにはクリスティーヌの安否と彼女に近づくなという命令、カルロッタへの手紙には、『イル・ムート』でカルロッタの代わりにクリスティーヌに伯爵夫人を演じさせよという内容、マダム・ジリーもほぼ同様の内容であった。カルロッタはオペラ座をやめると言い出すが、両支配人はカルロッタの機嫌を取るため主演を任せ、クリスティーヌには台詞のない役をやらせることをにする。
【映画】流れは舞台と同じ
【小説】両支配人に怪人から手紙が届く『ファウスト』上演に際し、クリスティーヌに〈マルガレーテ〉の役をさせること、5番ボックス席を空けておくこと等、要求が書かれていた。ラシュナル厩舎主任より、セザールという馬が一頭消えたことも聞く。カルロッタの元にも怪人から手紙が届くが、クリスティーヌが自分を陥れようとしていると思い込み、カルロッタは気管支炎気味だったことも忘れ、奮起する。この時点でクリスティーヌは失踪していないので、ラウルに手紙は届かない。

Scene 9 A PERFORMANCE OF 'IL MUTO' BY ALBRIZZI0

【舞台】『イルムート』本番。カルロッタは伯爵夫人を演じる。「5番ボックス席は空けておけと言っただろう」という声が響く。仕切り直してカルロッタが歌い続けようとするが、声がカエルのようになってしまう。急遽舞台は停止し、両支配人はクリスティーヌを代役に立てて公演を続けると発表する。舞台はバタバタとバレエで繋がれるが、怪人によって大道具係のブケーが首吊り状態で舞台上現れ、会場は混乱に陥る。
【映画】『イルムート』本番。カルロッタは伯爵夫人を演じる。「5番ボックス席は空けておけと言っただろう」という声が響く。仕切り直してカルロッタが歌い続けようとする。しかし、喉ケアするスプレーが怪人によって細工されており、使用したカルロッタは声がカエルのようになって出なくなってしまう。急遽舞台は停止し、両支配人はクリスティーヌを代役に立てて公演を続けると発表する。怪人は追いかけて来た大道具係のブケーを首吊りにし舞台上にぶら下げ、会場は更に混乱に陥る。
【小説】『ファウスト』本番では、カルロッタの手回しによりカルロッタの客で溢れ、両支配人は5番ボックス席で見ることにした。ところが本番中、一度も音を外したことがないカルロッタが蛙のように醜い声で音を外してしまった。「なにか妖術が絡んでいそうだ。どうもあのヒキガエルはどうもきな臭かった。」すると客席の上のシャンデリアが一階客席に落下。大勢の負傷者と一人の死者が出てしまう。この一人の死者は両支配人がクビにしようとしていた案内係のマダム・ジリーの後釜になる人であった。

Scene 10 THE ROOF OF THE OPERA HOUSE

【舞台】舞台の混乱の中、クリスティーヌとラウルは屋根の上に逃げる。クリスティーヌは怪人恐れと哀れみの両方を持つことをラウルに明かす。ラウルはクリスティーヌを愛し守ると誓い、クリスティーヌはラウルの愛に応える。しかし、物陰で二人を目撃していた怪人は悲しみに打ちひしがれ、2人への復讐を誓う。シーンの最後、場面は舞台に戻り、カルロッタ達がいる舞台上にシャンデリアが落下する。
【映画】舞台の混乱の中、クリスティーヌとラウルは屋根の上に逃げる。クリスティーヌは怪人恐れと哀れみの両方を持つことをラウルに明かす。ラウルはクリスティーヌを愛し守ると誓い、クリスティーヌはラウルの愛に応える。しかし、物陰で二人を目撃していた怪人は悲しみに打ちひしがれ、2人への復讐を誓う。
【小説】※仮面舞踏会後
ラウルはオペラ座でクリスティーヌに会う。床下は怪人の得意の仕掛けでいっぱいなので、避けるために上へ上へと行く。そうして二人は屋根の上へと出る。クリスティーヌはラウルに話す。2週間の失踪の間、怪人の住処にいたこと。仮面の下を見てしまったクリスティーヌは戻って来なくなるはずだからと捕らえられたものの、クリスティーヌは必ず戻ることを証明する為に仮面舞踏会でラウルに会い、そして約束通り戻ったということであった。2人は再度愛を確認しキスをする。しかし、怪人がその様子を伺っていた。

※オペラ座のシャンデリアが落ちるタイミングが作品によって異なる。ご述するが、映画では『ドンファンの勝利』を上演した際に落とされ、劇場は全焼、ボロボロのままオークション会場の日に繋がるようである。


以上が1幕の比較である。ミュージカルでは怪人の偏愛が目立つ印象があると思う。ただ小説から読み取れるのは、怪人が非常に切ない境遇を背負ってきた人間であり、同情の余地を感じさせてしまうほどであるということである。クリスティーヌに対し跪いて罪を悔いたり、彼なりの献身を見せたりする滑稽で哀れな姿。親からも愛されず、(小説で出てくるが)度々命を狙われ、人を信じることも出来ず、愛に触れたことが無いのである。クリスティーヌにとっての最大の魅力は彼が〈音楽の天使〉であるということである。それは最愛の父の記憶にも繋がっていた。事件としてみれば「怪奇」であるが、いろんな意味での愛情の物語なのかもしれない。

※小説版をミュージカルの進行に合わせて書くのは難しい。1幕に該当しそうな部分のみ触れているので、説明不足かもしれない。また、小説とミュージカルで発音の表記揺れがあるが、そのまま記載している。(例:ジョゼフ・ビュケ/ジョセフ・ブケー)

ACT2は現在執筆中。。


参考

【小説に出てくる主な登場人物等】
クリスティーヌ・ダーエ:バレリーナ。
メグ・ジリー:バレリーナ。マダム・ジリーの長女。
マダム・ジリー:オペラ座5番ボックス席の案内係。メグの母親。
シャニー伯爵(フィリップ・ド・シャニー):貴族。当時41歳。ラウルの20歳年上の兄。他に妹2人がいる。
ラウル(ラウル・ド・シャニー):品行方正過ぎるため、兄を見習わさせるよう、兄自身に連れまわされていた。
カルロッタ:オペラ座の看板女優。ライバルになり得るクリスティーヌを陥れようと有力者にチャンスを与えないよう圧力をかけていた。
怪人(エリック):人間なのだが、顔は骸骨のようで、皮膚は死肉で出来ており目を逸らしたくなるほど醜い姿。怪人は元々建築士であった。オペラ座が建てられた頃には現場作業請負人になっていたが、関わっていた故に、隠し通路を準備することができた。
ペルシャ人(ダロガ):???
ソレリ:プリマ・バレリーナ。ラウルの兄フィリップと愛人関係にある。
ジャンム・セシル:若いバレリーナ
ジョゼフ・ビュケ(ジョセフ・ブケー):道具方副主任。大道具係。首吊りで発見される。
パパン:消防副主任
ガブリエル:声楽主任
ミフロワ警視:クリスティーヌが最初に行方不明になった際に担当
レミー秘書:支配人の秘書
メルシエ秘書:支配人の秘書
ラシュナル厩舎主任:馬が消えた時に支配人に訴えに来る。

【小説のみのシーン】
・ドビエンヌ・ポリニー両支配人の退任夕食会。怪人はテーブルの端っこに座っているが、あまりにも亡霊的な風貌の為に、誰も関わろうとしない。大道具係のビュケの死を聞くと、旧支配人は新支配人の2人に退職の理由を伝える。オペラ座には怪人がおり、指示に逆らうたびに悲惨な事故や不幸が起きてきた。5番ボックス席を怪人用とし、毎月2万フランを支払うこと。しかし、新支配人は真剣に取り合わず、怪人からの手紙もしばらくは旧支配人の悪戯だと思っていた。

・5番ボックス席に客を入れたら警察沙汰に
客が周りのひんしゅくを買うような行動をしたため、警察が注意した。客は「このボックス席は埋まっている」との声がするという。警察が確かめてみたが、人の姿は無かった。翌日、両支配人によって聞き取り調査が行われた。事情を聴くために案内係のマダム・ジリーが呼び出される。

・マダム・ジリー
5番ボックス席の案内係。怪人の姿は見たことないが、声を聴いたことは頻繁にある。サラリーを渡す(ボックス席の上に置いておく)等、要望を叶えるとチップが貰えることもあり、従っている。
(疑問)マダム・ジリーは一度足台を用意するように頼まれる。ジリーの予想では、細君のために頼まれたと思っているが、果たして。

・ラウルは幼少時代に思いを馳せる。
クリスティーヌの父は、とある村の農夫でヴァイオリン弾きだった。妻を早くに失くしていた。クリスティーヌは父の教えと素質を感じた周りの人の援助によって、歌手として成長する。その中でも面倒を見てくれたのはヴァレリウス教授夫妻であり、ヴァレリウス夫人はクリスティーヌの父没後、養母同然であった。少年ラウルは町でクリスティーヌの歌声を聞き心奪われ、付き添いの家庭教師を連れて後を追った。海辺でクリスティーヌのスカーフが飛ぶと、ラウルが服のまま海に飛び込んでずぶ濡れになって取ってきた。その後、夏の間中ラウルとクリスティーヌは一緒に遊び、クリスティーヌの父はラウルにヴァイオリンを教えた。クリスティーヌの父はよく二人に北欧のおとぎ話を言って聴かせた。その物語の中には、次のようなものもあった。「ひとりの王様が小舟に座っていました。その小舟は、煌めく瞳さながら、ノルウェーの山中にぽっかりあいた静かな深い湖に座っていました」「幼いロッテは(中略)お母さんの言うことをよく聞き、お人形をかわいがり、自分のドレスと赤い靴とヴァイオリンを大切にしていましたが、なによりも、眠りにつくときに〈音楽の天使〉の声を聞くのが大好きでした。」それから3年後に2人は再会するが、お互い社会的身分の違いを意識させられ、以前のように仲良くいられなかった。

・クリスティーヌの父の命日
クリスティーヌは父の命日にペロスへ行く旨、ラウルに手紙で告げる。ラウルは後を追い、二人は再会する。クリスティーヌの父親が眠る墓地で、クリスティーヌは、楽屋での声は〈音楽の天使〉のものだと信じて伝えるが、ラウルは誰かにからかわれているのだと信じなかった。夜になって、クリスティーヌは墓地を訪れる。ラウルはこっそり跡をつける。墓地では、何か見えない存在が素晴らしい音楽の演奏でクリスティーヌを引き寄せていた。その後、クリスティーヌは引き返して墓地を出る。ラウルは陰に隠れていた人物を見つけマントを掴むと、骸骨の顔が振り返った。その後、ラウルは冷え切らした状態で見つかり、宿屋の女将とクリスティーヌに介抱された。
※ラウルに手紙で告げたのは、楽屋でラウルと面識が無いように振舞った際、怪人がラウルへに気があるのではと疑ったことに起因する。「避けるのは気がある証拠だ」と指摘されたクリスティーヌは、避けていない証拠に「同行してもらいます」と動いたのであった。

・『ファウスト』事件後
カルロッタは病に倒れ、クリスティーヌは2週間失踪していた。ラウルはヴァレリウス夫人の元を訪れる。クリスティーヌは〈音楽の天使〉に結婚を禁じられていることを知る。また、馬車で通り過ぎるクリスティーヌを目撃するものの、ラウルを無視して行ってしまったことに落胆する。翌朝、クリスティーヌから、"明後日行われる仮面舞踏会で変装して指定の場所に来るように"という手紙が届く。

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