本を愛した三年間 #架空ヶ崎高校卒業文集
1997年
3年A組 星野 智慧
架空ヶ崎高校を卒業するにあたり、三年間の高校生活を振り返ると、やはり最初に心に浮かぶのは、図書委員としての思い出です。私は幼いころから、読書を趣味としていました。本の世界に入り込み、想像の翼を広げることは、どちらかと言えば内省的な自分の、ひそかな楽しみの一つでした。だから入学してすぐに、図書委員に自ら立候補しました。そもそも、この架空ヶ崎高校を進学先に選んだのは、ここの図書室に惹かれたからでした。図書室は、吹き抜け構造の、塔のようなつくりになっています。足を踏み入れてから上を見上げても、吹き抜けの先は闇に覆われており、どれほど高いのか見当もつきません。何層もの階に分かれており、各階は壁一面に書架が並べられています。はたしてどれほどの本が収められているのか、先輩方に尋ねても誰も知らないようでした。三年間入り浸っても決して読み切れないほどの本を前にして、胸が高鳴っていたことを覚えています。いろいろな本を読みました。その中に、私の人生を変えてしまう出会いがあったのです。先輩に導かれて手にしたその本の題名は『sygkhnito、帳を下し給う』といいます。本当は書名をここに記すのも畏れ多くて憚られるのですがいたしかたありません。本を手にした瞬間私の脳髄に甘美なる楔が打ち込まれ私の肉体はその軛を離れ幽界の狭間を彷徨い巡り巡り遂には法悦の極限まで至ったのですさらには書に記された片言隻句が汚穢に満ち満ちた肉の檻を
せねばならぬ
私は卒業しますが、私の三年間は、図書室とそこで出会った本のおかげで、本当に充実したものでした。良き出会いへと導いてくださった先輩には、感謝の思いしかありません。これからは私も図書委員OBとして、後輩たちを善き道へと導いていきたいと思います。
そんな…旦那悪いっすよアタシなんかに…え、「柄にもなく遠慮するな」ですって? エヘヘ、まあ、そうなんですがネェ…んじゃ、お言葉に甘えて遠慮なくっと…ヘヘ