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mignの経営方針(次世代の経営を目指して)

社内外から会社の方針について聞かれることがあるため、ここに簡単に書きたいと思います。
また、まだ修行中のみですが、現代の環境において、可能な限り一般化した方針を検討しているため、少しでも将来の起業家の参考にもなればと思います。

初めに簡単に言えば、”未来の都市や社会をつくることを目指し、先端技術を活用した世界初・業界初といえるソフトウェア・ハードウェア開発に取り組む”となりますが、以下ではもう少し詳細に記載します。

最も基本的な目標は企業価値の最大化

経営は企業価値の最大化がミッション

最も基本的なこととして、株式会社としての目標は、企業価値(株式価値+有利子負債)の最大化であると考えられます。
なぜなら、一般的に生物は、他の個体より優れた自身の環境(安全な生活環境、おいしい食事、魅力的な配偶者・子孫など)を求める生まれ持った先天的な性質があり、自身の保有する金融資産(現金、株式、債権など)はその一つです。
株式会社の保有者である株主や、融資する金融機関にとって、自身の資産の最大化が最も基本的な目標であるため、当株式会社において株主と金融機関の資産の総和である、企業価値の最大化が最も重要な目標となります。

max 株主と金融機関の資産の総和=max (株式価値+有利子負債)=max 企業価値

経営者としては、株主・金融機関の期待に応えるために、企業価値の最大化を図ることが最も重要なミッションとなります。

施策を検討のための企業価値の構成要素を整理

企業価値は次のように算出される。

企業価値=Σ(k年度のフリーキャッシュフロー÷(1+割引率)^k)

ここで、企業価値算定の一般的な方法であるDCF法(Discounted cash flow model)を用いています。kは年度kを示します。

したがって、企業価値を最大化のためには、

  • フリーキャッシュフローを最大化する

  • 割引率を最小化する

という大きく2つの施策となります。

簡易的な表現をすると、

  • できるだけ大きな利益(大きなフリーキャッシュフロー)を、永久に保持する(割引率が0に近い)

  • 倒産のリスクがほとんど小さく(割引率が0に近く)、利益が成長し続ける(大きなフリーキャッシュフローが増加し続ける)

というものになります。

企業価値を最大化する施策

企業価値を最大化する施策は、フリーキャッシュフローを最大化する施策と、割引率を最小化する施策の2つに分けることができます。それぞれについて具体的な施策を記載します。

フリーキャッシュフローを最大化する施策

フリーキャッシュフローは次のように表されます。

フリーキャッシュフロー
=営業キャッシュフロー(売上や仕入れなど)+投資キャッシュフロー(設備投資など)
≒売上-コスト

したがって、売掛金を算入するかどうかの違いはありますが、フリーキャッシュフローを最大化するには簡易的には

  • 売上を最大化する

  • コストを最小化する

という大きく2つの施策となります。

この2つの施策をさらに細かく分解していくことも可能ですが、長文になるため、簡易的に要点を列挙します。

売上を最大化する施策

  • 大きいマーケットに参入する:マーケットは概ね言語圏でそれぞれ独立している。したがって人口・経済ともに最も巨大な英語圏で算入を進めることが望ましい。そして、そのマーケットの現地(米国)に身を置くことが重要である。mignは米国法人を設立し、私も可能な限り米国で滞在することにしている。

  • 創業者が世界で一番になれて、かつマーケットの大きい業界から参入する:建築・土木・建設・不動産業界であれば自分ほど、この業界や技術が好きで、詳しいものはほとんどいないと考えている。したがって、この業界から参入する。

  • 大企業向けソリューションから始め、徐々に中小企業向けのソリューションをつくっていく:同じコストで開発したソリューションを導入したときのインパクトの大きさは、その会社の売上高に依存することと、利益が大きい会社ほど、新しいソリューションを試す余裕があるため、売上や利益の大きい大企業向けの方が売上を上げやすい。したがって、初めは大企業向けのソリューションにフォーカスした方が良い。しかし、業界の80%は中小企業のため、将来的には自社に蓄積したノウハウを活用し、中小企業向けのソリューションを広く提供していく。

  • 新しい技術を活用したソリューションを提供する:新しい技術は、扱える人材は非常に限られ、希少性が高いため、クライアントの支払金額も高くなる。現在においては、生成AIの黎明期であり、この技術を活用した世界初のソリューションの提供にフォーカスして事業を進める。


コストを最小化する施策

  • 固定費や変動費の少ないサービスから始める:固定費や変動費が低いほど倒産リスクは低く抑えられる。したがって、そのようなサービスが進めやすいソフトウェア事業から始める。

  • 業務フローや役割が明確な組織をつくる:自社独自の業務フローや独自の知見がないと業務ができないような事業だと、特定の人物に依存しすぎてしまい、同様の役割の人材のリクルーティングが難しくなる。事業が大きくなるにつれて、オペレーションコスト(限界費用)も指数関数のように大きくなる。業務フローや役割を明確にし、新たにジョインした方の初期学習コストを極力低くし、なおかつフルリモートで世界中どこからでも業務ができるような業務環境を整備している。

  • スケールメリット、参入障壁を設計する:事業規模が大きくなっていくにつれて、コストが低くなり、自社のサービスを選んでもらう確率が高くなり、限界利益(サービスを拡大する中で、追加の売上から追加のコスト引いた金額)が0に達する事業規模がより大きくなるようなサービスを進める。1つの方法として、SaaSはやりやすい。

  • 楽しく誇りをもって仕事ができる環境をつくる:最も重要なのは、サービスの開発に関わっていただける方々である。サービスの最初のユーザーは楽しみながら、少し熱狂しながら開発に携わる方々に違いない。mignは創業者の私がやりたいことをやりたくて、つくった会社であるが、同じような想いをもつような方は世界にそれなりに多くいると思っていて(少し変わり者だといわれている方だと思うが)、mignのカルチャーやブランドを積極的に表現することで、最近は少しずつそのような方が入っていただけるようになってきたと感じている。会社のカルチャーに共感し、楽しんでいただけるような人材ならば、給与や報酬以外の部分にも価値を感じていただけるため、会社にとっても非常に良い効果をもたらす。世界の国々や日本をよりよくしたい、建築やまちづくりの領域に関心がある、国際的にも先進的なことをやりたい、デザインやおしゃれに興味がある、という方に共感できる方が集まるような環境をつくっている。


割引率を最小化する施策

割引率はWACC(Weighted Average Cost of Capital)が用いられます。WACCは以下のように定義されます。

WACC=E÷(E+D)✕Re+D÷(E+D)✕Rd✕(1-t)

ここで、Eは株主資本、Dは負債、Reは株主資本コスト、Rdは負債コスト、tは実効税率

数式は少し複雑でありますが、つまり以下の2つが主な施策となります。

  • 株式資本コストを最小化する

  • 負債コストを最小化する

株式資本コストは株主の対して株式会社が支払う報酬、負債コストは融資者に株式会社が支払う報酬と捉えることができます。この2つは投資か融資かという違いはあるにしても、株式会社の将来の資産価値の増加に期待するという点では共通するため、施策もほぼ同様のものになります。
ここでは、フリーキャッシュフローの施策と同様に、簡易的に列挙します。

株式資本コストと負債コストを最小化する施策

  • 倒産リスクを0に近づける:一つの事業に依存すると、事業のアップデートを早くすることができる一方で、マーケットにフィットしない確率は高く、会社が倒産するリスクが高くなる。mignは、初期投資は限りなく低くしつつ、さまざまなソリューションをそれぞれシナジーがあるように並行して進め(クライアントが共通する、技術や人材が蓄積するなど)、特定の事業に依存しない事業ポートフォリオをつくっている。また、AIが経営することで、正確で高速な意思決定を、膨大な種類の事業の評価ができるようになり、その時代にとって最適な事業ポートフォリオを自動で組んでいけるようなシステムの開発を進めている。

  • 大きな金額での投資や融資を受ける:大きな金額での資金調達ほど、投資や融資のレバレッジが効くため、利回りは小さくても大きな収益が期待できる。しかし、小さな利回りのままで、大きな金額の投資や融資を受けるためには、信用が十分である必要があるため、事業の実績を蓄積し、可能な限り大きな金額での資金調達を目指している。

スタートアップの経営のポイント

先述のように、企業価値を最大化するための、主な施策について記載しましたが、その中でもスタートアップならではのポイントを補足したいと思います。

1つの事業にのみフォーカスすることは起業家にとってベストな方法ではない

スタートアップの参考書といわれる書籍や情報が多くあふれていますが、そのでよく言われることとして、1つの事業にのみフォーカスして磨きこむべきだということです。しかしこれは、起業家にとってはベストな方法ではないと考えられます。これは投資家にとってベストな方法です。

VCなどの投資家は複数のスタートアップに投資することでリスク分散をし、高確率で収益があげられるように事業を進めている一方で、スタートアップは投資家から1つのサービスにフォーカスするように言われることで、そのサービスが成功しなかったとき(価値がなかったとき、売れなかったとき)のリスクを回避できません。特にPMF(プロダクトがマーケットに適合する状況)前は、新規事業の失敗リスクはかなり高いため、スタートアップ側も複数の事業を同時に進めることや積極的なピボットで、リスク分散をするべきです。

数式で簡易的に表すと以下の通りです。

スタートアップが1つの事業にフォーカスした場合、期待収益をRa、成功率をPaとして、スタートアップが複数の事業を同時に進める場合、期待収益をRb、成功率(事業数mに依存する)をRb(m)とすると、RaとRbは以下のような関係となる。

Ra
=事業価値Pa

Rb
=Σ事業価値i✕Pb(m)✕既存事業とのシナジー係数β

iは事業i、mは総事業数。
Pa>Pbとする。

ここで、Ra<Rbとなるためには、

  • 事業数mが多くなっても、成功率がPb(m)が低くならない。

  • 既存事業とのシナジーがある(係数βが大きい)

  • 事業数mを増やす

スタートアップをつくっている身としては、クライアントが共通するソリューションであれば、顧客獲得コストを低くすることができシナジーがあるということと、また、ソフトウェアであれば大きなコストや時間をかけることなくソリューションをつくれるため、明らかにRa<Rbという状況だと考えています。

創業者や社員が楽しみながらつくれるサービスに取り組む

いろいろと事業を試してきましたが、創業者や社員が楽しみながらつくれるサービスに取り組むことが非常に重要だと考えています。人によって楽しめることは異なり、お金、技術、領域、社会性などありますが、私にとっては、小さいころから親しんできた建築・土木領域で新しいアイデアを実現させて、多くの人を感動させたいということでした。

これまで、大きな利益を出せそうだとか、楽にできそうといったような事業を進めたことがありましたが、苦しい状況を耐えることができる情熱がなく、大きくしていくことができませんでした。

自分にとって原点は、スポーツ選手や建築デザイナーのように、自分のパフォーマンスで、多くの方を喜ばせることができることをしたかったので、そのような価値観を満たすことができる事業をするべきだと考えました。

そうすることで、業務量が多くても楽しく取り組め、自分の楽しんでいることで一緒に仕事をする方々との雰囲気を良くすることができ、同じような価値観を持つ優秀な方が集まってきやすくなってきたと感じています。

経営方針のアドバイスを受けるべき人を選ぶ

起業して成功したことのない人(最も主要な創業者として上場企業をつくったことのない人)による、起業や経営のアドバイス(特にPMF前)はほとんど参考になりません。経験してきた方のみにアドバイスを伺うべきです。

スタートアップの書籍や情報を公開する投資家や士業、コンサルタントの目的は、起業家との接点を持つということなどが目的です。ほとんどの著者は上場するほどの企業を創業者として、つくってきた経験はありません。本当にビジネスを理解している上場企業の創業者には、書籍を書籍を出版するモチベーションがほとんどありません。

起業するとわかりますが、数百、数千ほどの非常に多くの失敗と、恥ずかしい思いをすることになり、そのような経験をしておらず、外から眺めているだけで、十分に起業を理解できるとは思えません。特にPMF前は非常に難しいため、経験していない方のアドバイスはほとんど当たりません。

PMF後はエクセルで投資と収益をシミュレーションするだけなので、そのような業務を多く経験してきたVCやコンサルタントのアドバイスは有用だと思います。

その人材がどのような経験をしてきたのかをよく考えて、どのアドバイスを聞くべきか判断することが重要だと考えています。

現代の技術や社会の変化を活用する

歴史的な社会の発展を振り返ると、多くは新たな技術の出現や社会の変化が、大きな変換点となりました。いまでは、生成AIの出現や、COVID19によるリモートワークにような業務スタイルの変化が大きなポイントだと考えられるため、mignとしても可能な限り全面的に導入するようにしています。

先人の知恵

最後に自身の備忘録としても、米国・日本の上場企業の創業経営者や、同程度の規模の事業をつくってきた創業者の方々からいただいたアドバイスで心に残っているものを記載します。

  • 最初から上場のことは考えるべきではない。初めから大型の資金調達をするスタートアップは大嫌いだ。儲けることを考えるべき。儲かっていくと、自然と上場の話が出てくる。(ヘルスケア領域)

→資金調達や上場準備をいつからするべきか、という質問に対しての回答で、株式会社としては利益を出すということが本質的なことだと再確認できました。


  • 本質的にはEBITDAをどのように大きくしていくことなので、それを初めに数字で計画するべき。(金融領域)

→言葉でなく徹底的に数字で説明することの重要性を学びました。


  • いろんなイベントの幹事をやるといい。経営も同じなので。(IT領域)

→自分が楽しみ、仲間を楽しませ、必要なものや人材を調達するということは、イベントの幹事も、会社の経営も同じであり、どのような態度で経営をするべきなのか知りました。


  • いろいろなお酒の中で、なんでワインだけが高いと思いますか?(IT領域)

→初めに聞かれたときに全く回答できませんでしたが、様々な要素が混在する実社会の現象の本質を捉えて、科学的に限りなく深く考えていく重要性を学びました。


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