【#毎週ショートショートnote】戦国時代の自動操縦
その日、家老が持ってきたのは棒の先に筆がついている変な箱だった。ボタンを押すと、筆先に墨をつけ、半紙に何やら書く。
「これは、儂の花押ではないか」
「殿の右手の骨折で花押が書けず、書状が溜まっており、どうにかするために皆で作った自動操縦花押製造機です」
それから製造機が花押を書き続け、皆、殿に確認もせず書状を出すようになってしまった。
時は戦乱、戦に関するやり取りで敵か味方か、心理作戦でパターンの違う書状を家老たちが作り、最終的にどちらかの書状に製造機で花押を書かせていた。
ある日、疲れ切っていた家老は床に落ちていた一枚の書状に気が付いた。それは戦の行方を左右する大事なもの。殿に伺いを立てるつもりが忘れ、しかも反対のことが書いてある書状に自動操縦で花押を書かせてしまったのだった。
しかし時すでに遅く、書状を受け取った武将は寝返りを決意。
こうして天下分け目の合戦の勝利に繋がってしまったとは、たった一人を除いて誰も知らない。(410字)
今週も参戦しました!
色々考えましたが、なかなか面白くするのは難しいですね。
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