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「仕組み債」の手数料が単純でない理由
金融庁や日本証券業協会が、いよいよ仕組み債で投資家が負担するコスト、つまり売り手側の儲けを開示するように働きかけているようだ。
わたしは、仕組み債を擁護する考えもなく、そういう立場にもない。しかしおそらく一般的に勘違いされやすいと思うのは、仕組み債の”手数料”は、投資家から売り手側に支払われて終わりという、(例えば投資信託のように)シンプルなものではないことだ。
単純に言うと、仕組み債は、社債とデリバティブのセット商品である。そして、デリバティブを単純に言うと、売り手と買い手との間で、一定の条件(例えば為替の水準や、株式インデックスの水準など)に基づいて、どちらかが儲かるか損するかを約束する取引だ。
つまり、デリバティブの売り手は、売ったら手数料をもらって終わりというわけではないのである。例えば投資信託であれば、売ったら手数料を丸々もらって、儲けが確定、買った側は儲かるか損するかはその後の状況次第ということだが、デリバティブの場合は、売り手も損をする可能性が残るわけだ。
ただし、プロである売り手(証券会社)は、仕組み債を、つまり内包されるデリバティブを売ったとき、その後マーケットがどうなってもなるべく損をしないような、反対取引(ヘッジ)を行うことが多いだろう。しかし、そういう取引を、大量に、膨大にやっているので、完全にリスクゼロという状態にするのは難しい。全体としてマーケットがどうなっても、差し引きで損失が限定的になるような取引の集合体(ポジション)をつくるのには、相当な腕が必要だ。
ただし、そこはプロである証券会社は、個人投資家に仕組債、つまりデリバティブを売るときに、プロ同士の取引よりもかなり条件の有利なプライスで売る為、やはり結果的に大きな収益を得ることが多い。
このように、仕組み債の”手数料”とは、内包されるデリバティブ契約の条件が、売り手側に有利であることを含めたもので、シンプルに投資家からもらって終わりという性質のものではないことは、あまり理解されていないのではないだろか。
しかし、売り手側のポジション管理に必要な、高度な専門性を持つ人員を含むコストを含め、売り手側のかなりの期待収益が投資家の負担とされてしまう構造となっていることは確かであろう。