海外不動産が破格の値段で買えるようになっている可能性について
ここ数日の株式市場と為替の乱高下で、今ほとんどの人の関心は株価の先行きについてだと思うが、先日の日経新聞の次の記事に目を奪われた人も多いはずだ。
#日経COMEMO #NIKKEI
ニューヨーク、マンハッタン中心部のオフィスビルが、なんと97%値引きで売買されたというのだ。現地の記事では、2006年にUBSが332百万ドルで買った物件が、買値より”97.5%”低い8.5百万ドルでオンラインオークションで売られたとのことだ。
このセンセーショナルな見出しからは、アメリカの不動産市場はとんでもないことになっており、あらゆる不動産がバーゲンセールされているのではないかと思ってしまう。しかし現地の記事を読むと少しカラクリがあるようだ。
今回売買されたのは建物部分だけであり、建物のオーナーは土地の長期のリース料を払う必要があるのだが、現在の稼働率35%程度の当物件のキャッシュフローでは全く足りていないということだ。つまり今のままでは当物件を持つと収益は得られず、逆に継続的な支払いを負うことになる。
稼働率が低い要因は建物の古さや仕様にあるようなので、建物を大幅にリノベーションをするか全く新しい物に建て直せば、立地からみて収益が出る物件になる可能性は高いが、その費用が200〜300百万ドルはかかってしまう。その先行投資ができる投資家(やそれに資金を出す金融機関)が現状ではほぼいなかったということだろう。
不動産や、それ以外でも多くの資産の価格は、その資産から将来継続的に得られるキャッシュフローを見積もって算定されるものだ。そのキャッシュフローがマイナスであれば、価格がゼロでもおかしくはない。
いずれにせよ、マンハッタンの中心部のオフィスでも稼働率が35%というのは、いくら古い物件とはいえコロナから始まったリモートワーク普及の影響が大きい。海外では今でも出社率は相当低く、オフィス需要が激減しているのは事実だ。
当物件は相当高い土地の長期リース料(定期的に値上げされる可能性もある)がくっついてくるというのがネガティブ要因で、このような驚くべき取引が成立してしまっている。しかし米国のオフィス市場全般が相当厳しいのは間違いないだろう。
このような状況になると、オフィス以外の不動産で本源的な価値(つまり将来の安定キャッシュフロー)が高いにも関わらず、かなりのバーゲン価格で取引されることも増えてくる。
そのようなチャンスに絞って、新しくキャッシュを集めてバーゲン物件を買い集めるファンドも出てきており、それは投資として成功する可能性は大いにあるだろう。