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”プライベート・エクイティ”は分かるけど”プライベート・クレジット”って何?①

プライベート・エクイティなら新聞にもたまに出てくるし、日本にも何社か存在するので大体は分かるという人は多いだろう。しかし”プライベート・クレジット”となるとどうか。金融のプロのうち、一部の人にしか知られていないだろう。世界では資産運用の魅力的な手段、対象として、近年急速に伸びてきている分野である。何せ見込まれる運用利回りはリスクに応じ、6%から12%くらいにもなるというのだ。

ここでは広義のプライベート・クレジットの中でも、狭義の”ダイレクト・レンディング・ファンド”について解説する。

さてダイレクト・レンディング・ファンドとは、その名の通り「直接融資(ダイレクト・レンディング)してリターンを得るファンド」である。融資の対象となるのは、だいたい売上が数十億円程度の企業で、日本でいう”中小企業”よりは大きいイメージだ。

中小企業向け融資は、もともと米国でも完全に銀行によって牛耳られていたマーケットだが、世界金融危機の後、急速にダイレクト・レンディング・ファンドがシェアを伸ばしている。米国でも銀行は資金の調達コストは低い(預金で調達できる為)ものの、資本規制が厳しく要求されるROEが高い為、中小企業向けの貸し出しにブレーキがかかった。その隙をファンドが埋めたのだ。この手のファンドは米国に約180社存在し、4,000億ドル(≒40兆円)以上の市場規模があると推定されている。

冒頭で運用利回りは6~12%くらいと述べたが、ダイレクト・レンディング・ファンドの特徴として、一般的に途中で換金ができないというネックがある。ではファンドの満期までの期間は何年くらいなのだろうか?

ファンドの中身を構成するダイレクト・レンディング・ローンは、およそ5~7年くらいの期間であるが、ローンの満期を待たずに期限前返済されてしまうことも多い。平均すると、ローン返済までの期間は3年くらいと言われている。しかも、元金の一部が毎年返ってくる仕組みであることが多いので、それほど長期間資金を拘束されるわけではない(例えばプライベート・エクイティよりかなり期間は短い)。

また金利は市場の金利に合わせて上下する変動金利であることが多い。(金利上昇時に有利)

今後何度かに分けて、日本ではあまり馴染みのないプライベート・クレジット/ダイレクト・レンディングの市場やリスクや特徴などについて解説してゆこうと思う。