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新NISAでオルカンに資金が国外流出する一方で、外資系プライベートエクイティファンドが日本へ積極投資しているワケ

「アリナミンV」で知られるアリナミン製薬が、米プライベートエクイティ(PE)ファンドのブラックストーンからアジア系投資ファンドに売却されるとの報道が目についた。武田薬品から2021年に2400億円で買ったものを、今回3500億円で売るという。ブラックストーンは買収後アリナミンを海外展開し、利益を6割増の230億円に伸ばしたうえでの売却だ。
3年間で1100億円のキャピタルゲインとは、実に素晴らしい取引だ。

今、海外のPEが日本にかなり注力していることは注目に値する。彼らはエコノミストなどと違い自己資金と顧客の資金を投資する責任とリスクを負ったプロ中のプロであり、前述のような実績を数多く残している。

日本では新NISAで、莫大な個人資産がオルカンやS&P500に投資されている。日本の成長を悲観し海外へ資金が流出しているわけである。しかし一方で、海外のPEファンドは日本企業への投資を増やしているのは注目すべきだろう。

#日経COMEMO #NIKKEI

今回はその背景と、なぜ日系よりも外資系がそのチャンスをものにしてしまうのかについてお話ししたい。

先ず各社が日本への投資を拡大している理由や背景をまとめる。

1. 経済環境の改善

各社は、日本の経済環境が改善していることを強調している。具体的には、金融政策の転換(マイナス金利の解除やインフレ基調への回帰)や、株式市場の上昇、円安などが挙げられる。

2. 企業統治改革と事業戦略の転換

日本企業が自己資本利益率(ROE)を重視し、非中核事業を売却する動きが進んでいる。これにより、PEファンドにとって魅力的な投資機会が増加している。企業統治改革は、企業の効率化や株主価値の向上を目指しており、PEファンドが買収して企業価値を高める好機を生んでいる。

3. 円安の影響

歴史的な円安により、外国投資家にとって日本企業の買収コストが相対的に低下している。ただしこれは主な理由ではなく、あくまで付属的なメリットだろう。

4. 特定分野への注力

各社は、日本の特定分野へ注目しているようだ。例えば、高齢化社会に対応したヘルスケア分野や、デジタル化、製造業(ロボティクスや脱炭素技術)などが挙げられている。これらの分野は、成長ポテンシャルが高いとされている。

5. 不動産投資の機会

不動産も重要な投資分野である。特に円安により、アジアからの観光客が増えているため、ホテルへの投資が注目されている。またデータセンターや人口増加地域の住宅などへの投資も期待できる。

以上、経済環境の改善や企業統治改革、円安の影響、特定分野への注力、不動産投資の機会などが各社が共通して日本に好機を見出す背景となっており、成長ポテンシャルが高く評価されている。

外資系ファンドの強み

では日本企業への投資がそれほどチャンスなのであれば、なぜ日系ファンドではなく、外資系ファンドが活躍するのだろうか?外資系だって、結局日本での投資は日本人スタッフが中心に実務を行うのである。それでも外資系ファンドには次のような強みがある。

1. グローバルな資金調達力

外資系ファンドは世界中の投資家から資金を調達しており、巨大なファンドを運用している。これにより、日本企業に対しても大規模な投資や買収を行うことが可能である。

2. 豊富な経験と実績

世界中のさまざまな市場での投資経験と成功事例を持っている。これにより、ベストプラクティスを日本市場に導入し、企業価値を最大化するための高度なスキルやノウハウを提供できる。

3. ネットワークとリソース

グローバルなネットワークを活用して、日本企業に対して国際的な展開やパートナーシップの機会を提供できる。アリナミンはこの成功例だろう。また、専門家やアドバイザーのリソースも豊富であり、戦略的な助言や支援を行うことができる。

4. 高度なオペレーショナルスキル

企業のオペレーションを改善するための高度なスキルとツールを持っている。コスト削減、効率化、経営改善などにより、投資先企業のパフォーマンスを向上させることができる。

5. 日本人スタッフの役割

もちろん、実務を行うのは多くの場合、日本で雇用された日本人スタッフであろう。日本市場に関する知識と経験を持つ日本人スタッフがインセンティブを与えられて、上述のような外資系ファンドの強みを活かし、日本企業の価値向上を図るという構図になる。

まとめ

外資系PEファンドは、日本市場への投資に大きな期待を寄せている。その理由は、日本の経済環境の改善や企業統治改革、そして外資系ファンドが持つ強力な資金調達力や経験、ネットワーク、オペレーショナルスキルにある。

投資家目線では、このような動きを注視し、投資機会を最大限に捉えたいところだ。ファンドが入ることで日本企業が成長することは好ましいが、日本国内の投資機会を国外の資本にだけ取られてしまうのは惜しい。Keyaki Capitalとしても今後、当分野への投資機会の提供を検討するべきと考えている。