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「スペシャルティファイナンス」とは?(”プライベート・クレジット”って何?⑥)

「プライベートクレジット投資」が最近世界的に人気を集めており、「プライベートクレジット」という言葉自体は、この1〜2年で多少は日本でも理解が浸透してきたように思う。ここでは更に踏み込んで、プライベートクレジットのスタイルの一つである「スペシャルティファイナンス」について説明したい。

スペシャルティファイナンスとは何か?

「スペシャルティ(Specialty)とは英語で、「専門」「得意分野」「特殊」のような意味を持つ。(よく特別仕立てのコーヒーを”スペシャルティコーヒー”と言うのを聞いたことはないだろうか。)スペシャルティファイナンスとはつまり、「特殊で専門的なファイナンス」ということである。

ビジネスにおいても特殊で専門的な分野がある。そのようなビジネスは銀行から簡単に融資を受けることができない場合も多い。スペシャルティファイナンスは、そのような特殊な分野のビジネスに対して専門性を持ってファイナンスを提供するプライベートクレジットのカテゴリーのひとつである。特に、不動産、医療、技術、エネルギーなどの業種を対象とすることが多い。

スペシャルティファイナンスの優位点

  1. 借り手のニーズにマッチ: ビジネスの特殊性から銀行が即座に貸付に応じない場合に、米国ではスペシャルティファイナンスが代わりにその役割を果たすことが多い。銀行など伝統的なチャネルからの資金調達が困難な企業でも、スペシャルティファイナンスファンドからテーラーメイドのファイナンスを受けられることがある。

  2. 業界トレンドや成長性に乗じることができる: スペシャルティファイナンスは特定の業界に特化し精通することで、その業界内の新しいトレンドやビジネス動向を把握することができる。その上で成長の可能性が高い企業に柔軟なファイナンスを提供し、事業拡大を支援することで、結果的に高い利回りを得る。

  3. 高いリターン: 投資としてスペシャルティファイナンスは、投資対象がニッチであるが故のリスクがある一方で、かなり高いリターンを期待できる。通常の債券投資などで飽き足らない投資家にとっては特に魅力的である。

スペシャルティファイナンスファンド

スペシャルティファイナンスファンドは機関投資家や個人投資家から資金を集める。そして、分野ごとに特化した他のファイナンス提供者と提携して投資することも多い。ファイナンスの形態はケースバイケースだが、定期的な利支払いと元金償還のある融資の形が多い。(借り手のニーズ次第で、エクイティも含む場合もある。)

スペシャルティファイナンスは対象がニッチであるが故、個別案件のサイズがあまり大きくなく手間も掛かることから、大手のプライベートクレジットファンドはあまり注力しない分野だ。その分ファンド間の競争や銀行との競争も少なく、リスク対比の利回りが高い。また年限も短めであることから、日本の投資家のニーズに合っているのではないかと思う。