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看護計画テーマ「小児科 小児悪性リンパ腫患者」

割引あり

いかがお過ごしでしょうか?
今回のテーマは小児悪性リンパ腫になります。
早速まとめていきましょう。


小児悪性リンパ腫患者の標準看護計画
 
小児悪性リンパ腫とは
 悪性リンパ腫は、小児がんの全国登録によると小児の悪性腫瘍の中で白血病、神経芽腫に次いで多く、小児悪性腫瘍の6〜10%を占める。悪性リンパ腫はリンパ組織に発生し腫瘤を形成する腫瘍の総称で、病理学的には、その特性からHodgkin病(HD)とnon-Hodgkin’s lymphoma(NHL)に大別され、約85%がNHLで、2:1で男性に多い。小児のNHLを大別するとBurkitt型、large cell型、lymphoblastic(non−Burkitt)型の三者で、前の2つは、B細胞系、最後はT細胞系である。原発部位は、リンパ節とリンパ節外で、前者が2/3である。基本的にはNHLは、全身のリンパ組織のどこからでも発症するが、B細胞が腸管原器、T細胞が、胸腺由来であることより、Burkitt型は腹部に、lymphoblastic型は縦隔に好発する。B細胞型は、Waldeyer’s ring(扁桃、アデノイド、舌根、鼻咽腔、上顎洞)にも発生する。頭頚部等の表層部位にはどの組織型も出現する。その他、中枢神経系、生殖器、骨髄、皮膚などにも発生する。NHLはHDと異なり、血行性に転移するので、全身に散在性に病変が拡がりやすい特徴がある。病因としては、Burkitt型とEBウイルス感染の関わりが示唆されている。また、免疫不全や自己免疫疾患に悪性リンパ腫の合併頻度が高いことから、ある種の免疫不全が関与していることも想定されるが、明らかな単一病因は不明である。発症年齢は、リンパ組織の過形成初期にあたる5〜14歳を中心に広く分布し、年齢的なピークはない。
 
アセスメントの視点
 強力な化学療法に加えて、患者の病気と組織型に応じた異なる治療法を施行してきたことにより、悪性リンパ腫の治療成績は、過去10年間に飛躍的に進歩してきた。家族にとって突然の診断は、死の宣告と同義であることが多く、大きなショックを受ける。入院早期から始まる化学療法や放射線療法などによる辛い生活の中で、家族は驚き、悲しみ、怒り、否定しながら、やがて悲しみを乗り越えて疾病を受け入れ、子供と共に闘病に向かう姿勢に変わっていく。医療者は家族の不安を理解し、悲しみを温かく受け入れて家族の支えとなることが大切である。また、闘病生活の中で、看護師は家族と協力してそれぞれの時期の小児が最も良い環境の中で生活でき、心身の成長発達を促されるように、様々な援助を行っていく必要がある。
 
症状

  1. 無痛性のリンパ節腫大 
    HDの発症部位は頚部(74%)が圧倒的に多く、NHLでは頚部(50%)に次いで、腋窩、鼠径、後腹膜のリンパ節の腫大がみられる。

  2. リンパ節腫大による圧迫症状 
     1)気管の圧迫による呼吸困難、咳嗽、嗄声 
     2)食道圧迫による嚥下困難 
     3)喉頭反回神経圧迫による喉頭障害 
     4)上腕、腰、仙骨神経叢圧迫よる神経痛 
     5)静脈圧迫による四肢の浮腫 
     6)腹部腫瘤による腹部膨満感、腹痛、嘔吐、腸閉塞症状

  3. 全身症状 倦怠感、体重減少、発熱、食欲不振、貧血等

  4. 皮膚への腫瘍状浸潤あるいは、特異的皮膚炎による掻痒感

  5. 肺への浸潤による散在性、粟粒像の陰影

  6. 心臓への浸潤による心不全

  7. 胸膜への浸潤よる胸水貯留

  8. 消化管への浸潤による腹痛、腹膜播腫、腹水貯留

  9. 肝脾腫大

  10. 脳への浸潤よる意識消失、けいれん、失見当識障害

  11. 髄膜への浸潤による脊髄神経圧迫症状

 
検査
生検による病理組織学的診断、血液一般検査、血液生化学検査、X線撮影、全身骨撮影、IVP、CT、MRI、核医学検査、骨髄検査・生検、髄液検査、エコー、リンパ管撮影、胸・腹水穿刺
 
治療
1.放射線療法
HDに対しては放射線照射が有効的である。照射野は限局照射、マルトン照射(縦隔洞、上鎖骨窩、頚部、腕窩を含む領域)、逆Y字照射(大動脈傍、骨盤腔)、全リンパ節照射、等が行われている。しかし、小児では放射線照射による晩年障害が近年問題とされており、できるだけ照射を行わず多剤併用の化学療法のみにより治療する傾向がある。NHLでは、放射線療法は局所療法であるため、限局傾向の強い症例を中心に選択される治療法である。
2.化学療法
多剤併用療法を行うことが多い。HDはMOPP療法、ABVC療法が一般に行われる。NHLでは、CHOP療法、BACOP療法が広く採用されている。また、CHOP、BACOP、さらにアラビノシルシトシンとメソトレキセート(MTX)にロイコボリンを併用するMACOP−B療法が有効的である。
3.外科的摘出術
リンパ節の腫脹が解剖学的に一部に限局されている場合、主要臓器の圧迫が強い場合に行う。
4.支持療法
感染予防、抗生剤の投与、輸血など
5.骨髄移植
 
経過と管理
1.全身状態の管理
 初期には可動性のある無痛性の硬いリンパ節腫脹として触知されるにすぎない。しかし、病気の進行とともに発熱、全身倦怠感、食欲不振、体重減少、発汗などの全身症状が出現する。さらに進行によって、肝、腎、心、骨、皮膚、肺、精巣などの諸臓器に病変が及ぶ例がみられている。また診断後、早期から始まる化学療法による出血性膀胱炎、心毒性、肺毒性、麻痺性イレウスなどの副作用を起こす恐れがある。全身状態の観察が重要である。
2.感染予防
 悪性リンパ腫では、白血病と比較して、骨髄の正常造血細胞が比較的保たれているが、骨髄に浸潤している場合には、貧血や発熱、易感染などの症状がみられる。また、強い化学療法の副作用により極度に抵抗力が低下し、易感染状態となる。そのため、感染予防に個室隔離やクリーンウォールの使用、手洗い、含嗽など全身の清潔が保たれるようにする必要がある。
3.処置、検査の介助
 患児には、入院後に血液検査、点滴、骨髄穿刺、腰椎穿刺等、痛みを伴う処置検査が連日のように行われる。そのため、患児には年齢に合わせた説明を行い、検査・処置時に援助していく必要がある。また、中心静脈カテーテル(IVH)の挿入により24時間輸液が行われ、そのまま一時退院となることもあるため、カテーテルの感染や自己抜去などのトラブルが起きないように管理し、さらに患児・家族への指導も重要である。
4.食事、栄養
 発達途上の小児にとって栄養は不可欠である。長い療養生活で感染に対する抵抗力をつけるためにも体力の増進を図る。栄養のバランスの良いもの、高たんぱく質、ビタミン、ミネラルなどを豊富に含むものを摂るようすすめる。しかし、症状の悪化や治療の副作用により食欲は低下する。その場合は患児の好みを考慮し、工夫して与える。また、易感染状態の時は加熱食となるため、その必要性について十分説明し、できる範囲での工夫を行う。
5.退院後の生活
 退院後も患児にとって良い状態が維持されるよう、退院に向けて指導を行い、病棟から外来への継続看護を行う。患児の年齢に合わせて感染予防、服薬、食事、安静、外来通院について指導を行い、異常症状の判断ができるように家族にも指導する。定期入院が必要な場合は、患児が自らの疾患についてどのように理解しているか把握し、納得のいく対応を行う必要がある。
 
看護計画
アセスメントの視点
 悪性リンパ腫は、リンパ節腫大による圧迫症状や治療による副作用、その他の感染症状など治療経過中さまざまな身体的苦痛が生じる。毎日の一般状態の観察や検査結果をもとに状況を正しく把握し、患児の苦痛が最小限となるように援助していく必要がある。また、患児、家族の精神的援助が重要となってくる。長期にわたる入院生活の中で看護者は、患児、家族の良き相談相手となるように努め、気持ちが表出される環境作りを行うことが必要である。

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