忘れ得ぬ人 着エロの男編
二十歳の頃、怖いもの無しの元気っ子(古い)な私は鼻ピをしている小出恵介似と付き合っていた。
髪はツイストパーマをかけ色黒。
ポリネシアンタトゥーを足首に入れた元バンドマン。
はっきりいう。
今思い出される彼は、大乱闘の末何かの拍子で焼きそばを頭から被ってしまったジャッキーチェンのようだ。
付き合っていた時は小出恵介に見えた。完全に。
私は捨てられると、とたんに思い出は変換されてしまうようだ。
彼が村上春樹を読みながら聴く音楽はノラ・ジョーンズ。小出恵介似の鼻ピアス、ツイストパーマ。どうだ!大渋滞だ!
割のいい仕事をしてお金を貯めてはインドに行っちゃう系の人だった。
人前でキスをしようとする彼に私が恥ずかしがりそらすと、とても腹を立て拗ねる。え、そんなに?と思うくらい。人前で股間を私の尻に擦り付けるなど、愛情表現のどストレートな人だった。
イタリア系というかラテン系というか、顔は小出恵介なんだけど、本当に日本人なのだろうかと疑ってしまうほど。
それは夜の生活でも頭角を現していた。
そう、彼は絶倫だったのだ。
一晩中だ。
バックのときに(早く終わらないかな〜なんて)頬杖ついたのはあの時が人生で最初で最後じゃないかと思う。
彼を好きだし、内容もとても満足。だがとにかく長い!9時間くらいだっただろうか。
終わったら酔っ払い加トちゃんの千鳥足どころの話では無い。立てない。
もう何回目だか分からない絶頂で
「あ、イク……」と言うと
彼が
「ハァハァ、おいで」……
おいで?………
あっひゃっひゃちょっとまってどこへ?!
トンチかな?あ、ソレ!落語かな♪
面白スイッチが入りそうになったところで、
いかんいかん、せっかくのオーガズムが逃げてしまう!集中せよ私!
集中〜と言い聞かせつつ【てゆうか、ねぇ。今おいでって言ったよな〜結構深いのかもなぁ】と彼が自然と口をついた " おいで " について考えていた。
ヤバい、もう友だちに言いたい。今すぐに言ってしまいたい。腹抱えてひっくりかえってご飯まで奢ってくれそうである。
後にも先にも9時間も愛し合い続けるというのは付き合いたての最初の頃だけで、しばらくすると4時間くらいに縮んでいた。
ところが順調だと思っていた矢先、夜中に彼から電話があった。確か、忙しくて会う頻度が減ってきたかな?という頃。
「最近誘われて始めたサーフィンにハマっちゃった。もっともっと上手くなりたい、俺はそっちに集中したいと思う。バイクも買ったし、○○をかまってやれない。」などという理由で振られたのだ…女に乗らずに波に乗るってか!
「俺は勝手な男だよね、どうぞ嫌いになってくれ。」と受話器口で泣いているジャッキー(私をフッた途端お前はもはや小出恵介ではない。)
嫌いになんてなれないよ!と、
付き合いながらでも上手くやれるはずという説得も虚しく、、彼の気持ちはゆるがず決まっていたようだ。
しかし、一晩中泣き晴らした私は翌朝すっかりへいちゃらになっていた。
失恋話をすると毎回、古着屋の社員さんらは馬鹿みたいに喜ぶので、どうせ隠したって腫れぼったい目で絶対にバレてしまうからと、、出勤し顔を合わせたとたん早速話した。
おー!絶倫と別れたのー?とニッカニカの笑顔で喜ぶO原さんに、" おいで "話をすると「馬鹿じゃないの?ここにいるのが見えないんですか?って言ってやったか?がっはっは!」ハナコの岡部さんにそっくりなあの顔で。
「えーなんかエロいじゃん、意外とみんな言ってるんじゃない?そんなに悪い?」というDさん。すかさず「あっでも僕はそんなこといわないけどね!」
はい、これで全店舗まで間違いなく広まっちゃう。下手すりゃ常連さんにまで。
もう、ここでこれだけ盛り上がったら成仏ですよ。
話はここでは終わらず。
その後に付き合った彼とは包み隠さない関係を築いていたので、たまに彼の携帯を勝手に見てしまうなどしていた。(笑)浮気の心配ではなく、当時流行っていた着エロの彼の好みを知りたかったのだ。ガラケーでちょっとした動画がみられるやつ。どんなのが好きなのかしら?と履歴を観ていると…ん??
聞いたことがある声…チリチリパーマ…浅黒い肌、タトゥー。
すっごいギャルの女優さんが、イクぅ!!と叫ぶと「コイコイ!おらおらー!」みたいなことになっていたので私はそっと携帯を閉じた。
私は見逃さなかった。
付き合っていた時にあったあるタトゥーの一部が着エロ動画の彼には無かった…ということは?
なかなか珍しいタトゥー。
私と付き合う前の動画だ。
私の元彼は男優だったのだ。
良かったぁ、私には" おいで " で。(そこか?)
別れるとアドレスから何からサクッと消してしまうタイプなので、うろ覚えのアドレスに一か八か送ってみようと思った。怒ってなんかいなくて冷やかしにメッセージをと。名前をもじったアドレスだったかな?
私「久しぶり!元気?」
彼(?)「えっ、すみません。きっと人違いかな?」
残念!
違かったか。いじり倒そうと思ったのになぁ。
アドレスはやはりうろ覚えだったようで、やりとりしてみると、なんとJ2の選手だった。
んムフフ(いつか続く?)
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