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目が覚めたらもうすでに昼の12時を回っていた。

重い体を起こして素足にスリッパをつっかけ部屋のドアを開ける。当然ながら家の中は暗く静まりかえっていて、取り残されたような寂しさが、喉元から体いっぱいに広がった。ドアの反対側の窓にかかっているカーテンの隙間から、一筋の光が、柔らかく温かい暗闇を鋭く切り裂いていた。

私は足に引っかかっているスリッパを引きずるようにして窓際まで行き、カーテンに手をかけたところで、びくっと肩を震わせた。昨晩閉め忘れた窓の隙間に、一羽の鳩が挟まっていたのだ。

「うおっ。気持ちわる。」「あら、かわいそうに。」

私は同時に二つの真逆な感情が心の中に芽生えるのを感じた。どちらの感情が私にカーテンを開けるのを止めさせ、肩を震えさせたのかは分からない。しかし、私の最初の反応が何であれ、一つ確実なことは、私にとってこの出来事はただの面倒ごとでしかないということだ。意味もなく雑談を交わすような友達がいない私には、この出来事を面白おかしく語る相手もいなければ、それの面倒を見て満足感を得るような慈悲深い人間でも、私はない。私はただただ、そこに挟まっている小さな動物に「お前はなぜよりにもよって、この広い世界の中で、この家のこの窓に挟まったのだ」という理不尽な苦情を孕んだ視線を送っていた。今にも閉じてしまいそうな私の目に映る鳩の目は、日光を反射して異様なほどに輝いて見えた。そいつを私が助けてやらなければいけないことに、心の底から嫌気がさした。

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