The giants living amongst us mere mortals.

Mark Rober

Mark Roberという登録者2390万人のYouTuberを知っているだろうか。

元NASAのエンジニアで、今なお火星で活動を続ける火星探査機「キュリオシティ」の開発に携わっていた経験を持つ。
その技術力を活かし、ユニークな装置を作ったり、教育的なテーマを派手なスケールで実演するという内容のチャンネルだ。

例えば、有名な動画だと
Glitter Bomb 1.0 vs Porch Pirates
というのがあり、面白いので見てほしい。
縁側海賊、つまり置き配泥棒に技術を使って灸を据えるという内容で痛快なものとなっている。

こんな彼が、2021年4月17日にある動画を投稿した。
「The Truth About my Son」

マークの息子が自閉症スペクトラムであることを明かし、彼がどんな子で、マークの家族がどれだけ彼を愛しているのかということと、彼らのような人々がどのような生活を送り、どのような問題や思いを抱えているかという内容だった。

そして、NEXT for AUTISMという自閉症の子供たちを支援する非営利団体のライブ配信をホストするというアナウンスを行った。

このライブ配信は300万ドルの資金調達に成功することとなった。

動画から彼の言葉を引用する。

My son will never be the star of his little league team.
He won't be the first person to step foot on mars nor will he invent the cure to cancer.
But by the best definition of success I can think of him and his special needs buddies and everyone else out there like them are giants living amongst us mere mortals.
They make the world a better place.
And we're lucky to have them.

https://www.youtube.com/watch?v=ybPgmjTRvMo

僕の息子がリトルリーグでスターになることはない。
彼が人類で初めて火星での一歩を刻むこともなければ、ガンの治療薬を開発する人間になることもあり得ない。
しかし、彼や彼の特別な友達たち、彼のような人々に対して、僕が考える最良の"成功"の定義とは、彼らが僕ら限りある命の中に生まれた偉大な存在であるということ。
彼らのような存在はこの世界を良くすることができる。
そして、幸運なことに僕たちには彼らがいる。

努力し、業績を残したマークを見て育つ彼の息子が、彼のようになることはないという事実を受け入れるのは相当難しかったんじゃないだろうか。
それでも彼は息子を愛している。
息子や彼らのような人々がどれだけ愛情深く人と接することができ、周りを笑顔にできる存在なのかを知っているからだろう。
僕には到底理解ができない深いレベルで彼が息子を愛していることがわかる。

とある女性

以前、三月のパンタシアのライブに行った時、物販で並ぶ僕の後ろにいた女性が、その後ろにいた男性たちと大きな声で話していた。
その女性は白杖を持っており、どうやら極度の弱視者だった。そして漏れ出る会話を聞くに、どうやらそのお兄さんたちと知り合いではないようだった。
そんな彼女が僕にも話しかけてきた。
ものすごい勢いで彼女自身の話をしてくる。
何らかの障害を持っていることにはすぐ気づいたが、別に話を聞くことは嫌ではないのでずっと会話していた。

ライブに来た理由
お昼をマクドナルドで食べた話
以前行ったライブで見たLiSAさんが本当に可愛かったと言う話
普段はあまり外に出られないこと
目が不自由なので、歩くのが大変という話
ライブで前の方の席が取れた自慢話
ポケモンセンターで手に入れたポケモングッズの話

それぞれ2~4回くらい繰り返し話していたからよく覚えている。どれも楽しそうに話すので全部話を聞いていた。特にLiSAさんについては5回は同じことを話していた。本当に心から好きなんだということが伝わってきた。
彼女は会話の最中、後ろのお兄さんたちにも話しかけるため、僕も混ざって会話するということが度々あった。
待機列が動けばお兄さんたちと協力して、手をとったり彼女のカバンについた誘導用の紐を引いて、待機列の道を教えてあげた。
彼女がトイレに行きたいと言えば、女性スタッフを探し、サポートしてもらった。
そんな感じで、短い間ではあったが彼女やお兄さんたちと談笑しながら、物販で買い物を終えるまで付き添った。
物販には缶バッジのガチャがあった。
そこでダブったものをお兄さんたちと交換できて、とてもラッキーだった。

わかるだろうか。

彼女がいなかったらこれは起きていなかった。
彼女が無差別に振り撒く笑顔と話題が、僕とお兄さんたちを繋いでくれた。
ほんの些細な繋がりだが、これは非常に意味あるものだった。

Asa Tenny

もう一人、エイサ・テニーという人物を紹介したい。
実際のところ彼のことはあまりわかっていないのだが、彼はローラ・ブリッジマンという女性の古き親友である。

Laura Bridgman - Wikipedia

ローラは幼い頃、病により盲聾となり、加えて嗅覚も味覚も失うという重度の障害をおった。
そんな幼き彼女を家族は疎ましく思い、家族は彼女を邪険に扱っていた。ローラも後にその時の記憶は良いものではなかったと語っている。

1800年代のアメリカだ。独立戦争が終わり西部開拓時代が始まろうとしていた頃を考えてみてほしい。
社会福祉はでき始めたばかり、言葉を話せない障害者は動物と同じ程度の扱いを受けていたと言っても過言ではない。
悲しいことだが、これはしょうがないことだった。

そんな彼女に唯一愛を注いだ、彼女の真の親友と呼べる人物がこのエイサである。
彼は精神障害を持っており、話す言葉も支離滅裂だったと言われている。
しかし、彼は純粋にローラと接していた。
彼は傷ついた動物の世話をしたりしていたため、ローラも同じように扱っていたのではという話もある。

ローラが盲聾であることを理解すると、彼は彼女を小川に連れて行き、枝を持たせ川の流れがあることを感じさせたという。
手をひき、時には抱き上げ、いろいろな体験をローラに与えたそうだ。

こんなことが僕らにできるだろうか?

エイサの純真さはこのローラという少女を救ったのだ。
ローラは彼を神が使わした天使だと言っている。

後に、ローラはサミュエル・ハウという博士の元で教育を受けることになる。
世界で初めて盲聾者への教育に成功した事例となるのだ。
博士はエイサが与えてくれた愛情と経験が、その成功に大きな貢献をしたと語っている。
そして、このローラが導いた人こそが、ヘレン・ケラーの"先生"となり、後に「奇跡の人」と呼ばれるアン・サリヴァンである。

Introduction: The Miracle Worker

The Giants

The giants living amongst us mere mortals.

これが、マークが「偉大な存在」という理由の一端なのではないだろうか。

もちろん。いいところばかり見ているのはエゴでしかない。
彼らの家族や友人たち、そして何より彼ら自身が苦しみ、努力し、何かを成し遂げようとしていることを、僕たちは理解しなければならない。

僕たちはその理解のもと、何を彼らのためにできるだろうか、何を彼らから学べるだろうか。

They make the world a better place.
And we're lucky to have them.

まず最初の一歩として、以下のリンクを張っておく。

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