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【短編】届いて花束

 愛されないことは、分かっていた。
最初から分かりきっていたことじゃないか。そもそも思いを寄せるのを許してくれたことを、あの人に感謝しなければいけないほどだ。叶わぬ恋。一方通行の、片思い。言ってしまえばその通りなのに、そのような普遍的な言葉で自分の思いを片付けられることが、どうしても嫌だった。
 その日の天気のことを、私はよく覚えている。春の始まり、めでたい日だというのに吹く風はちっともあったかくなくて、おろし立てのスカートが冷たくビタビタと膝小僧を叩いていた。曇天。散りかけで地面に落ちた桜の花びらたちをぐちょぐちょと踏みつけて歩いていた。
……そんな時に、あの人に出会った。陽だまりみたいに暖かいわけでもなかったし、何なら、お互いに他人行儀だったけど。私の世界は、あの時からすっかり変えられてしまっていたんだ。

 どうして世界はここまで私によそよししく振舞えるのだろう、悲しくて涙が零れそうだった。唇を強く噛んで、キッと遠くを見据えて。何も分からなかったけれど、見えぬ敵を睨んで、滲む視界を必死になって誤魔化していた。

 何が私たちを拒んだのか?違う。阻んだものがあまりにも大きすぎて、私じゃとても抱えきれなかったんだ。あの人には、何にも関係のなかった話だから。

 ボツボツと窓を打つ雨音に溶け込んで、ヒュン、と風が鳴る。

──だから私は、笑顔であの人に言う。
「ありがとう。好きになって、ごめんなさい」
って。

めっちゃ喜ぶのでよろしくお願します。すればするほど、図に乗ってきっといい文を書きます。未来への投資だと思って、何卒……!!