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日本のオーバーバンキングとリスクマネーの枯渇がもたらす日米の利回り格差

先週9月26日、「プライベートクレジット投資戦略セミナー」を無事行うことができた。(ご参加の皆様、誠に有難うございました。)
プライベートクレジットの総論からスペシャルティファイナンスといった専門的な内容まで、エキスパートによるプレゼンとディスカッションでざっと説明できたと思う。中でも個人的には、次の二つのポイントが最も重要で分かり易いと思う。

米国の貸付マーケットの構造

米国では、銀行規制の強化等により、貸付市場における銀行の存在感が大幅に低下している。次の図が表すように、驚くことに米国における貸付の8割以上はプライベートクレジットファンドなど銀行以外の貸し手が占めている。

過去20数年で銀行のシェアは7割→2割以下に

日本と米国における利回りの格差

次の表は日本と米国で投資家が得られる金利/利回りをシンプルにまとめたものである(数値はセミナー時点)。スタート地点であるベース金利が0% vs5.25%と大きく差が開いており、更に10年国債の利回り、投資適格社債の利回りのいずれにおいても大きな差がある。
そして重要なのは、それ以上に利回りが高いものが、米国には存在するが、日本にはほぼ存在すらしないという事実である。具体的にはハイイールド債、バンクローン、そして米国では10%以上の利回りが期待できるプライベートクレジットである。この背景は、一つは前述の通り米国では銀行の競争力は低下している一方、日本ではオーバーバンキングと言われるような状況であり、二つ目にはリスクマネーの資金循環が米国は潤沢、日本は枯渇しているということだと思う。

日米の金利/利回り比較(2023年9月26日作成)

以上のような状況から、筆者は現状は日本人にとっても為替リスクを許容できるなら、米国のクレジットに投資するのが利回りを得る最善の手段の一つと考えている。

いつかは日本でもベース金利や国債利回りも上がり、また更なる高利回りのマーケットが生まれるかもしれず、筆者もその実現を願い将来的なビジネスプランに掲げているが、現状は経済合理的に考えると、米国の債券/クレジットに目を向けざるを得ないと思う。