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InterBEE2019個人レポート

 去る2019年11月11日~13日の三日間、A.O.M.のスタッフとしてInterBEEに参加してまいりました。今年の春からずっと体調が本調子でなく、イベントの類にはあまり積極的になれなかったのですが、この三日間は非常に多くの良い刺激に恵まれ、例年以上に有意義且つ楽しい時間を過ごせました。
 A.O.M.にも多数の方が足を運んでくださり誠に感謝いたします。

 今回は個人的レポートとしてInterBEEで体験させていただいた機材のうち特に感銘を受けたものをご紹介しながら自分が社長にブースをワンオペさせながら遊…ではなく勉強してきたことをお伝えしようと思います。

KSdigital C120-Coax

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 まずは今回の個人的MVPからです(全部回れたわけではないのであしからず…)。
 KS digital社の12インチ同軸スピーカーになりますが素晴らしい出来でした。ホーンツイーターの同軸ダブルバスレフ,さらにDSP補正ユニットというとまんま同じ仕様のequator Audio Qシリーズが思い出されます。
 しかし時代が10年近くたったこともあるのかパワードモニターが抱えがちな高域の独特のビリ付きもなく、本当に素直な特性で、トランジェントも非常にスムースな上、上下帯域のつながりも非常に良好です。またバスレフタイプのスピーカーにもかかわらずストレスのない排気を実現してるのか、ロールオフ周辺に強いピークを感じません(密閉やただの穴だったらすいません)。自分はTANNOY SGM10Bをメインモニターとして使っていますがツイーターの響きとハイの前への出方を除けば非常によく似ています。またこのマットさというか素直な特性は最近では鉄板の一角でもあるamphionにも通ずるものがあり、全体域にわたって音が見えにくいところがありません。
 同値段帯のmangerの圧倒的情報量、amphionのミッドの反応のタイトさなど極限的に突き詰めた性能は感じませんでしたが、その二つにも勝るスタジオ的なバランスの良さはモニタースピーカーとしての完成度の高さを感じました。
 一般的な歌謡楽曲制作の範疇ではメインモニターとして他著名メーカーのハイエンドクラスと十分渡り合えると思います。価格は100万円ほどとのことらしいですが、これより上を狙う場合は次は300万オーバーは堅いでしょう。同ランク帯は他にもいい製品が多いので、1強という事にはならないでしょうが、総合力では一番バランスがよいと感じています。
 好みはあると思いますがこのクラスのスピーカーを導入される方はぜひ候補に入れてみてください。

 同時に並んでいたREFERENCEシリーズも素晴らしかったです。実をいうと前モデルはチラ聞きしたことがあったのですが、印象はあまりよくありませんでした。そのため本当に同じ会社のスピーカーなのか最初は信じられなかったです。かなりいろいろな箇所が変わっているようなのでマイナーアップデートではなく抜本的に音の見せ方を変えたのではないかなと思っています。
 エンジニアとしては300~600hzあたりが良く見え、C120と同様素直なロールオフ特性を持つC5を、SONY ZS-M5の代わりに使ってみたいなと思いました。2wayですが本当にフルレンジに思える音です。C8は少し肩が張ったような音で、その周辺の上下の帯域が少し見えにくいのが気になりましたが、こちらの方がパワードモニターでよくあるバランスだと思います。一聴してトラックの配置がわかるメリハリがあり、作編曲はこちらの方が圧倒的に捗りそうで、これはこれで欲しさがあります(自分の作編曲率は大分減っていますが)。

PMC QB1-A

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 僕はPMCのスピーカーが苦手だったのですが、これは違いました。今まで聞いてきたスピーカーの中でも最高峰のスピーカーです。ええ、単純にそんなお高いスピーカーはそうそう聞いていないというのもありますが…w
 価格帯も1000万級という事でクオリティは圧倒的です。これに並べるスピーカは僕が効いた範囲ですと乃木坂のマスタリングルームにあるスピーカーくらいです。それと比較するのも方向性がちがうので変な話になりますが、ローの特性はPMCが、ミッドより上は乃木坂の方が好みでした。好みというだけです。スーパーローが暴れることなく正確に制動されているのが特に印象的でした。ここまでやるか。しかしそれによって上の帯域も意図しないマスキングをされずに明瞭に聞くことができます。これだけの解像度とレンジが必要なのは現在ではトップクラスの音響制作やレコーディングスタジオのラージになるでしょう。PMCの理想はここにあったのか…という事で素晴らしい体験をさせていただきました。
 InterBEEはなかなかお店では聞けないものも聞けたりしますので、足を運んだことのない方は一度行ってみるのも楽しいですよ。

Reference Laboratory RMC-S01 TW

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 (株)フリーバードさんが輸入代理店をされているReference Laboratory社のハイエンドラインケーブルです。知人でもありParasight Masteringの現役エンジニアである諸石氏が中心となって販路が開拓されたケーブルで、噂は聞いていたものの今回初めて視聴することができました。
 噂にたがわず非常にハイクオリティなケーブルでしたが、宣伝や木箱、蒔いてある布から受けるピュアオーディオのような印象とは真逆で、スタジオ用途に相応しい非常に滑らかで堅実なバランスです。重心感は1kかもう少し上あたりで非常にブロードに広がっており、レゾナンス感はまず感じないでしょう。ロールオフ部分周辺の強調もなく非常にスムーズ且つワイドレンジに帯域が収まっています。個人的に近い印象なのはノイマンのk3ですがこちらは重心感がもう少し低めで600hzほどです。タイト且つ腰が据わっていますが少しだけ堅実すぎる印象もあります。ロールオフもこちらの方がわずかに早い。アタックはハイミッドとローでRMC-S01 TWの方がほんのわずかに長く感じられますが、十分トランスペアレントと言える範囲で安定感のある華やかさが感じられます。
 ケーブルは好みもありますし大量に必要な上消耗品なのでコスパにも悩まされます。お値段はざっくりと7~8万(長さ不明)ということで流石ハイエンドケーブルといった感じですが、確かにここまで要求をクリアしたものは少ないです。モニターラインやADの入り口等、要所での採用を検討する価値は十分あると思いました。
 隣にあったマイクケーブル、RMC-S01もしっかりしたスタジオサウンドで非常に力強い音がしていました。こちらはベルデン8412を違う趣味の人間が作ったような印象で、粘りのある中低域とナチュラルながらもしっかりと量がある中高域といった感じです。タイトというよりかはローミッドのアタックがはっきり出るためパンチの効いたサウンドになっている印象です。音抜けやメリハリに悩んでいる方にはお薦めだと思います。

おススメ3連発でした

映像の方をちょっとまわったりSRスピーカーの視聴会場に初めて行ったりしたのでもう少し書きたかったのですが今日のところはここまでです。
読んでくださってありがとうございました。

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