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看護計画テーマ「肝移植患者の標準看護計画」

今回のテーマは肝移植についてです。
それでは早速まとめていきましょう。

肝移植とは

1.肝移植の現状

肝移植はアメリカ合衆国において研究がはじまり、1980年代に免疫抑制剤の進歩とともに末期肝臓病に対する治療として確立されてきた。肝移植という治療法については、これまで主として海外で多数行われてきた脳死肝移植という方法と、日本で症例が重ねられてきた生体肝移植という方法がある。日本では脳死ドナーの不足という問題があることから、血縁者あるいは配偶者から提供された肝臓の一部を用いる生体肝移植が主流になっている。こうして生体肝移植が1989年に我が国で施行されて以来、本格的に導入され現在では生体肝移植は末期的肝疾患に対する最終治療手段として根づいてきた。

2.生体肝移植の手術:レシピエント

レシピエントの手術は、開腹・肝摘出・血管吻合・胆道再建・閉腹の段階で進められる。レシピエントの肝を摘出する際には、下大動脈を温存しなければいけない点や肝静脈、門脈、肝動脈の各々の枝を可及的に肝の近部で切断し、血管自体をレシピエント側に長く残さなければならない点で手術手技が難しい。また、胆道閉鎖症術後などのレシピエントの場合、移植前にすでに開腹手術が行われているため腹壁と肝、腹壁と腸管、肝下面と腸管の癒着が強固であり開腹と肝摘出時に腸管を損傷しないように注意を要する。

3.生体肝移植の手術:ドナー

ドナーの手術は、ドナーの安全性とグラフト機能を同時に確保しなければならない。全ての手術局面で、丁寧で確実な操作が求められる。ドナーから摘出するグラフトの容量は、レシピエントの標準肝容量に応じて決定する。肝切除術式は外側区域、拡大外側区域、左葉切除が主に選択されるが必要に応じて右葉切除も行われる。

肝臓は、他の臓器と異なり再生する能力がきわめて高く、正常の肝臓は、最大3分の2を切除しても残存した肝臓で機能を維持することができ、数週間以内にもとの大きさに回復する能力がある。

 

肝移植の適応

1.肝移植の適応疾患

1)胆汁うっ滞性肝疾患(先天性胆道閉鎖症、PBC、PSC、アラジール症候群など)

2)先天性代謝異常症(ウィルソン病、家族性アミロイドポリニューロパチーなど)

3)肝硬変症

4)急性肝不全(劇症肝炎)

5)原発性肝腫瘍

6)肝静脈血栓症(Budd‐Chiari症候群)

7)その他の末期肝疾患

2.レシピエントの選択基準

1)進行性肝疾患の末期状態で予後不良と考えられ、内科的治療が奏功しない場合

2)肝不全状態ではないが、静脈瘤からの出血を頻回に認めるなどクオリティ・オブ・ライフの著しく制限された状態で、肝移植によってその病態の改善が見込まれる場合

3)肝以外の悪性腫瘍の合併や重篤な感染症がないこと

4)重篤な他臓器の障害を伴なわないこと

5)年齢は原則として60歳以下

3.ドナーの選択基準

1)他人から強制されることなく自発的な臓器提供の意志がある

2)肝移植の手術法、成績、ドナーの手術の危険性、術後合併症について説明を十分理解できていること

3)レシピエントの血縁者(4親等以内)または配偶者が基本

4)年齢が20〜60歳前後

5)血液型が一致または適合すること

6)肝機能、腎機能、心肺機能などが正常(重篤な合併症や感染症がない)

7)レシピエントに必要なグラフトサイズが得られること

 

用語の定義

肝移植:本文では全て生体肝移植をさす
レシピエント:臓器受容者
ドナー:臓器提供者
グラフト:移植肝

1.レシピエント

肝移植後、レシピエントは血栓症・出血・拒絶反応・感染症などのさまざまな合併症が起こる可能性がある。これらの合併症の予防・早期発見に努めるために術前から患者の状態を把握し、適切な観察と対処を行うことが重要である。また、入院期間が長期にわたる場合が多いため、メンタルケアも必要となる。

2.ドナー

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